オードリー・タン氏ロングインタビュー:台湾のデジタル市民実験から学ぶ「Plurality(多元性)」とは

新しい政治哲学が話題にのぼるようになった。

「Plurality(プルラリティ:多元性)」は、マイクロソフトの社内エコノミストであるグレン・ワイル(Glen Weyl)氏と台湾の前デジタル担当大臣(5月20日で退任)、オードリー・タン氏による新著のタイトルかつ主題で、コラボレーションを促進するテクノロジーは、国民と国家の双方に、より広く受け入れられるべきだという考え方だ。

社会は、より幅広い視点を大切にすることを学ぶべきであり、そのような心構えを育む方法のひとつが、我々が団結することを可能にするテクノロジー(おそらくブロックチェーン)を通してだ、と著者らは主張する。

この本は基本的に、タン氏のデジタル大臣としてのキャリアを締めくくるものであり、また、2019年の書籍「Radical Markets(ラディカル・マーケット)」に書かれた、富の不平等と経済の停滞に悩まされる世界を覆う倦怠感に対抗することを意図した、ワイル氏のテクノ政治理論の発展形でもある。

2016年に台湾のデジタル開発を促進するために入閣し、2022年には初のデジタル大臣に任命されたタン氏は、「プルラリティ」理論について講演し、台湾の画期的な市民デジタル実験について政治家を教育するための世界ツアーに出るため、5月20日に退任した。

実践を伴う理論

多様な意見、健全な市民的議論、テクノロジーを提唱することは、斬新な政治戦略にはとても思えない、と疑問に思っているかもしれない。その疑問は正しい!

しかし、プルラリティが他と一線を画しているのは、台湾政府のウェブサイトのオープンソースでインタラクティブな代替版を生み出したg0vプロジェクトや、市民による政策請願を可能にしたvTaiwanのような、大規模なオープンソースの公共デジタルインフラプロジェクトを運営してきたタン氏の具体的な経験にある。

言い換えれば、タン氏とワイル氏の理論には、実践と実際に稼働中のゴールがある。ワイル氏は、プルラリティを環境保護主義に似たものだと表現している。実践した場合にのみ、うまくいく。

夢は、全世界をこのシステムに参加させ、民主主義とオープンソースの技術革新を同時に進めることだ。この本自体が、プルラリティの実践例。多くの共著者と共同で執筆されたこの本は、誰でも自由に読むことができ、著者らは時間をかけて追記を続けていきたいと考えている。

タン氏とワイル氏は発表時の投稿に、次のように書いている。

「我々のプロジェクトは、プルラリティの研究および実施と連動して行われる。我々はハッカーやライターだけでなく、デザイナー、ストーリーテラー、マーケッター、ディストリビューターも必要としている。いかなる場合においても、グレンとオードリーは、自らの地位に付随する法的規範に則り、本書の執筆に対していかなる報酬や印税も受け取ることはない。収益は、我々が築きたいと願うコミュニティと慈善活動のミッションを支援するためにのみ使用される」

米CoinDeskは、この本の執筆、進歩的なテクノロジーを受け入れるよう政府を説得する方法、そして「まあまあ満足してもらえる先人」であることの意味について、タン氏(どう見ても魅力的な人生を歩んできた人物で、先日タイム誌でも紹介され、近々ドキュメンタリーの題材にもなる予定である)にインタビューした(インタビューは要約、編集されている)。

「プルラリティ」

──まずは簡単なところから。グレン・ワイル氏と一緒に本を書くのはどんな感じでしたか?

