KONAMIが運営するWeb3タイトル「PROJECT ZIRCON」で5月27日20時から初のNFTオークションセールが始まった。昨年9月のTGSで発表されたこのタイトルは、今どんな展開を見せているのか。5月24日に開催されたファンコミュニティの初会合を取材し、そこから見えてきたことを報告する。
ユーザー自身が「世界を創る」
PROJECT ZIRCONのコンセプトは「ユーザーがDiscordコミュニティで遊びながら、一つのファンタジー世界を作っていく」というもの。参加ユーザーたちは、4つの国とドラゴンの存在が記されている1枚の地図を起点にした世界について日々想像をめぐらせ、世界の内容をアップデートしていっている。
登場人物やストーリーの行方などが、ユーザーたちの選択で決まっていくイメージだ。従来型ゲームの「ユーザーが企業の作ったコンテンツを遊ぶ」という方向性とはかなり違ったものになっている。
ユーザーは、Discord内のKONAMIが運営するコミュニティに集い、イベントに参加したり、サークル活動をしたりと、ユーザー同士で交流しながら遊んでいる。ユーザーが設定を考えたり、イラストを描いたり、小説を書いたりして創作に貢献すると、コミュニティ内で使う「ジルコイン」がもらえる仕組みになっている。
世界の登場人物(キャラクター)などがNFTになっていて、世界を満喫するためにはそれらを手に入れる必要がある。NFTは、KONAMIの独自マーケット「リセラ」で取引したり、ジルコインと引き換えに手に入れられる。
初となるNFTのオークションセールは5月27日20時からと、5月30日20時からの開催。個々のNFTオークション開始価格は1つ5000円〜3万円に設定されている。
ロードマップは?
こちらが5月24日、都内で初開催されたファンコミュニティのリアルイベントで提示されたロードマップだ。
現在は、フェーズ1の「企画・シナリオ」の終盤。数カ月かけて基盤となる世界観やストーリーを作り上げてきて、ようやく「NFTの初セール」にまで、こぎつけた段階だ。
6月からはNFT(キャラクター)を活用した新サービス「NFTクエスト」が実装される。参加者に合わせて生成AIが独自ストーリーを作成、ユーザーはパーティで話し合ってどう行動すべきかを決めるものだ。
今後2026年にかけてのフェーズ2では、マンガ・アニメなどのメディアミックスによってZIRCONの世界を世間に広げたり、海外への横展開も狙う。2026年以降にはコミュニティメンバーが制作やマーケティングに関与する形での「ゲーム化計画」も見据える。将来のゲームでもNFTの活用が想定されている。
盛り上がるユーザーたち
一方で、これをNFTプロジェクトとして考えた場合、似たようなロードマップを想定している事例は多々ある。ただ、その盛り上がりを維持し続けられているのはごく例外的な存在だけだ。
PROJECT ZIRCONのDiscordに行くと、ユーザー同士の交流が盛んに行われていることが見て取れる。このあたりはゲームやIPの多角展開を本業とし、ユーザーを惹きつけるノウハウを熟知している「KONAMI運営」という点が強みになっているのだろう。
ユーザーの集いに来ていたメンバーもWeb3ファンだけではない。参加していた20代会社員男性は「ZIRCONの存在はネットニュースで知った。ファンタジー世界をイチから共創するというコンセプトに惹かれて参加するようになった」と語る。また、別の20代会社員男性は「グラディウスなどKONAMIゲームの大ファンで、それがきっかけで遊ぶようになった」と語っていた。
ファンタジー世界の物語をユーザーたちが作り上げていくという意味では、世界的に根強い人気があるテーブルトークRPG(TRPG)というジャンルがある。昨年公開された映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』も同名のTRPGゲームが基になっている。ファンタジー世界を一緒に作り上げ、その世界観を楽しみたいというニーズは国内外に一定程度ある。
ただこの手のジャンルは「世界の創造」がベースにある分、参加するユーザーにも高い参加意欲・熱量が求められる。プロデューサーのShiro氏は24日の集会でコミュニティへの感謝の言葉を繰り返し述べていた。NFTオークションセールを経て、コミュニティをどんなふうに盛り上げられるのか。PROJECT ZIRCONの今後はまさにその点にかかっている。
|取材・撮影・文:渡辺一樹
|トップ写真:ファン・コミュニティ初会合の様子