- 数億ドル相当のビットコインの売却を進めているのはドイツという国ではなく、ドイツのザクセン州だ。
- 同州は1月に約5万ビットコインを押収し、犯罪捜査で押収された資産についての標準的な手続きに従って売却を進めていると専門家は述べた。
ここ数日、世界中のニュースメディアは、ドイツが数億ドル相当のビットコイン(BTC)の売却を進めていること、そしてそれに伴う市場の混乱と暗号資産市場の大幅下落を伝えている。
だが第1に、ビットコインを売却しようとしているのはドイツではない。ドイツ東部のザクセン州だ。
第2に、暗号資産ファンは、ビットコインの大量売却を批判しているが、ザクセン州に選択の余地はない。
今年はじめ、ザクセン州刑事警察局(LKA)は、マネーロンダリングなどの違法行為で有罪判決を受けたウェブサイト「Movie2k.to」の運営者から、4万9857ビットコイン(現在の価格で約30億ドル相当)を押収した。
およそ1週間前、ドイツ連邦刑事警察局(BKA)が所有する暗号資産ウォレットは、クラーケン(Kraken)、コインベース(Coinbase)、ビットスタンプ(Bitstamp)などの取引所に数千ビットコインを移し、売却する意図を示した。このウォレットのビットコインは2万3788BTCまで減少した。
ソーシャルメディア上の反応は厳しいものばかりだ。
「ドイツが保有するすべてのビットコインを売却することは、同国の政治家がこれまでに行ったことの中で最も愚かなことの1つとして記憶されるだろう」とあるXユーザーは投稿した。
「ドイツの政府高官は文字通りバカだ」と別のユーザーも述べた。
🇩🇪 Imagine selling the hardest money on earth #Bitcoin, for something you can print out of thin air.
— Vivek⚡️ (@Vivek4real_) July 9, 2024
Germany’s govt officials are literal idiots pic.twitter.com/TlWl3Z585E
しかし、これは愚かな投資戦略ではない。犯罪捜査で押収された資産に適用される標準的な手続きにすぎないと専門家は述べている。
「ザクセン州検察局は押収した資産の清算を担当しており、売却は驚くようなことではない」と、ドイツに拠点を置くBlockchain Research Labの共同創設者兼CEO、Dr.レナート・アンテ(Lennart Ante)氏は述べている。
「押収された資産は、常に一定期間内に清算される。これは通常の業務プロセスだが、規模が通常よりも大きい」
このウォレットがザクセン州ではなく、ドイツ連邦刑事局(BKA)の所有となっているのは、おそらく、大量のビットコインを扱う技術的ノウハウを持つBKAが捜査に関与していたためだと、同氏は推測している。しかし、BKAに決定権はなく、あくまでも州の指示に従っている。
ほとんどのケースでは、押収された資産は、州の行為を裁判官が認めた場合のみ、譲渡または売却でき、収益は州の予算に充てられる。しかし、資産価値が急速に失われる可能性があったり、保管が難しい場合などには、緊急売却の開始を要請でき、承認されれば売却が行われる。
「ビットコインの場合、少なくともそのボラティリティの高さから、そう主張できるかもしれない」(アンテ氏)
ザクセン州が一度に大量のビットコインを売却しようとしている証拠はある。だが9日、一部の取引所から2億ドルが戻され、対応できる巨額の購入需要がなかったことが示された。
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:Shutterstock
|原文:It’s Not Germany Selling Bitcoin. It’s One of Its States and It Has No Choice.