実はこの本は、私がデジタル担当大臣に任命される2年前から始まっていました。だからある意味、省とともに成長したとも言えます。ご存知のように、この省が発足したのは、キエフに対するいわれのない戦争が起こった時で、人々が突然レジリエンスに関心を持ち始めたときでした。

そのため、IPFS、分散化、冗長性のためのWeb3など、この本に書かれているアイデアの多くが、1年半前にデジタル省がスタートしたときに、突然注目されるようになりました。

このような最先端のアイデアが台湾で使われることは、非常に実用的であると同時に、人々が台湾のことを気にかけるという意味で非常に楽しいことだと思います。

しかし人々は、シビックテックのエコシステムがどのように機能しているのか、あるいは国が高速道路や橋を建設するのと同じように、公共インフラとして多くの分散型テクノロジーにどのように資金を提供できるのかを知らないかもしれません。

多くの相互学習がありました。この本を共同執筆した結果、ヴィタリック・ブテリン氏もグレンも台湾の住民になったことを伝えておきたいです。彼らは、オープンソースやインターネットコモンズに8年以上貢献した人に与えられるゴールドカードを手に入れたのです。

──この本の要旨を聞いて、技術的リバタリアニズムの一形態だと思う人のために、「プルラリティ」とは何を意味するのか正確に説明してもらえますか?

もちろん。多元性とは協調的な多様性を意味しますよね? 多様性を促進するテクノロジーということです。そういう意味では、誰もが自分のシステムをホストできるという分散化の考え方に少し似ています。しかし、効果的なコラボレーションと協調にはもうひとつ別の側面があり、我々はそれを大まかに民主主義と呼んでいますが、それは投票だけに限りません。

それは例えば、イデオロギー的に対立していた人々の架け橋となるような、非常に相反する考えを持つ人々の間でAIが促進する議論を可能にするような、継続的な民主主義の形態です。

このコラボレーションの形態には少しテクノクラシー的な響きがあり、多様性には少しリバタリアン的な響きがありますが、この2つのユニークな組み合わせ、つまりコラボレーションの多様性こそが、プルラリティを他とは違うものにしています。

真実をクラウドソーシングする

──私はこの本が気に入りました。この本はある意味で台湾へのラブレターとも言えますが、台湾以外の国の政府に対して、このような民主的な試みを採用するよう説得するにはどうしたらよいのでしょうか?

まず第一に、私たちは他の多くの政府からも学んでいると思います。台湾の評判システムはアイスランドのレイキャビクに由来しています。参加型予算制度はバルセロナから。もちろん、10年以上前にブラジルで行われたインターネット協議にも影響を受けています。

このように、政府がインターネットを統治するためではなく、政府の統治そのものを改善するためにインターネット技術を活用するという長い伝統があるのです。

台湾がここで貢献できるのは、両極化攻撃、情報操作攻撃、ディープフェイク、国境を越えた詐欺、パンデミックに関する偽情報などに対して、私たちはよりレジリエントな防御を進めてきたという点です。例えば、私たちは1月の選挙で、人々が憎しみ合うことなく、両極化を克服することができました。

これは、参加型ファクトチェックのおかげでもあります。私たちは、スーパーファクトチェックのアイデアを広めるために、1000人以上のコントリビューターと音楽によるコミュニティを立ち上げました。このように、同じような脅威がある、あるいは明確化が急務である地域では、このようなアイデアが定着し、そこから草の根コミュニティが成長していくのです。

──真実をクラウドソーシングするというアイデアから生まれたもので、Xにもそのバージョンがありますね。このような様々なプログラムは、政府によって運営されるのがよいと思いますか、それとも民間企業によって運営されるのがよいと思いますか?

コミュニティノートの最大の良さは、オープンソースであることだと思います。私は、x.comが行ったことが正しいかどうかを検証するために、ヴィタリックがが自分でノードを立ち上げたことを覚えています。

オープンソースだからこそ、レイヤーとして考えることができるのです。想像してみてください。x.comだけでなく、フェディバース(独立しているが相互通信可能なソーシャルメディアネットワークの集まり)の中にいる誰でも、Threadsやその他のものを含め、コミュニティノートを構築することができます。

そしてある意味、これを単なる陪審員の義務のようなものにするのではなく、コミュニティノートが様々な異なるソーシャルプラットフォームのデフォルトとなるような、代替のエントリーポイントにするのです。

ですから、ご質問の件ですが、私は、異なるソーシャルネットワーク間の橋渡しシステムとして機能するものと考えていて、国家はもちろん資金を提供すべきですが、管理すべきではないと考えています。これはある意味、市民の対話に水を提供するようなものです。というのも、もしそのようなレイヤーがなければ、現在のソーシャルウェブでは両極化がデフォルトになってしまうからです。

多元的なブロックチェーン

──ブロックチェーンを批判する人たちに対して、ブロックチェーンの世界はどのようにすれば、金権政治的ではなく、より多元的に見えるプロトコルを考案する手助けができるのでしょうか?

