Web3マーケティングには根本的な問題がある。盛り上がりに主眼を置き、真のユーザーを軽視していることだ。これは、大きな報酬がWeb3マーケティングの中核となっているためだ。
だが、景品によって虚栄の指標を高めることは、Web3マーケティング、あるいは我々が「MarketingFi」と呼ぶものの本質ではないし、そうあるべきでもない。
Web3マーケティングが抱える問題
プロジェクトは現在、Xの投稿に「いいね!」を押してくれたり、フォローしてくれたりする人全員にマーケティング予算を分配している。一方、マーケティングFiは、小さな行動に対して全員に報酬を提供する代わりに、積極的に関与したユーザーに報酬をもたらす。多くのユーザー(そしてボットやシビル攻撃者)に小さな報酬を与える代わりに、マーケティング活動への参加を通じてプロジェクトにクオリティをもたらすユーザーに、より大きな報酬を与える。
同様の問題は、(エアドロップに次いで)2番目に大きく、最も急速に成長しているWeb3マーケティングのトレンドである「Web3 KOL(キーオピオニオンリーダー)マーケティング」の現状にも存在する。
現在、KOLマーケティングを実施するプロジェクトはしばしば、最初の盛り上がりを作るものの、マーケティング予算を振り向けるべき真のユーザーをもたらさないボットが作り出した数字を抱えたサクラを採用している。なぜか?
プロジェクトは「手っ取り早く盛り上がりを生み出したい」のであり、キャンペーンの実際の影響を測定する方法を持たないからだ。
サクラ(正直に言って、彼らは本物のKOLではない)は、盛り上がりをもたらし、プロジェクトに数万ドルのコストをかけさせるが、報酬をもらうとすぐに離れてしまう積極的には関与しないユーザーに報酬とマーケティング予算を回す。
しかし、データを駆使したマーケティングFiでは、真のKOLは、プロジェクトをさらに発展させるユーザーに、より大きな報酬とマーケティング予算をもたらす可能性を秘めている。まずはアナリティクスを採用し、サクラを排除し、より大きなインセンティブを適切なクリエイターにもたらす必要がある。
では、マーケティングFiとは一体何なのか、そしてWeb3はどうしたらそれを実現できるのだろうか?
マーケティングFiとは、ユーザーが単なる顧客ではなく、共同クリエーターであり共同オーナーであるエコシステムにおけるデータドリブンのマーケティングの決断を意味する。
マーケティングFiを標準にするには、Web3マーケターの考え方を大きく転換する必要がある。伝統的なビジネスとユーザーの関係を考えるのをやめ、プロジェクトを協調的な共同所有のエコシステムとして捉えなければならない。
「もし私のユーザーが私のトークンを保有しているならば、彼らは私のプロジェクトの成長が彼らに利益をもたらすので、私に正しいマーケティングを行ってほしいと思っているはずだ。彼らがさらにクオリティの高いユーザーを獲得することを助けてくれるように、マーケティング予算を彼らに渡すにはどうすればよいか?」と考えれば良い。
このような熱心なユーザー、つまり共同オーナーやコラボレーターをどうやって見つけるのか? オフチェーンおよびオンチェーンのデータを見て、最もクオリティの高いユーザーには、大きなインセンティブ、報酬、エアドロップを与えよう。コミュニティに行動するためのツールと予算を与えよう。
エアドロップの70%はボットへ
現在、Web3は「エアドロップの夏」の真っ最中だ。ソーシャルファーミング(ソーシャルメディア上での存在感を収益につなげる手法)の要素を取り入れた新しいエアドロップキャンペーンが次々と登場している。
これらのキャンペーンの予算と報酬は莫大で、関心と盛り上がりと希望を生み出している。だが、このようなエアドロップは、間違った人々に報酬を与える典型的な例。報酬に誘われたユーザーは、エアドロップを受け取る可能性のある一連のソーシャルタスク(そして時には2、3のオンチェーンタスク)を完了する。
