暗号資産レンディング分野にセカンドチャンス──「退屈、ゆっくり、安全 」で冬を生き残る
  • ビットコインETFと、破産企業から資産を取り戻した顧客のおかげで、暗号資産(仮想通貨)レンディング分野は復活しつつあるとLednの共同創業者は語った。
  • ビットコイン価格の上昇は「長期保有」の確かさを裏付けた。
  • Lednは 「退屈、ゆっくり、安全 」に徹することで「暗号資産の冬」を生き残った。

ビットコイン(BTC)ETFの成功や、債権者が破産した企業から資産の一部を取り戻したおかげで、暗号資産レンディング分野は、複数のレンディング大手が破綻した「暗号資産の冬」から回復しつつある。

復活

「この市場に活況が戻ってきている」と、暗号資産レンディング会社Lednの共同創業者マウリシオ・ディ・バルトロメオ(Mauricio Di Bartolomeo)氏は、テキサス州オースティンで開催された「Consensus 2024カンファレンス」でのインタビューで語った。

「市場はなくなってしまったわけではなく、(ただ)不安を感じていただけだった」

暗号資産レンディングは従来のバンキングに似ている。顧客はLednのような会社にビットコインなどの暗号資産を預け、利息を得たり、融資を受けたりできる。レンディング会社は、預け入れた人に支払う利息を、顧客が預け入れた暗号資産を他人に貸し出し、利子を請求することで賄う。

暗号資産価格が急落した2022年、セルシウス(Celsius)、ブロックファイ(BlockFi)、ジェネシス(Genesis)などの大手が破産を申請するなど、暗号資産レンディング分野は劇的に崩壊した。

その後、デジタル資産市場は弱気市場の低迷から回復。価格は急騰し、CoinDesk 20 Index(CD20)は2022年末から200%以上上昇。さらに昨年末、ブラックロック(BlackRock)をはじめとする伝統的金融(TradFi)大手がビットコインETFのローンチを申請し、1月にスタートしたことで上昇は加速した。

Lednのディ・バルトロメオ氏は、ビットコインETFを取り巻くポジティブなストーリーが、ユーザーがレンディング市場に戻ってきた大きな理由のひとつだとして、次のように語った。

「ビットコインは2万ドルから7万ドルに上昇し、米国の政治レースの焦点となった。つまり、資産としてのビットコイン、そしてレンディングの担保としてのビットコインに、より多くの関心が寄せられ、商品市場が形成されている」

実際、Lednは2024年第1四半期に6億9000万ドル(約1083億円、1ドル157円換算)以上の融資を扱い、2018年の創業以来最も成功した四半期となった。1月にビットコインETFがスタートした後に需要は急増、融資の84%以上が機関投資家向けだった。Lednはビットコイン、イーサリアム(ETH)、2種類のステーブルコイン、USDコイン(USDC)とテザー(USDT)での融資を行っている。

現在、この分野に参加している企業は、ウォール街と暗号資産ネイティブのマーケットメーカーが大半。

「これらの企業は、現物市場だけでなくETF市場でも活動している。暗号資産業界で名を上げた企業もあれば、TradFiで成功した企業もある」と、ディ・バルトロメオ氏は語った。

破産企業による弁済

ユーザーがレンディング市場に戻ってきているもうひとつの理由は、倒産した企業の多くがユーザーに資金を返済し始めていることだ。ディ・バルトロメオ氏によれば、そうしたユーザーの多くは今、レンディング市場に戻ってきているという。

その理由についてディ・バルトロメオ氏は、これらのユーザーのほとんどにとって、市場の低迷にもかかわらず、投資の基本スタンス「長期保有すれば、資産の価値は上昇する」が功を奏していると説明した。

これらのユーザーは一部の悪徳業者によって打撃を受けたが、資産を取り戻し始めれば、「筋金入りのユーザー」の多くは売却しないだろうとディ・バルトロメオ氏。このような時に、ユーザーはレンディング市場に目を向け、借り入れや貸し出しに資産を活用していると付け加えた。

「私が目の当たりにしていることは、人々がビットコインを長期保有しつつ、同時に有効活用もしたいと考えている、議論の余地のない証明のようなものだ」

ある顧客が何百万ドル相当のビットコインを保有していても、伝統的な銀行はローンの担保として認めてはくれない。「我々(Lednのようなレンディング業者)は、このような顧客のために橋渡しをする」とディ・バルトロメオ氏は付け加えた。

「暗号資産の冬」を生き残る

では、Lednのような中央集権型レンディング会社は、多くの同業者が倒産した「暗号資産の冬」をどのように生き残ったのだろうか?

簡単に言えば、貸し借りビジネスの基本に忠実であることによってだ。

ディ・バルトロメオ氏によれば、Lednは、精査された適格機関とのみ取引を行い、資産と負債のミスマッチを起こさず、DeFiイールドファーミングにも参加しない。

「つまり、誰かがビットコインを私に貸してくれたら、私はビットコインを貸し出す。誰かがドルを私に貸してくれたら、私はドルを貸し出す。常に受け手がいて、常に流動性がある」とディ・バルトロメオ氏は説明した。

また、貸し出しと借り入れはすべて期間を合わせて行っている。つまり、あるユーザーが7日間の条件で資産を貸した場合、Lednはそれを5日間で返済できる別のユーザーに貸し出し、資産の流動性を確保する。

「多くの人は我々のことを退屈と言っていたが、我々はそれに対して、『退屈、ゆっくり、安全』が我々のやり方だと答えていた」とディ・バルトロメオ氏は語った。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Lednの共同創業者マウリシオ・ディ・バルトロメオ氏(左)とアダム・リード氏(Ledn)
|原文:Bitcoin ETFs, Bankruptcy Paybacks Have Given Crypto Lending a Second Wind