ブロックチェーンの世界における健全なエコシステムとは、単一の実装に支配されていないものだと思います。もちろん、イーサリアム自体にも複数の実装がありますし、レイヤー2のソリューションも様々です。

例えば、私はポルカドット(Polkadot)システムを念頭に置いていますが、これは一種の共通のメタプロトコルの上に構築された、別のエコシステムです。

ガバナンスプロトコルのほとんどを再利用でき、チェーンを超えた協調を楽しめるという事実のように、暗号資産が本当にツールキットアプローチに従っていることを、人々にもっと理解してもらう必要があります。これは、伝統的な政治に携わる人には想像しにくいことだと思います。

もちろん、ゴールドカードのように複数の司法管轄区にまたがる居住権を与えるものもあり、それに近いものはありますが、例えばGitcoinのように複数の社会的存在を超えて人々を識別できるような敏捷性や機動性にはまだ及びません。

これらの例は、非常に重要な概念実証の役割を果たしています。新しい政府がクアドラティックボーティングやプロジェクトの資金調達など、協調をより徹底させるあらゆる方法を検討し始めたときに、ゼロから研究するのではなく、すでに機能しているオンチェーンの事例を指して、「ああ、これを真似しよう」と言うことができるのです。

パンデミックの影響と世代間の変化

──『Daily Beast』誌は、台湾のシビックテック実験が利用されなくなってきているという記事を書いています。

パンデミック中に減少しました。その通りです。

パンデミック中に何が起こったのか、そしてその後どうなったのか、それを説明するのはvTaiwanコミュニティ次第だと思います。もし引用がお望みなら、実は、この『Plurality』は彼らとの共著なので、彼らの説明を読んで欲しいです。

第2章-2には、非常に包括的な回答があり、引用すると、「分散型の市民主導型コミュニティであるvTaiwanは、市民ボランティアが様々な形で参加することで、自然に進化し、適応していく生命体でもある。COVID-19パンデミックの発生後、コミュニティの参加は下降線をたどり、対面でのミーティングが中断され、参加者の減少につながった。

このプラットフォームは、集中的なボランティア活動が必要であること、政府の対応が義務付けられていないこと、焦点がやや狭いことなどの問題に直面した。こうした課題に対応するため、vTaiwanのコミュニティは近年、一般市民と政府との間に新たな役割を見いだし、台湾の規制の領域を超えてそのアウトリーチを広げようとしている。

vTaiwanを活性化させるための重要な取り組みとして、2023年にOpenAIのDemocratic Input to AIプロジェクトと協力したことが挙げられる。王立国際問題研究所とのパートナーシップや、AIの倫理とローカライゼーションをテーマとした複数の対面およびオンラインでの審議イベントの開催を通じて、vTaiwanはAIとテクノロジーガバナンスに関する世界的な対話に台湾の視点を組み込むことに成功した」

そして次の段落では、第二の関連プラットフォームであるJoinの1日のユニークビジター数は平均約1万1000人以上であるとしています。つまり、台湾の電子請願プラットフォームはパンデミックの間、オンライン投票が簡単だったために参加者がわずかに増加した一方で、vTaiwanは毎週顔を合わせるミートアップに依存していたため、参加者の減少を経験しました。しかし、今では回復しています。

──マイスペース(MySpace)からフェイスブック(Facebook)への移行のように、人々が異なるプラットフォームに移行する自然な進化があったということですか?

g0zの良いところは、すべてのプロジェクトがオープンソースであり、クリエイティブ・コモンズの一部であることだと思います。だから、vTaiwanを活性化させたい新しい世代にとっては、ゼロから始める必要がないのです。

