gumi國光会長「リブラは法定通貨にリンクさせるべきじゃない」──「Dappsとコンテンツ産業」セッション盛況【b. tokyo】


ブロックチェーンカンファレンス「b.tokyo」の2日目となる10月3日、「分散型アプリケーション(Dapps)でコンテンツ産業は変わるか︖ ―ゲーム、アート、音楽、エンターテインメント」と題したセッションには、gumiの国光宏尚会長が登壇。話題のFacebookのデジタル通貨リブラについて、法定通貨とリンクさせるべきではなく、SNS内だけで使える通貨にすればよかったなどと述べた。

スタートバーン施井泰平、エイベックス・テクノロジーズ岩永朝陽の両代表も登壇。モデレーターはメタップスアルファの青木宏文氏が務めたこのセッションは、立ち見が出るほど盛況だった。

「ブロックチェーンでないとできないことをやるべきだ」

國光氏はゲームの企画・開発・運営のgumi会長ということもあって、一般のゲームに対する評価が低いことを嘆き、「ゲームはインテリに不当にバカにされるが、どんなテクノロジーも最初はほぼゲームから始まっている」と述べ、「すべてはゲームにつながる」と強調した。

ブロックチェーンの活用法については、「既存の事業と置き換えようとするとうまくいかない。リアルとブロックチェーンつなげるのはほぼ意味がない」と指摘。その例として、Amazonを引き合いに、利益を出せているのは(物流というリアルとつながりのある)ECではなく(デジタル完結の)AWSだとした。

ブロックチェーンで不動産管理はナンセンス

いまリアルとデジタルをつなごうとしている企業の取り組みについては、「デジタルで完結する広告、クラウドなど(の商品)を先行したGAFAに取られてしまったため、仕方なくリアルとの連携と言っているだけ」と分析、(リアルとデジタルをつなぐ)WeWorkやUber、Airbnbを例に(GAFAと比べれば)儲けられないと言い切った。

さらに、ブロックチェーンじゃなくてもできることをやる意味はなく、「ブロックチェーンでないとできないことをやるべき」と述べ、不動産のブロックチェーンを「もめたら裁判所に行かないといけない。ナンセンスだ」と喝破した。

「Facebookは路線を変更するだろう」

そのうえで、Facebookのデジタル通貨リブラについても「フィアット(法定通貨)とも連携せず、たとえばFacebookや(同社のVR SNS)ホライズンだけで使える通貨がリブラです、とすればよかった」と話した。

今後の展望として、「フェイスブックはリブラの方向性は撤回し、Dappsのプラットフォーム開発に注力し、ゲームをつくるはずだ。マーク・ザッカーバーグの偉いところは間違いを認められるところだ」と述べた。

施井氏「あらゆるものが投資財になる。すべてのものがアートになる」

議論の白熱したセッションは満席に

國光氏の発言を受けて、スタートバーンCEOの施井泰平氏は「國光さんは『すべてがゲームに』とおっしゃったが、私の立場からはすべてがアートになっていく、といいたいですね」と会場の笑いを誘った。

同社はブロックチェーンを活用し、アート流通・評価のインフラとなるArt Blockchain Network(ABN、アートブロックチェーンネットワーク)の構築を推進しており、10月15日にはそのホワイトペーパーの公開を予定している。これはアート作品の流通を管理し、(アートに関わる)いろいろなサービスを横断して使うことができ、作者に還元される仕組みでありインフラだという。

今後の展望として、ブロックチェーンの活用によってノンファンジブルトークンを生み出せるように、「コピーが可能だったデジタルコンテンツの世界に実存を与える」と述べた。そして、國光氏が関わったフィナンシェが(夢を追いかける人がアピールし、支持するファン・フォロワーが支援することから)“人間株式会社”といえるように、すべてのモノが会社化、投資財になりえる。またすべてのものがアートになっていくと言える」などと話した。

スタートバーン、Maecenasとのパートナーシップ締結を発表

また同社はこの日、作品分割所有サービスを世界的に展開するMaecenasとのパートナーシップを締結したことを発表した。同社は香港・シンガポールなどを中心に、アート分割所有権をブロックチェーン上で取引するサービスを世界展開しているスタートアップ。

施井氏はこの締結について、「ABNのビジョンは、世界中のアート関連の参加者をつなぐインフラおよび接点になることです。 そのため、他のブロックチェーンプロジェクトとの相互運用性を非常に重要視しており、今回の提携はそのビジョンを体現するもの」などとコメントした。

エイベックス岩永氏──UGCのユーザーへの配分にブロックチェーンを活用できる

エイベックス・テクノロジーズはブロックチェーンを活用し、特定のデジタルコンテンツに証明書を付与する技術「A trust」を開発している2019年5月にできたばかりのスタートアップ。

同社は最近、アニメ制作ツールAniCast Maker(アニキャスト メーカー)」の商用化に向け、VR/AR/MRの企画・開発・コンサルティングを行うエクシヴィ(XVI)と合弁会社を設立したばかりだ。アニキャストメーカーはVR空間上にキャラクターやカメラを配置し、そのアバターに入って演技することで、アニメーションを従来より簡単に制作できるというツール。

岩永朝陽代表は、アニメ制作の状況について、従来のアニメはTV放映フォーマットあわせて30分12話で、1話の制作費は1500万くらいだったのが、今は3000万円かかると紹介。配信が主流になりつつある中で、1分100万円かかるとマネタイズに困るという嘆きから、配信型ならTV放映型の作り方よりコスト落とせるのではないかという視点があると指摘。

アニキャストメーカーで制作のハードルが下がり、複数のユーザー(制作者)が参加して、「私は背景を描きます」「私はボイスキャストをやります」「撮影やります」といろいろな人が参加しても、「ブロックチェーンを使うことで、制作者それぞれに(利益を)配分しやすくなる」などと述べた。

文・写真:濱田 優
編集:小西雄志