CoinDesk JAPANと野村證券による「セキュリティ・トークンを学ぶ!入門シリーズ」動画の第3回が5月24日に公開された。最終回は野村證券デジタル・アセット推進室の坂本祥太氏が昨年度、同社が取り扱った主なセキュリティ・トークン(ST)の銘柄、そして購入者からの反響を紹介した。動画はCoinDesk JAPAN YouTubeチャンネルで視聴できる。
タワマンや大型商業施設、ホテルなど……。100万円から投資できる銘柄が続々登場
坂本氏は、2023年度に野村證券で取り扱った3つの不動産セキュリティ・トークン銘柄を紹介した。
1つ目は2023年夏に発行された、ケネディクスグループによる月島のタワーマンションを投資対象とする銘柄。このマンションの鑑定評価額は300億円(2023年6月1日時点、準共有持分割合75%換算)で、そのうち134億円が1口100万円から投資できるSTとして発行された。国内の公募型STでは過去最大規模の案件だ。
2つ目は2024年2月に発行された、三井物産デジタル・アセットマネジメントによる那須ガーデンアウトレットを投資対象とする銘柄。国内初の商業施設を対象とした公募型STで、鑑定評価額が226億円(2024年1月10日時点)の不動産を裏付けに114.5億円のSTが発行された。こちらも1口100万円で販売された。
3つ目は2024年3月に発行された、りそな銀行が手掛ける、京都のホテルを対象とした銘柄。同じく1口100万円で、166億円(2024年1月10日時点)の鑑定評価額のホテルが裏付け資産となっている。
STならではの「購入者特典」も魅力のひとつ
これらのセキュリティ・トークンには、それぞれ「購入者特典」が用意されたことも特徴だ。
たとえば月島のタワーマンションの銘柄では、ケネディクスグループが運営する銀座のホテルの優待券または佃煮の詰め合わせがプレゼントされた。ホテル優待はアプリで付与され、事前予約して、現地でアプリの画面を提示すればその場で使えるという。
また、那須ガーデンアウトレットの銘柄では、現地の各テナントで使える割引券を提供。京都のホテルの銘柄でも、宿泊施設で使える利用券をアプリで配布する予定だ。坂本氏は「現地へ出向いて、こうした”オーナー限定”の優待を利用できることも魅力のひとつとなっている」「購入者とのエンゲージメントを高める施策を打てるのも、これまでにはなかったセキュリティ・トークンの特徴だ」と話す。
購入者からは、ポートフォリオの幅を広げる「新しい選択肢」と評価
坂本氏は、不動産セキュリティ・トークン(ST)は単一または少数の大型・優良不動産に小口で投資できる点から、「投資家からオルタナティブ投資の新しい選択肢として評価されている」と述べる。坂本氏によると、近年は「伝統的な金融商品だけでポートフォリオを構成するのではなく、他との相関が低いオルタナティブなアセットを組み入れる」ことの重要性が再認識されているという。そういった観点からもセキュリティ・トークンは注目されている。
野村證券ではWebサイト「野村の不動産セキュリティ・トークン」のほか、LINEアカウント「NOMURAのWeb3」でもセキュリティ・トークンの最新情報を発信している。
なお、CoinDesk JAPANでは他にもさまざまな不動産セキュリティ・トークンの銘柄を紹介している。中には1口10万円から販売していたものもある。
■出演者
坂本 祥太氏| 野村證券株式会社
Vice President セキュリティ・トークン・グループ・リーダー/デジタル・アセット推進室
2012年野村證券入社。投資家向けコンサルティング営業、J-REIT等の資金調達等をサポートする投資銀行業務に従事した後、2019年より未来共創カンパニー(現在のデジタル・カンパニー)にてセキュリティ・トークン(ST)ビジネスの企画・開発・推進を担当。
神本 侑季 | N.Avenue 代表取締役CEO(モデレーター)
2013年にヤフー株式会社(現Zホールディングス株式会社)に入社。Yahoo!ニュースを中心にメディア・広告のビジネス開発に従事した後、海外のテックベンチャー企業と共に新規事業立ち上げを担当。2018年より、グループの投資ファンドであるZコーポレーション株式会社にてブロックチェーン領域のリサーチ、事業開発に従事。 2018年より、同社の出資により設立した次世代金融領域の情報発信を行うメディア企業、N.Avenue株式会社の立ち上げを担い、現在は代表取締役社長。世界有数の暗号資産・フィンテックメディアCoinDeskの日本版「CoinDesk JAPAN」や、国内最大級のブロックチェーンカンファレンス「btokyo」などを運営する。
|テキスト:渡邉一樹
|編集:CoinDesk JAPAN
|写真:N.Avenue