大手金融機関ら、分散型ID/デジタル証明書(DID/VC)の共同検討開始──「情報銀行」をWeb3でアップデート

三菱UFJ信託銀行、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、ふくおかフィナンシャルグループ、横浜銀行、静岡銀行は、三菱UFJ信託銀行が主催する「DID/VC共創コンソーシアム(Decentralized Identifier / Verifiable Credential Co-Creation Consortium:DVCC)」に「本人確認分科会」を設置し、分散型ID(DID)とデジタル証明書(Verifiable Credential:VC)を活用した新しい本人確認の有効性と実現性の検証を開始した。

リリースによると、本人確認分科会の共同検討企業は以下のようになっている。

DID/VC共創コンソーシアムは、三菱UFJ信託銀行が主催しているが、いわゆる3メガ銀行と大手地銀、企業のDX支援を手がける大手企業が名を連ねている。

金融取引をはじめ、経済活動のデジタル化が進むなか、本人確認、いわゆるKYC(Know Your Customer)は大きな課題となっている。

また一方で、個人情報の管理を大手ITプラットフォームに委ねるのではなく、ユーザー自身で管理し、必要に応じて提供する分散型ID(DID)の考え方は、大手プラットフォームの支配力が強大化したWeb2への反省と、分散型テクノロジーを基盤とした暗号資産(仮想通貨)をはじめとするWeb3の台頭のなかで注目されている。

2024年2月にはデジタル庁が「本人確認ガイドライン方針の中間とりまとめ」を発表。DIDは「ウォレットモデル(仮称)」と名付けられ、新しい本人確認の在り方として注目・検討されている。

本人確認分科会では、金融機関が行った本人確認(KYC)結果を「本人確認済VC」として消費者に発行。他の金融機関での口座開設や、クレジットカードの発行などに用いるスキームを検討する。

「情報銀行」のWeb3アップデート版?

ユーザーが自分の情報を管理・運用し、必要に応じて企業に提唱し、対価を得るという考え方は、Web3から生まれたものではない。数年前には「情報銀行」が注目を集め、金融機関などが新しいビジネスモデルとして模索、政府も後押ししていた。

だが、利用者は増えず、今回、DID/VC共創コンソーシアムを主催している三菱UFI信託銀行も5月に情報銀行サービスを終了している。

DID/ウォレットは、Web3マスアダプションの要であり、例えば、アニモカブランズはメンバーシップNFTプロジェクト「モカバース」が提供する「Moca ID」の利用拡大を進めている。

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今回の取り組みは、「情報銀行」のWeb3アップデート版と捉えることもできる。

個人情報の確認手段としては、一般的には運転免許証が広く使われているが、マイナンバーカードの利用も進んでいる。そしてマイナバーカードはiPhoneへの搭載が進められる。

大手企業が取り組むDID/VCは、最終的にどのような形になるのだろうか。

|文:増田隆幸
|画像:リリースより