暗号資産(仮想通貨)市場は過去15年間で著しく成長し、2021年には時価総額が3兆ドルに達し、上場暗号資産の数は2万6000を超えた。この成長は、個人投資家、富裕層投資家、ファミリー・オフィス、大学基金、年金基金までも惹きつけている。
ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)、フィデリティ(Fidelity)、ブラックロック(Blackrock)といった人気のTradFi(伝統的金融)企業が暗号資産分野に参入したことは、暗号資産が機関投資家に受け入れられ、成熟しつつあることを裏付けるものであり、より広範な市場参加を促している。
暗号資産に対する強い需要があるにもかかわらず、最適なエクスポージャーを獲得し、リスクを管理するベストな方法についてはまだ議論がある。多くの投資家はビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの暗号資産を保有しているか、ビットコイン現物ETF(上場投資信託)に投資しているが、第3の選択肢として暗号資産インデックスファンドがある。暗号資産インデックスファンドは暗号資産への分散されたエクスポージャーを提供する。
熟練した投資家は、ポートフォリオを多様化することの必要性を認識しており、ビットコインETFへの資金流入が鈍化すれば、ボラティリティも低下し、魅力的なリスク調整後リターンを手にする可能性は低下すると予測している。
分散投資のためにインデックスファンドを活用
機関投資家は、伝統的な株式保有を補完する、より広範な暗号資産へのエクスポージャーをますます求めており、そこでインデックスファンドの出番となる。
暗号資産インデックスファンドは、様々な暗号資産のバスケットのパフォーマンスと連動する投資商品であり、個々の暗号資産を直接購入する必要なく、投資家に暗号資産市場への分散化したエクスポージャーを提供する。
現在、12本以上の暗号資産インデックスファンドが投資家向けに販売されており、運用資産は100万ドルから数億ドルとなっている。
歴史的に、特定の暗号資産に関する良いニュースや悪いニュース(イディオシンクラティック・リスク)は、すぐに市場に織り込まれる傾向がある。つまり、現在の市場価格は一般的に、これらの資産について現在知られていることを反映しており、ある程度の価格効率を生み出している。
理想的には、投資家は市場の動きを利用し、ボラティリティを管理するために、ポートフォリオのリバランスを頻繁に行う必要がある。しかし、ほとんどのアクティブ運用マネジャーは、この頻繁なリバランスのための十分な流動性を提供しておらず、その結果、ほとんどの投資家は非常に小さなポジションサイズを維持している。
このような課題と、市場が黎明期にあることを考えると、幅広いエクスポージャーを求める投資家にとって、分散型インデックス戦略の採用は賢明だ。
暗号資産インデックスファンドは、機関投資家にデジタル資産へのエクスポージャーを得るための合理化されたアプローチを提供する。通常、ベンチャーキャピタル投資とは異なるが、これらのインデックスファンドは、分散投資を通じてリスクを管理するという点で同様の戦略を共有している。
時価総額上位の暗号資産に投資することで、個々の暗号資産に関連する黎明期のリスクを軽減する方法を提供する。これは、ベンチャーキャピタルが多数のスタートアップに分散投資することで、高い失敗率と大きな成功の可能性のバランスを取ることとよく似ている。
注意するべきポイント
インデックスファンドにとって重要なことは、対象となる暗号資産の数だ。時価総額の大きな暗号資産10銘柄を選ぶことが一般的だが、25銘柄に拡大することで、暗号資産全体の時価総額の92%をカバーできる。上位50銘柄でさらに分散を図ろうとする向きもあるだろうが、時価総額のカバー率をわずか3%増加させるに過ぎない。
インデックスファンドに含まれる暗号資産を拡大することにはデメリットもある。投資家は、インデックスファンドにミームコインが含まれているかどうかに注意することが重要だ。
ミームコインは、開発における目標は最小限で、一般的に芸術的あるいは文化的な表現と見なされることが多い。ミームコインはボラティリティが高いため、機関投資家のポートフォリオには適さない。
ひと月の中で流動性無しに済ませることのできる長期投資家にとっては、インデックスが保有する資産をステーキングすることで、プロトコルのコイン供給が時間の経過とともに増加する際の希薄化に対抗することもできる。
資産のステーキングを行うことで、投資家はプルーフ・オブ・ステークのブロックチェーンの取引検証プロセスに参加することができ、株式の配当利回りに似た報酬を得るチャンスが生まれる。
機関投資家によるデジタル資産の導入が進むなか、投資家はこの分野へのエクスポージャーを得るための最善の方法を見極め、信頼できるパートナーと協力して暗号資産エコシステムの複雑さを乗り切ることが不可欠だ。
インデックスファンドがデジタル資産に投資する唯一の方法というわけではないが、よりコントロールされ、分散されたエクスポージャーを得るために、機関投資家向けポートフォリオの基礎的な構成要素であると考えるべきだろう。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:The Case for Crypto Index Funds