スイス国立銀行とスイスのデジタル取引所、CBDC・トークン化証券についての調査期間を延長
  • スイス国立銀行とスイスのデジタル取引所は、ホールセール向け中央銀行デジタル通貨の調査期間をさらに2年間延長する。
  • 現在完了しているプロジェクト・ヘルベティアIIIには、総額7億5000万フランを超える7つのデジタル債券の発行が含まれていた。

スイス国立銀行(SNB)とスイスのSIXデジタル取引所(SDX)による、ホールセール向け中央銀行デジタル通貨(CBDC)を通じたトークン化証券の決済についての調査は新たな段階に入り、今後2年間で他の金融機関や取引タイプが追加されることになる。

トークン化への関心が高まったことで、ブロックチェーン上で大規模な取引を決済することを目指すホールセールの市場参加者によるCBDC実験がますます行われるようになっている。スイスの取り組みのほかにも、多数の中央銀行と国際決済銀行(BIS)が関与するプロジェクト・アゴラ(Project Agorá)のような取り組みがある。

今回の期間延長に先立ち、今月プロジェクト・ヘルベティアIII(Project Helvetia II)が完了していた。このプロジェクトには総額7億5000万フラン(約1350億円、1フラン180円換算)を超える7つのデジタル債券の発行が含まれており、SIXデジタル取引所の責任者であるデビッド・ニューンズ(David Newns)氏によると「めざましい成功」だったという。

ニューンズ氏はインタビューで、「ここで話しているのは、伝統的なインフラと同等に良好だということだ」とし、「現在、現金部分に関してデジタル証券はほぼ同等を達成しており、これは担保市場への組み込みが可能なので、レポに使用できる。伝統的金融への橋渡しも行っており、発行者は伝統的な取引所で得られる流動性ベース全体にアクセスできる。このプロジェクトの結果、参加メンバーは3倍に増え、それぞれのデジタル化の目標を推進する手段として当社を利用している」と説明した。

他の多くの中央銀行と同様に、スイス国立銀行はリテール向けCBDCの実験には関心がなく、ホールセール向けの証券決済のための機関によるデジタルキャッシュフローにのみ関心を持っている。

ニューンズ氏は、ブロックチェーン上で取引が行われると中央銀行の即時グロス決済システム(RTGS)のトリガーとなる仕組みや、破綻隔離事業体がメンバーの預金を何らかのステーブルコインで保有するなどの他のアプローチも検討されたと述べた。

一方で同氏は、「本当に中央銀行通貨のように機能するものは何もない。だからこそ、誰もが可能な限り使おうとする決済資産なのだ」と述べた。

|翻訳・編集:林理南
|画像:Shutterstock
|原文:Swiss National Bank and SDX Delve Deeper Into CBDCs, Tokenized Securities