このようなユーザーは、ボット、エアドロップハンター、シビル攻撃者であることが多く、コミュニティが参加させたいクオリティの高いユーザーではないことに、多くの人は気づいていない。Cookie3での最近の調査では、エアドロップの最大70%がボットやシビル攻撃者に渡ることが多いという結果が出ている。
では、エアドロップがWeb3を台無しにしているのか? いや、エアドロップは素晴らしいものだが、それはクオリティの高いユーザーを惹きつける場合、つまり正しく行われた場合に限られる。
一部のプロジェクトは徐々にこの考え方に目覚め、大量のユーザーを素早く獲得することは、定着してくれるクオリティの高いユーザーを獲得するメリットを上回るものではないことを理解している。その好例が、シビル攻撃活動の自己申告ルールを確立したレイヤー・ゼロ(Layer Zero)だ。
プロジェクトリーダーやマーケターがエアドロップからボットを除外することをサポートするソリューションは、すでに市場に存在している(AIを使ってボットベースの活動を判断するCookie3 Airdrop Shieldなど)。
今必要なのは、短期的な成功や盛り上がりは長期的なリテンション(ユーザー維持)を犠牲にすることには見合わないことを理解し、考え方を変えることだ。
この変化をどのように実現するか? データによる知見を使ってボットをエアドロップから除外し、より少ないグループに多くのトークンを与えることで、プロジェクトに持続的な盛り上がりと成長をもたらせる可能性がある。
KOLかサクラか?
KOLマーケティングについてはどうだろうか? クオリティの高いユーザーを連れてくるKOLとどのように協力するか? どのKOLにマーケティング予算を与え、彼らのフォロワーにも渡してもらい、協調的なエコシステムの成長を確保するべきか?
マーケターは、空虚な数字をさらに膨らませるのではなく、クオリティの高いユーザーをもたらすKOLを見極める方法を見つけなければならない。どのように?
KOLのプロモーションからユーザーがどのようにコンバージョン(マーケティングの最終的な成果)につながっているか、どのKOLが最もクオリティの高いユーザーをもたらしているのかを見極めるためにはアナリティクスを採用し、望ましいコンバージョンをもたらすKOLと協力することは、クオリティの高いマーケティングを助ける最高のKOLを選別する最良の方法のひとつだ。
これが標準化されれば、KOLのクオリティに関する、より多くのデータが市場全体で利用可能になり、Web3のKOLマーケティング全体のクオリティが向上するだろう。
Cookie3では、Cookie3 Affiliateでこのようなソリューションの実装に取り組んでおり、プロジェクトがKOLマーケティングにKOLをオンボーディングするための明確な条件やルールを設定し、実際のコンバージョンや品質への影響を測定し、割り当ての一部を$COOKIEステーカー、つまり新しいプロジェクトを早期に探求したいエンゲージメントの高いユーザーに配分することを支援している。
Web3マーケティングはWeb2とは異なるが、Web3マーケターが従来のマーケティングから学ぶ必要のあることの1つは、数字を見て、コンバージョンにつながった積極的に関与するユーザーは、潜在的なユーザーやクオリティの低い新規フォロワーよりも1000倍価値が高いことを理解することだ。
そうして初めて、マーケティングFiのWeb3の要素が効果を発揮し、真にWeb3的な形で、マーケターはクオリティの高いユーザーに共同オーナーやコラボレーターとして予算を渡すことによって予算を分散化し、持続的な長期的成長をもたらすことができる。
Web3市場は目を覚まし、成果主義が虚栄の指標を意味しないことを理解しなければならない。Web3における成果主義とは、データを駆使した意思決定、コミュニティ主導のキャンペーン、プロジェクトにクオリティをもたらすユーザーに予算を振り向けることによる長期的な成功の構築と理解されなければならない。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock(CoinDeskが加工)
|原文:Wake Up, Web3: Your Marketing Is Fueling a Bot Epidemic