イギー・アゼリアのミームコイン高騰、50万円を14億円にしたトレーダーも

ラッパーのイギー・アゼリアのMOTHERトークンは6月6日に史上最高値を再び更新。ソラナ（Solana）で最新の人気ミームコインのリターンを拡大し、セレブ暗号資産（仮想通貨）という非常に危険で、時には悪名高いサブセクターへの批判を招いた。

ローンチからわずか1週間余りで、MOTHERトークンは時価総額2億ドル（約310億円、1ドル155円換算）に達し、この24時間だけで90％の価格上昇によって、一部のギャンブラーたちの間に億万長者を生み出した。アゼリアは自身の強力なXアカウントを、800万人のフォロワーにトークンを宣伝するプラットフォームに変えた。

時価総額の高騰によってMOTHERは、ソラナで急成長しているミームコインセクターでも上位にランクインした。最近では、誰でも数分で、何かを風刺するトークンを作ることができる。今回は、トークンを作ったのがオーストラリア出身のラッパーのイギー・アゼリアで、風刺の対象は彼女のお尻の写真だった。

MOTHERは、ミームコイン作成プラットフォーム「Pump.Fun」から生まれたトークンの中では、時価総額で2番目に位置している。暗号資産メディアThe Blockによれば、ソラナには5月だけで50万近くの新しいトークンが登場したが、その一因がPump.Funだ。

Pump.FunでMOTHERを買い、保有し続けたギャンブラーたちは、巨額の富を手にしている。トップのウォレットは5月28日に約3200ドル（約50万円）相当のトークンを保有していたが、6日の朝にはそのポジションは約900万ドル（約14億円）の価値があった。

多くのミームコインがそうであるように、MOTHERは何の価値提案も主張していない。保有者は、ロイヤリティ付きNFTのように、アルバムの売上から支払いを受けることはない。また、一部のサッカーチームが発行するファントークンのような投票権もない。MOTHERの価値は、純粋にこのコインに対する需要の働きであり、一部の投機家はこのコインがさらに高騰する可能性に賭けている。

イーサリアムの生みの親は批判

このようなバブルは、いわゆるセレブトークンに対する監視の目を新たにした。

イーサリアムの創設者、ヴィタリック・ブテリン氏は5日、セレブトークンを「目的達成の手段としての金融化」をアピールし、大きな目的を持たないとして批判した。

その数時間後、アゼリアは幼児化させたブテリン氏に自らが母乳を与えるを様子を表現した画像をXに投稿。「彼はお腹が空いて怒っていただけなの」と、空腹による不機嫌を意味するスラング（hangry）を使ってコメントした。

この本筋から外れた投稿は、暗号資産の哲学的界隈からさらなる批判を招いた。分散型取引プロトコルのユニスワップ（Uniswap）の生みの親であり、ミームコインをはじめとする基本的にあらゆるもののオンチェーン取引を支えるトークン交換テクノロジーのパイオニアであるヘイデン・アダムス（Hayden Adams）氏は、アゼリアは「この業界最高の開発者」を揶揄したが、自らの暗号資産への進出をより高尚な目的のために活用することに失敗したと批判した。

100万ドルのジョークとして始まったこの騒動は、暗号資産そのものの意義についての議論に発展している。

マーケットメイキング大手、Wintermuteのエフゲニー・ガエボイ（Evgeny Gaevoy）氏は6日朝、「資本主義を解決する」というアダムス氏とブテリン氏の取り組みを軽んじ、「この件に関してはイギーに賛成だ🙃」とXに投稿した。

リスク要因

それでも、MOTHERがミームコインの大リーグ入りを果たすでには長い道のりがある。ドッグウィフハット（Dogwifhat）に早くから賭けて1500ドルを数百万ドルに変えた偽名の暗号資産トレーダーのBlockgraze氏は、MOTHERのようなセレブコインは、通常のジョークトークンよりも多くの「失敗のベクトル」に直面していると述べた。

「通常のミームコインが失敗する可能性のあるすべての方法に加えて、彼女個人を結びつけることによるミスやリスクが追加される。彼女は飽きたり、間違ったことをツイートしたり、個人的な法的措置に直面したりする可能性がある」とBlockgraze氏は指摘した。

アゼリアが主要な広告塔となることで、他のセレブトークンがほとんど到達できていない価格へと、MOTHERの価格はを押し上げている。

彼女のXの投稿は、休みなく淫らなミームを流通させ、彼女を嫌う者を撃退し、MOTHERへの注目と盛り上がりを煽っている。彼女はまた、プロフィール写真をソラナで最も価値のあるコレクティブルであるMad Lads NFTに変えた。

Blockgraze氏は、「イギー・コイン自体が本当に興味深いのは、彼女がそれに固執しようとしているように見えるからであり、今のところ、価格は人々がそれを評価していることを反映している」と語った。

セレブの関与？

有名人が暗号資産を宣伝した事例は悪名高いものが多い。ラリー・デイビッドの派手なFTXスーパーボール広告は、破綻した詐欺取引所の顧客からの訴訟を巻き起こした。元ボクサーのフロイド・メイウェザーは、詐欺まがいのプロモーションで2度も窮地に陥った。キム・カーダシアンは、トークンを宣伝したことで証券取引委員会（SEC）からの罰則に直面した。

MOTHERは、多くの点でこれらトークンとは異なるが、特にアゼリアとトークンの近さは特筆すべきだ。アゼリア自身がPump.Funでトークンを作成したかどうかは不明だが、技術的には彼女が作成した可能性が高い。いずれにせよ、彼女はその最初期からこのトークンを宣伝してきた。

トークンのいわゆる「開発者ウォレット」（トークンを作るのに技術的なスキルは必要ないにもかかわらず、Pump.Funはトークン作成者のウォレットを「開発者の」と呼んでいる、）には、6日に約500万ドル相当のMOTHERが保管されていた。

アゼリアは6日時点では、インタビューには応じていない。5月下旬のXへの投稿では、トークン発行の理由の一部を次のように説明している。

イギー：アゼリア：

率直に言うと、
人々が負けても気にならない程度に楽しく勝ちつつ、時には損失を被ってギャンブルを楽しむのと同じモチベーション。
それから、少なくとも私にとっては… 
ブラックジャックのテーブルに座って、人と話すのが好きなの。
そのスリルが好きなのだと思う。

bBYb：

私の唯一の疑問は

なぜ今なのか？

何がきっかけだったのか？

ほとんどの人は、友人が「ほら、これでこんなに儲けたよ」と言うから暗号資産に手を出す。

しかし、もしお金が動機でないなら、なぜ？

｜翻訳・編集：山口晶子、増田隆幸
｜画像：Kobby Dagan / Shutterstock.com
｜原文：Iggy Azalea’s MOTHER Meme Coin Turned $3K Into $9M for 1 Lucky Crypto Trader