OrdinalsとRunesの生みの親、ビットコインにもたらした功罪【Consensus 2024】

ビットコインブロックチェーン上に立ち上げた2つのプロトコル、オーディナルズ(Ordinals)とルーンズ(Runes)について、その生みの親であるケイシー・ロダーモー(Casey Rodarmor)氏は、後悔していないと語った。この2つのプロトコルによって、最も価値のある、元祖ブロックチェーンとしてのビットコインブロックチェーンは、他のオルタナティブチェーンにとても似たものとなり、物議を醸している。

ビットコインの世界で最も影響力のある開発者の1人として登場して以来、ロダーモー氏が守ってきた指針は基本的に2つ。ビットコインは安全であり続けるべきで、そのアプリケーションも安全であり続けるべきというものだ。

ビットコインの役割と「余興」としてのルーンズ

「どのようなブロックチェーンでも興味深いことは、政府に抵抗できるという範囲においてだけだ」と、ロダーモー氏は5月31日、テキサス州オースティンで開催された「Consensus 2024」のステージで語った。

「私は、ビットコイン(BTC)の最も大切な役割は、個人が取引するために取り入れ、やりたいことがなんでもできるハードマネーであることだと考えている」

オーディナルズとルーンズは、ビットコイナーたちの間で熱狂と同じくらい反感を生んでいるが、ロダーモー氏が手がけたこれらのプロトコルは、ビットコイン取引の検閲を止めることが難しいのと同じくらい止めることが難しいものを、ビットコインを使って開発するできることを示す確固とした証拠となった。

ロダーモー氏はそうして、ビットコインがほとんど好きなように使えるという事実を讃える新しい時代(ビットコイン・シーズン2と呼ばれることもある)をスタートさせた。

とはいえ、2024年4月19日のビットコイン半減期に合わせて立ち上げられた彼の最新プロジェクトであるルーンズは、ビットコインそのものよりも明らかに重要性が低いことをロダーモー氏はあっさりと認めた。

ロダーモー氏は、イーサリアムブロックチェーンのトークンに似た取引可能な資産をビットコインブロックチェーン上に作ることを可能にするこのプロトコルを「余興」と呼んだ。

「ビットコインほど重要ではない」とロダーモー氏。

暗号資産(仮想通貨)トレーダーが望むような、「ニッチで、楽しく、退廃的なものを提供する」。そして、ルーンズやオーディナルズの価値はそこにある。オンチェーンギャンブルの出口を作ることで、かつて低迷していたビットコインの手数料エコノミーを強化することにもつながる。

持続可能な手数料源を生み出す

実際、4月の半減期には、これまでにビットコインブロックに支払われた手数料として過去最高額となる240万ドル強(約3億7400万円、1ドル156円換算)相当のビットコインが手数料として支払われた。

bitinfochartsによると、取引手数料は4月中も高止まりしていたが、その後は平均3ドル程度に正常化している。しかしこれは、2022年から2023年の大半にかけて見られた1ドル以下の水準よりも高い。

「私は、ビットコインにとって良くないと考えていたなら決して行わなかった」とロダーモー氏は語り、マイニング補助金として流通するビットコインの量には上限があるため、ネットワークのセキュリティは最終的に取引手数料で賄わなければならないと説明。「そのような手数料の新しいソースが登場することは、早いに越したことはないと思う」と続けた。

ロダーモー氏は、自らの仕事はチェーンスワップから取引のさまざまな設定方法まで、「普通のユーザー」を惹きつける可能性のある、あらゆる種類のツールを開発している人々の連続したつながりの一部だと付け加えた。しかし、これらのツールがビットコインにとって最終的に有用となるのは、ネットワークの「セキュリティと堅牢性に貢献する」場合だけだ。

「これはビットコインの運命を予見させるものだと思う。手数料が非常に高くなるとどうなるのかを垣間見ることができる」

ビットコインの「無政府的」なガバナンス構造を考慮すると、この指摘は一段と重要性を持つ。ビットコインのガバナンス構造は、民主主義に関するチャーチルの有名な言葉に似て、「機能不全」だが、おそらく「ビットコインが持ち得る、間違いなく最良のガバナンス形態」だろうとロダーモー氏は語った。

ビットコインに直接責任を持つ個人や団体は存在しないため、持続可能な手数料エコノミーを発展させる唯一の方法は、実際に使える製品を送り出すことだ。

「ビットコインのガバナンスについて人々を不安にさせるのは、正式なガバナンスが存在しないことだ」

存在すれば、ルーンズやオーディナルズのようなプロトコルは許可されなかっただろう。長年の開発者であるLuke Dashjr氏を含むビットコイン界の重要人物の中には、ロダーモー氏のプロジェクトを強く批判し、この種の取引を検閲しようとする動きさえある。

「個人的には、ビットコインについてのツイッター/GitHub上でのコンセンサスプロセスに参加しようとするくらいなら、毒を飲んで橋から飛び降りた方がましだ」とロダーモー氏は語った。

彼は、オーディナルズとルーンズが予想外のサクセスストーリーだったとしても、プロトコルを開発するために助成金や資金提供を受けたわけではないと主張。「私は熱狂的なファンだ」と付け加えた。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:「Consensus 2024」に登場したケイシー・ロダーモー氏(CoinDesk/Shutterstock)
|原文:You May Not Like It, but Casey Rodarmor Proves Bitcoin Is Permissionless