第2四半期(4−6月期)、ビットコインを上回ったトークンとは:価格上昇の要因と今後の見通し
  • BRETT、TON、KASは、暗号資産(仮想通貨)市場全体が低迷した第2四半期に輝いた。
  • TONの急騰はメッセージングアプリ大手テレグラム(Telegram)の関与によるもので、KASはそのテクノロジーに関するセンチメントから恩恵を受けた。
  • 第3四半期(7−9月期)はビットコインマイニング銘柄、人工知能(AI)、ゲーム関連が伸びるかもしれない。

第2四半期は、暗号資産市場の主役であるビットコイン(BTC)が低迷し、イーサリアム(ETH)など、ほとんどの主要暗号資産も下落するなか、ブレット(BRETT)、TONネットワーク(Ton Network)のトンコイン(TON)、カスパ(KAS)が輝けるスターとして台頭した。

TradingViewとCoinMarketCapのデータによると、ブロックチェーン「Base」のネイティブミームコインで、コミックシリーズ「Boys’ Club」のキャラクター「Brett」にインスパイアされたBRETTは、2倍以上の15セントとなり、時価総額トップ100の中で最も好調な暗号資産となった。

TONブロックチェーンとして知られる分散型レイヤー1ネットワーク「The Open Network」のネイティブトークンであるトンコイン(TON)は42%上昇して7.65ドル、カスパ(Kaspa)ブロックチェーンのカスパ(KAS)は35%以上上昇した。一方、暗号資産市場全体の時価総額は13.8%減の2兆2000億ドル(約356兆円、1ドル162円換算)。

低迷する市場全体の中で、これらの暗号資産を輝かせたであろう要因は以下のとおりだ。

ミームコインブーム

BRETTの急騰は、単独の出来事ではなく、ミームコインの幅広い上昇トレンドの一部だ。分析プラットフォームDYORのデューン(Dune)ベースの相対力暗号資産ナラティブトラッカーによると、ミームコイン・セクターは3カ月で45%以上上昇した。他のセクターはマイナスとなっている。

カルチャーコインのMOGは、ポジティブなセンチメントとXなどのSNS上でのカルト的な人気に牽引され、もうひとつのトップパフォーマンス資産として浮上した。

MOGの時価総額は4月上旬の2億2000万ドルから7億ドル超に急上昇し、この指標では一時トップ100の仲間入りを果たした。

ミームコインがここ3カ月で最も好調のサブセクター(DYOR)

このパフォーマンスは、投資家がビットコインのような時価総額の大きなコインからミームコインのような小さなトークンに利益を回転させて、価格上昇と個人投資家のFOMO(機会を逃すことへの恐怖:Fear of Missing Out)をあおる強気サイクルの典型だ。

言い換えれば、ミームコインの運命は投資家のリスク選好度と担保能力に左右される。

BRETTは、ビットコインが7万ドル付近の記録的な高値で足元を固め始めた後の5月に急上昇を始め、一時は時価総額が20億ドルの大台に近づいた。

「20億ドルという数字は、多くの確立されたミームコインが利益確定と横ばい推移が起こる前にぶつかる流動性の壁。もちろん、そこから10億ドル高くなるごとに、個人投資家は、これらのミームコインをドージコイン(DOGE)や柴犬コイン(SHIB)のレベルまで引き上げるために、多くのモーメントとリスクを取ることになる。今回の強気相場でトレーダーたちが何を引き起こせるのか、乞うご期待だ」と、スイスワン・キャピタル(SwissOne Capital)のケニー・ハーン(Kenny Hearn)最高投資責任者(CIO)は語った。

スイスワンのトップ50スマート・パッシブ・インデックス・ファンドは、今四半期のリバランス後、そのポートフォリオで最大のミームコインのうち6つを保有しているとハーン氏は付け加えた。

TONとテレグラム

TONの急騰は、世界で15億6000万ユーザーと8億人のアクティブユーザーを誇る、クラウドベースのモバイルおよびデスクトップメッセージングアプリ「テレグラム」との関係によるものだ。

「トンコイン(TON)ベースのエコノミーがメッセージングアプリのテレグラムに根付き始めている」とTONの投資ディレクター、ジャスティン・ヒョン(Justin Hyun)氏は4月にCoinDeskに語った。

テレグラムが広告においてTON決済に軸足を移すことを決めたことや、報酬プログラム「Open League」など、いくつかのきっかけがTONの普及を後押しした。

TONのネットワークは、世界最大のドル連動型ステーブルコインであるテザー(USDT)のインテグレーションや、テレグラムベースのゲーム「Notcoin」のデジタルトークンのデビューによっても後押しされた。

