米国市場参入、著作権管理…LINEのブロックチェーン統括が明かした戦略

9月に日本の仮想通貨(暗号資産)市場に本格参入したLINE。

同社でフィンテックやブロックチェーン事業の責任者を務める高永受(Youngsu Ko)氏が10月2日、東京・目黒で開かれたカンファレンス「b.tokyo 2019」に登壇し、LINEのブロックチェーン戦略を語った。

独自のブロックチェーンプラットフォーム「LINK Chain」を中心に、決済や送金といった仮想通貨の機能にとどまらず、著作権管理や個人情報の管理などにもブロックチェーンを活用していく考えだ。

仮想通貨取引所としては、米国市場の参入も準備しているという。


アジア市場から日本。そしてアメリカへ

LINEの子会社LVCが9月上旬、資金決済法に基づく仮想通貨交換業者としての登録を完了させ、9月中に日本市場向けの取引所BITMAXのサービスを始めている。

LINEは国内事業の前に、海外市場で仮想通貨取引所の事業を始めた。シンガポールを拠点に、日本とアメリカを除く市場を対象とする取引所「BITBOX」を2018年7月に立ち上げている。

高氏によれば現在、アメリカでの取引所の開設も準備を進めているという。

グローバルでみると、BITMAXが日本、BITBOXが日本とアメリカを除く市場、新たに開設する取引所がアメリカで取引所事業を展開するという体制だ。

2018年秋には、独自の仮想通貨「LINK」を海外向けにリリースした。

海外向けには、LINEの各種サービスを利用したユーザーに対して、ポイントの代わりにLINKを付与する。

海外では、LINEのサービスでLINKを利用できるほか、自社の運営する取引所BITBOXで他の仮想通貨とも交換できる。

一方、日本ではまだLINKは利用できない。新しい仮想通貨を取引所が取り扱うには、自主規制機関「日本仮想通貨交換業協会」の審査などを通過する必要がある。

「LINK」の広がり

10月3日、国内最大級のブロックチェーンカンファレンス「b.tokyo」に登壇したLINEの高永受氏(写真・中央)。

日本国内でLVCは当面、ビットコインやイーサリアムといった主要仮想通貨を取り扱っているが、LINKの取り扱いも視野に入れている。

高氏はこう語る。

「LINEのサービスには、クーポンなど、インセンティブとして支払う手段はすでに存在していたが、一過性のものだった。それに対してLINKは、ユーザーに直接参加をしてもらい、サービス側とユーザーがいっしょにサービスを成長させていく姿を目指している」

LVCは今後、サードパーティにもLINK Chainを開放し、外部のサービスでもLINKが使えるよう、拡大を進めていく方針だ。

日本でのLINKの取り扱いが具体化すれば、LINEの利用者に付与されるLINEポイントとの交換なども予想される。

仮想通貨を取り引きする口座の開設には、本人確認(KYC:Know Your Customer)などの手続きの負担から一定のハードルがあるが、強力な顧客基盤を誇るLINEは、利用者確保の面でもアドバンテージがある。

すでに本人確認手続きを終えたLINE Payのユーザー約490万人の存在だ。

「KYCを終えている人は、BITMAXに登録する際にもすべてのKYCプロセスを経る必要はない。一部のプロセスを経るか、それもなしに、すぐに使うことができる」と、高氏は説明する。

高氏は、「外部のパートナー」とともに、著作権管理分野でブロックチェーンを活用するプロジェクトを進めていることも明らかにした。

プロジェクトの詳細については、「まだ話せない」(高氏)という。

取材・文・写真:小島寛明
編集:佐藤茂