もちろん、現在のvTaiwanコミュニティは2014年のローンチ時と同じコミュニティではありません。ローンチ時に携わっていた人たちは今も健在ですが、vTaiwanを運営しているのは、私たちよりも10歳ほど若い人たちです。

ですから、ご質問の件に関しては、単に移行の問題だけではないと思います。それぞれの世代が実験についてどう考えているかということでもあります。

vTaiwanがPolisを最初に使ったのは2015年で、非常に新しかったので最先端だと考えられていました。しかし現在、政府はPolisが組み込まれたJoinプラットフォームを定期的に使用しています。

Polisはもはや研究開発段階ではないということの表れであり、公務員は安心して使っているのです。国の役割は、成熟したオープンソース製品を維持し、それが確実に公共の市民インフラの一部となるようにすることです。

デジタル民主主義

──ネイサン・シュナイダー(Nathan Schneider)氏をご存知ですか?

彼のツイートは読んでいます。

──彼は最近、デジタル民主主義についての本を書き、それ以来、デジタル民主主義がオンライン上のあらゆる場所で行われたらどうなるかを研究し始めています。例えば、無数の決定について投票しなければならないとしたら、それは悪夢ではないでしょうか?

Governable Spacesのことですか?

──その通り。

ネイサンではなく、同じような研究をしている人たちと話をしました。トップダウンの度合いによると思います。例えば、Zero Summitでは、クラウドソーシングでQ&Aを行うための方法であるSlidoがほとんどいつも使われています。しかし、SlidoもWebexに買収され、ビデオチャット中の1つの機能に過ぎなくなりました。民主的テックは、そのような非常に薄いレイヤーになります。

Discord(ディスコード)のワークスペースというのも、ツールキットの一部として、このような統治可能な空間です。デジタル民主主義の一部として考える必要すらありません。しかし、それは実際に協調の処理能力を高め、コラボレーションを容易にします。それが特に、ディストピア的だとは思いません。文字通り、帯域幅を広げ、ガバナンスの待ち時間を減らすだけなのですから。4人から400人、そして4万人というように成長していくのです。

──少し個人的な質問があるのですが、答える必要はありません。あなたはエクストロピアン(人間の状態を継続的に改善するための価値観と基準のフレームワークを支持し、科学技術の進歩によって、いつの日か人々が無期限に生きられるようになると信じている人々)ですか?

その定義は?無限に生きたい人とか?

──そうですね。

私と寿命との関係は、それとはまったく異なったものです。私は生まれつき心臓に持病があり、生まれてから12年間、寝るたびに生きて目を覚ますかどうかは五分五分の確率でした。

12歳のときにその病気の手術を受ける必要がありました。だから今は大丈夫ですが、その経験が私の性格を形作りました。毎晩、死ぬ前に公開しなければという強迫観念が常にあります。だから何でも公開してしまう。だからある意味、エクストロピアン的でもあると思います。

──台湾は増税すべきだと思いますか?

台湾の税金はOECDの基準からするととても低いのです。でも、非常に低い税率でかなりうまくやっています。昨年は、(半導体企業の)TSMCなどから予想以上の税金が取れたので、若者も含めて全員に100ドルを支給したほどです。

──いつまで政界にいるつもりですか?

5月20日に退任します。

──次の予定は?

ブックツアーです。マドリードとVivaTechのためにパリに行きます。それからBlockSplitのためにクロアチアに、そしてヘルシンキとベルリンにも行く予定です。いくつか抜けているところもあると思います。5月20日以降、3週間から4週間の間に本当に多くの国に行く予定です。

──暗号資産を保有していますか?

以前は保有していました。2010年から11年にかけて、1時間に1ビットコインでコンサルティングをしていました。でも公職に就いたにので、きっぱりと辞めました。私がコンサルを始めたころは、ビットコインが100米ドルといったところでしたが、2016年に入閣するころには300ドルか400ドルに上昇していました。つまり、まだそれほど大きな金額ではなかったのです。

オープンソースとAI

──あなたはオープンソースを強く支持しています。AIの世界でも同じ主張が成り立つと思いますか?

