クラーケン、原子力エネルギーの活用を検討──CTO独占インタビュー
  • クラーケンがデータセンターの電力源として原子力の利用を検討。
  • 小型モジュール式原子炉を供給できるエネルギー・プロバイダーとの提携を模索。
  • 北米とヨーロッパにおける原子力発電の選択肢を模索中。

クラーケン(Kraken)はデータセンターの電力供給に原子力エネルギーの利用を検討していると、同社の最高技術責任者(CTO)であるヴィシュヌ・パタンカー(Vishnu Patankar)氏がCoinDeskとの独占インタビューで語った。昨今は分散型金融(DeFi)のブームが予期され、同社のサービスに対する需要が高まっている。

同社は自社で原子炉を建設することは考えていないが、小型モジュール炉(SMR)で原子力エネルギーを供給できるエネルギー・プロバイダーとの提携を検討している。パタンカー氏によれば、こうした原子炉はデータセンターと併設でき、空間的または天候面での制約を受けないという。

同氏は「機関投資家が暗号資産(仮想通貨)の資産クラスに参入し、活動がオンチェーンとなる中、信頼性の高いフィアットオンランプの必要性が高まり続けている」と述べた。「弊社がエネルギーの安定性を強めることは、一直線に暗号資産エコシステムへの繋がりが強まり、その継続的な成長の一助となることを意味する。」

人工知能(AI)やハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)企業からの需要が急増したことで、電力の安定性について状況が変わりつつあることから、同社はエネルギー供給源の確保を検討しているとパタンカー氏は述べた。

同社は、北米とヨーロッパにおける原子力発電の選択肢について模索しているところだ。

「暗号資産は24時間体制かつグローバルという特性のため、弊社は絶え間なくエネルギー供給を受ける必要がある。特に我々は世界の取引高において、かなりの割合を占めるため尚更である」と同氏は述べる。暗号通貨ビジネスの運営に対しては24時間365日の需要が存在し、やがて暗号通貨が大々的に用いられることを見越して、同社はエネルギー供給とレイテンシの面でいかにビジネスを広げられるか検討している。

原子力によるバックアップ

AIの需要に対応するために必要なデータセンターへ電力を供給する目的で、原子力事業者との契約を模索するハイテク企業が増える中で、クラーケンもこの考えを検討するようになった。ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)は現地時間7月8日、アマゾン・ウェブ・サービス(Amazon Web Services)を含む複数の企業が、データセンターの電力供給に向けて原子力発電所との契約を結ぼうとしており、この傾向はますます顕著になっていると報じた。

電力を必要とするAI企業からの需要が急増していることから、ビットコインマイナーは暗号資産のマイニングからこれらの企業へのインフラ供給に軸足を移している。コアサイエンティフィック(CORZ)は今月初め、AI企業コア・ウィーブ(CoreWeave)と契約を結んでいる。

「原子力によるバックアップは、地域のエネルギー供給に大きな混乱が生じたとしても、クラーケンが操業を継続できることを意味する」とパタンカー氏は述べ、「耐障害性を高め、エネルギーの安定性を確かなものとすることで、我々は世界中の顧客に24時間体制でサービスを提供し続けることができる」と語った。

バリデータ用のノードであれ、トランザクション用のノードであれ、同社はDeFiの大ブームを期待しており、そのため同社のエネルギー需要は将来的に飛躍的に高まる可能性があるとパタンカー氏は述べた。

同氏は、まだ最終決定はしていないものの、風力や太陽光といった他の案は天候に左右され、エネルギー貯蔵も課題となるため、クラーケンとしては原子力発電は選択肢として間違いなく俎上に上ると述べた。

暗号資産業界にしばしば向けられる批判は、エネルギーの使用に関して非常に無駄が多いというもので、ビットコインのようなプルーフ・オブ・ステーク型ブロックチェーンは膨大な処理能力を必要とする。原子力エネルギーもまた、同様のネガティブなイメージに悩まされているが、理由は異なる。しかしながら、今回の場合は、より環境に優しい手段となるかもしれない。原子炉で生成された余剰エネルギーはすべて回収され、データセンターの冷却システムの電力として使用することができる。

|翻訳・編集:T.Minamoto
|画像:Shutterstock
|原文:Crypto Exchange Kraken Is Considering Going Nuclear