テレグラムは「暗号資産普及マシン」──暗号資産トンコインは時価総額トップ10に

暗号資産(仮想通貨)関連のポッドキャストやカンファレンスに耳を傾けると、暗号資産ネイティブの人々が、世界中の人々をオンボーディングさせるキラーアプリはまだ登場していないと語っている。

しかし、すでに存在しているとしたらどうだろう? 私はテレグラム(Telegram)と一握りの独立系開発者が、2014年以降この分野に殺到した1000億ドルのベンチャーキャピタルよりも、多くの一般の人たちを暗号資産に取り込むうえでの大きな前進をもたらしたと考えている。

暗号資産の普及は、貧弱なUX、実世界での限定的な有用性、お粗末な流通によって妨げられてきた。ブロックチェーン「The Open Network(TON)」への対応と統合を通じて、テレグラムはこれらすべての問題、さらにはそれ以外の問題にも対処している。

暗号資産愛好家の視点から

暗号資産はその初期から最近まで、主に暗号資産投機家向けのニッチな技術開発に重点を置いており、現実世界での実用性に欠けていた。現物ETF(上場投資信託)が登場し、ブラックロック(BlackRock)などの大手金融機関が資産トークン化に特化したファンドをオープンした今こそ、進化の時だ。

テレグラムは、8億人の月間アクティブユーザーを誇るメッセージングアプリ、暗号資産導入の手段となるTONブロックチェーン、そしてシンプルに「Wallet(ウォレット)」と呼ばれるネイティブウォレットを組み合わせた。

暗号資産を売り込むためのプレゼンの多くは、「Web2とWeb3の融合」というコンセプトを漠然と理想化して表現するが、テレグラムは実際に実行している。

この組み合わせにより、テレグラムは暗号資産の足かせとなっていた3つの核心的な問題に対処している。私の見解では、ステーブルコインはこれまでで暗号資産におえる最高の製品だ。4月からTONブロックチェーンにテザー(USDT)がネイティブで導入されたことで、シームレスなP2Pの価値移転が現実のものとなった。

ユーザーは、ワッツアップ(WhatsApp)でメッセージを送るように、簡単に暗号資産を友人に送ることができる。これはヴェンモ(Venmo)やレボリュート(Revolut)のようなネオバンクよりもスムーズなUXで、伝統的な銀行よりもはるかに進んでいる。

しかし、数億人を暗号資産に取り込むチャンスは、テレグラムのMini Apps(企業が暗号資産に親和性のあるアプリを開発・展開するためのオープンプラットフォーム)を通じてもたらされる可能性が高い。

これにより、暗号資産チームは、暗号資産ネイティブでない人々に製品を流通させることができ、エンドユーザーは、楽しいモバイルゲームであれ、DeFiプロトコルであれ、暗号資産製品を使用していることを必ずしも認識する必要はない。

暗号資産ネイティブの視点から

テレグラムはかなり前に暗号資産における地位を確立した。暗号資産ネイティブの間では、連絡を取り合ったり、アイデアを共有することに使われる人気プラットフォームであり、通常、新しい暗号資産プロジェクトがXアカウントとともに最初に立ち上げるソーシャルメディアチャンネルだ。

さらに最近では、オンチェーントレーダーにとってそれ以上の存在となっている。新世代のテレグラム取引ボットが暗号資産のUXを一変させ、おそらくオンチェーン取引も一変させた。売買、指値注文の設定、新プロジェクトのリサーチ、新しくローンチしたトークンの素早い購入、「スマートマネー」のコピー取引など、すべてが1つのコマンドで簡単にできるようになった。

オンチェーン取引で最もイライラさせられるUXの問題から解放してくれるテレグラムボットを使うことは、新鮮な体験だった。暗号資産プロダクトで「これは素晴らしい」と感じたのは非常に稀なことだ。しかし、アルトコイン取引の競争を激化させ、私が考える「アルトコインの蔓延」に拍車をかけたのも事実だ。

これはアルトコインの取引/投資が終わってしまったことを意味するのだろうか? そうではない。現在の新規参入者がスマートコントラクトとやり取りする簡単さは、私が始めた頃と比べれば、隔世の感がある。このことは、流通やますます便利になっていくアプリと相まって、今後数年間で暗号資産に新たな資金が流れ込むことを意味する。

エキサイティングだが、やるべきことは残っている

UXの向上は、誇張してもし過ぎることはない。というのも私自身、TONウォレットを使って、非暗号資産ネイティブの友人をこの世界に招き入れたことがあるからだ。テレグラムに現在のインフラが導入される前は、友人に暗号資産の使い方を教えようと考えるだけで小さなため息が出た。今はテレグラムのおかげで、これ以上簡単なことはないと思うほどだ。

つまり、テレグラムとTONブロックチェーンの勝利ということだろうか? そうとも言えない。UXと流通の改善は大きな飛躍だが、消費者向けのアプリの幅広いラインナップはまだ見られない。Mini Appでの開発は進み、例えば、ゲーム開発者にとっては、巨大なユーザーベースから注目を集める、楽しいテレグラム対応ゲームを作るという大きなインセンティブがある。

しかし、現在存在するものは、実用性よりもミームベースだ。規制も懸念事項として残っているが、これはテレグラムやTONに限ったことではなく、業界全体で進行中の問題だ。

テレグラムとTONブロックチェーンにはやるべきことがたくさんあるが、私は彼らはやり遂げると信じている。市場はこれをすでに価格に織り込み済みのようで、暗号資産トンコイン(TON)はすでに時価総額で暗号資産トップ10にランクインしている。トンコインの躍進は、我々がよく知る熱狂的な投機によるところが大きいが、その成長の多くを裏付ける本当のファンダメンタルズがある。

我々の多くは、暗号資産がマスアダプションする未来を望んでいる。この思いは、テレグラムの共同創業者兼CEOのパヴェル・ドゥロフ(Pavel Durov)氏も同じで、同氏はビットコイン支持者だ。

TONブロックチェーンのミッションステートメントは、「すべてのポケットに暗号資産を入れる」こと。簡単に言えば、テレグラムは、成長中のこの業界のどの企業よりも、それを実現するのに有利なポジションにある。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Christian Wiediger/Unsplash
|原文:Telegram Is Crypto’s Adoption Machine