TONのデイリーアクティブアドレスは6月に約60万に増加し、数十億の価値を持つ主要DeFiプロジェクトの基盤となっている世界最大のスマートコントラクトブロックチェーンであるイーサリアムを上回った。

フリップニング(イーサリアムが時価総額でビットコインを追い越すこと)に注目するCT(クリプトツイッターコミュニティ)が見逃していること。

テレグラムの9億人のユーザーベースに後押しされたTONの静かな成長によって、デイリーアクティブアドレスがイーサリアムを上回るまでになった。

TONは本質的に、テレグラムの普及に賭けている。エコシステムはまだ始まったばかりだが、初期の成長は有望だ。しかし、それで十分だろうか?

「第2四半期中、TONのデイリーアクティブユーザー(DAU)は大幅に急増し、イーサリアムを上回った。この成長は、テレグラムに組み込まれた分散型アプリであるミニアプリの導入に起因する。これらのアプリのひとつ、Notcoinはユーザーがテレグラム内でボタンを押すだけでNotcoinを『マイニング』できるため、注目すべき人気を集めた」と、アルカ(Arca)のリサーチ責任者ケイティ・タラティ(Katie Talati)氏は指摘した。

その他の重要な要因としては、TON上でのUSDTのローンチがあり、現在約5億5000万USDTがネットワーク上にあり、競合メッセージングアプリ『WeChat』の主要機能である決済に対抗するためのポジションを確保しようとしている」とタラティ氏は付け加え、暗号資産VCパンテラ・キャピタル(Pantera Capital)が最近、TONに「過去最大の投資」を行ったことも指摘した。

ブロックチェーンのトリレンマの解決を目指すKAS

ハーン氏によると、暗号資産KASの基盤であるプルーフ・オブ・ワーク(PoW)ブロックチェーン「カスパ」のおけるブロックチェーンのトリレンマを解決しようとする試みが、KASが投資家の注目を集める要因になったという。

ブロックチェーンのトリレンマとは、ブロックチェーンテクノロジーの3つの重要な側面、すなわちスケーラビリティ、分散化、セキュリティの間のトレードオフを指す。

カスパのGHOSDAGは、逐次処理に依存する従来のブロックチェーンとは異なり、トランザクションをより非同期、並列的に処理することを可能にする。これにより、PoWコンセンサスメカニズムの安全性を維持しながら、パフォーマンスとセキュリティを向上させることができる。

「このチームは、DAG対ブロックチェーンの構造(スピードとスケーラビリティをサポート)を通じて、PoWのセキュリティ上の利点(セキュリティ)を利用しながら、トリレンマ(スケール、スピード、セキュリティ)を解決するために頑張っているようだ。強力な『ホドラー(長期保有者)』が存在し、浮動層は少ないように思えることから、市場はこの最先端テクノロジーを強く支持しているようだ。ファンダメンタルズに対する支持だ」とハーン氏は説明した。

KASはまた、上場ビットコインマイナーのマラソン・デジタル(Marathon Digital)が、収益源を多様化するためにKASのマイニングを開始したと発表したことに後押しされた。

次なる展開は?

第3四半期は歴史的に低迷する時期となっており、ビットコインは過去13年での平均上昇率がわずか5%。一方、第2四半期と第4四半期はともに60%となっている。

現職のバイデン米大統領が先日のテレビ討論会で振るわなかったことで、民主党が暗号資産に好意的なトランプ氏に対抗できる強力な候補を後任に据える可能性がある。

そうなれば、11月4日の投票日までは野性的な衝動を抑えることができる。また、FRB(米連邦準備制度理事会)をはじめとする中央銀行は、早すぎる金融緩和を避けるようBIS(国際決済銀行)の助言に耳を傾ける可能性がある。

それでも、強力なファンダメンタルズを持つ暗号資産サブセクターは、引き続き突出する可能性がある。

「水面下でひっそりと開発し、実際のユースケースを実現しようとする多くのプロジェクトにとっては、長期戦が鍵となる。我々は、ONDO、JASMY、ENSが、強力なファンダメンタルズ、ユーザーグロースを抱えるこのカテゴリーに入ると考えて注目している」と、ハーン氏は付け加えた。

アルカのタラティ氏は、ビットコインマイニング銘柄、人工知能(AI)、ゲーム、DeFiが成長する可能性があると述べた。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:marcelkessler/Pixabay
|原文:These Hot Crypto Tokens Beat Bitcoin Gains in Q2. Here’s What Drove Prices and What’s Next