- ビットコインETFへの資金流入は方向性のないキャッシュ・アンド・キャリー戦略の一部のようで、必ずしも明確な強気の投資を表したものではない。
- ステーブルコインを通じた資金流入も鈍化している。
米国上場の現物ETF(上場投資信託)への記録的な資金流入にもかかわらず、ビットコイン価格が狭いレンジで推移しているため、暗号資産市場関係者の見通しは流動的だ。
現状は、ビットコインETFに数十億ドルが流入し、価格が高騰した第1四半期とは明らかに対照的。当時、ほとんどのトレーダーはETFを通じて、強気の見通しに投資していただろう。
だが今はそうではないようだ。
「ETFを買い、(CMEの)先物を売ってベーシスをロールダウン(現物と先物の価格差から利益を得ること)している法人や組織がいる。一部のプライムブローカーがそうした法人や組織にそれで利益を上げさせている。これがETFへの資金流入が多い理由でもあるが、現物価格は比較的動きがない」とCMSホールディングス(CMS Holdings)はXに投稿した。
I love a good conspiracy to blow up btc shorts but this ain’t it
— THE CMS (@cmsholdings) June 8, 2024
It’s entities buying etf and selling futures to roll down basis some primes are letting entities net that
This is also why etf inflows are high but spot is relatively unch
Have a good weekend https://t.co/KN7YkNID9s
キャッシュ・アンド・キャリー・アービトラージとして知られる戦略は、現物市場に対する先物市場のプレミアムから収益を得ようとする。
トレーダーたちは、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)でビットコイン先物を空売りしながら、ETFでロングポジションを取っているようだ。データソースのクイックストライク(QuickStrike)によると、先週時点で、米商品先物取引委員会(CTFC)がヘッジファンドおよびと商品投資顧問と分類した事業者は、1万8175枚の記録的なショートポジションを取った。
同様の結論は、建玉、つまり1契約あたり5BTCのCMEビットコイン先物契約の未決済残高がETFへの資金流入と並行して増加したという事実からも導き出せる。
すなわち、記録的なショートは必ずしも明確な弱気の投資ではなく、ETFへの資金流入は必ずしも明確な強気の投資ではない。どちらも方向性のない戦略を構成するものであり、ビットコイン価格は方向性がないままだ。
ビットメックス・リサーチ(BitMEX Research)によれば、ミレニアム(Millennium)やションフェルド(Schonfeld)といったビットコインETFの大口保有者は、キャッシュ・アンド・キャリー・アービトラージ(ベーシス取引)に関与している可能性が高い。
「我々は、CME Commitment of Traders(COT)レポートが伝えた、ヘッジファンドのカテゴリーにおけるショートポジションの増加はベーシス取引に関係しているという@cmsholdingsの見解に同意する。主な要因は、おそらくプライムブローカーがビットコインETFを担保として使用することをより前向きに認めていることだ」とビットメックス・リサーチはXで語った。
一方、第1四半期に強気な圧力のもう1つの重要な要因となったドル連動型ステーブルコインを通じた資金流入も鈍化しており、ビットコインの価格上昇を阻んでいる。
「現在、レンジ上限付近で、ビットコインは新たな史上最高値更新に苦戦している。これは、4月20日のビットコイン半減期が原因だろう。半減期後、ステーブルコインの発行は顕著に減速し、1000万ドル超のステーブルコインを保有するウォレットは減少した。このトレンドは現在、ビットコインの史上最高値更新を妨げている」と10xリサーチ(10x Research)の創設者、マーカス・ティエレン(Markus Thielen)氏は6月10日の顧客向けメモで述べた。
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:damirbelavic/Pixabay
|原文:Explaining Bitcoin’s Dull Price Action Amid Record ETF Inflows