ええ。私のメインフレームは計算コストの高いものとしてスタートしました。それでもオープンソースは何とか繁栄しました。でももちろん、フリーソフトウェア・ムーブメントの時代、1997年頃にパーソナル・コンピューターがインターネットに接続され始めた頃から、オープンソースは繁栄し始めたのです。

私が言いたいのは、基本的な自由、例えばどんな目的にもソフトウェアを使える自由は、機械学習や機械学習モデルに関しては二重に当てはまるということです。

もし基盤モデルがそれを使う人々によって管理されないのであれば、本質的には、その基盤モデルを訓練する人々が、その世界観、視点、モデルを使う人々の認識論的規範を決定することになります。

例えば、台湾には国家科学技術委員会(National Science and Technology Council)があり、地域のクラウドソーシングを利用してLama3モデルを調整しています。これは私たちが調整アセンブリーと呼んでいるもので、人々の一般的な好みが、広告における有名人の画像使用に関することなど、Lama3モデルがどのように振る舞うべきかを決定します。

これは、それによって影響を受ける市民がガイドレールを決定するための、市民の公共縮図です。AIを舵取りする能力は非常に重要です。そして、オープンソース、オープンウエイト、オープンアクセスなど、どのような呼び方であれ、その舵取りをオープンにすることが鍵となります。

──モデルによってAGIが確立されると思いますか?

人間の代わりにロボットを配置するのであれば、AGIは理にかなっていると思います。というのも、AGIは人間ができることをできるものだからです。

しかし、現在私たちが実際にAIを使っているのは、むしろ補助知能のようなものです。メールの返信モデルは、私の代わりにメールを送信してくれるわけではありませんよね? 私の代わりに、私のスタイルを使ってメールの下書きをするだけです。

こうした使い方はすべて、私たちの集合知を高めるものです。そして、もしゴールが多元性であるならば、AGIはむしろそこから注意をそらすものです。

──台湾は今後10年、50年、100年経っても民主主義国家であり続けると思いますか?

もちろんです。ランキングにもよりますが、台湾はアジアで最も民主的な国か、時には日本やニュージーランドに次ぐ2番目の国です。しかし、インターネットの自由という点では間違いなくトップクラスです。

この組み合わせは、非常に貴重なものだと思います。多くの国々が、これだけのインターネットの自由を認めれば、必ずや両極化と民主主義の衰退につながると考えているからです。しかし台湾は、インターネットを最大限に活用し、両極化することなく民主主義を機能させることができることを証明しています。

モットー

──あなたの「噂よりユーモア」という言葉がとても気に入りました。どのような場合にそのような戦略を適用するのが適切なのでしょうか?

少なくとも個人的なレベルでは、ある種のユーモアは常に良いものだと思います。荒らしのような有害な文章を目にした時には、私は自動的に3000語のうち、面白い、あるいは有益だと解釈できる3つほどの言葉に注目します。このレンズを通して、私たちは実際に楽しい部分との対話を楽しむことができるのです。

自分を茶化すだけで、心が和むことがよくあります。私のFlickrに行けば、このようなミームを集めたアルバムがあるので、デジタル発展省で何か論争がある時はいつでも、とても面白い反論としてミーム的な写真ですぐに反応することができます。私たちはそれをプレバンク(虚偽を事前に暴くもの)と呼んでいます。

つまり、情報操作や両極化、陰謀論を待つ必要はなく、COVIDワクチンに関する論争があれば、アストラゼネカととモデルナ間の人々の好みに関して、面白いスコアボードを作ることができるのです。

──つまり、あなたには言い回しの才能があるということですね。あなたが生きる指針としている表現がありますか?

そうですね、まあまあ満足してもらえる先人でありたいですね。

──それはいい言葉ですね。

まあまあ満足してもらえるというのは、過剰な設計をして未来の世代の可能性を閉ざさないということだと思います。彼らはもっとクリエイティブになるでしょうが、私がこの世に生を受けた時と比べて、彼らがこの世に生を受けた時に、より大きなキャンバスを持てるようにするのが私たちの仕事だと思います。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Audrey Tang/Wikimedia Commons
|原文:Audrey Tang: Learning From Taiwan’s Digital Civic Experimentation