AIトークン、ゴールドマンのレポートとは逆行──CoinDesk 20をアウトパフォーム
    • AIトークンは現地時間7月9日、市場全体に対してアウトパフォームした。
    • この現象は、業界の雲行きが怪しく、バブルの噂が高まっているにもかかわらず発生した。

    人工知能(AI)の成長可能性が狭まっているとする大手金融各社の弱気なレポートの存在にもかかわらず、AIトークンは現地時間7月9日、主要デジタル資産の市場パフォーマンスを示す指標であるCoinDesk 20 Index(CD20)をアウトパフォームした。

    コインゲッコー(CoinGecko)のデータによると、AIトークンの現地時間7月9日における値上がりは4.5%の一方で、CoinDesk 20は1.5%弱に過ぎなかった。

    主なAIトークンには、ニアプロトコル(NEAR)、インターネットコンピューター(ICP)、レンダー(RNDR)、シンギュラリティネット(AGIX)などが挙げられる。

    この市場の動きは、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)が、生成AIがもたらす生産性への寄与は限定的であり、リターンは不確実で、電力需要も高いと批判し、その経済的な実現性に疑問を呈したレポートを発表した後に起きている。

    ゴールドマンのリサーチでは特に、AIが必要とする電力需要の大幅な上昇が強調されている。2030年までに、データセンターからの電力需要は、送電網全体に占める割合で3%から8%に跳ね上がると予測されている。

    「1930年代ならともかく2030年代の米国に向くものではない。残念ながら米国は巨大インフラを築く力をもはや失っている」と、マイクロソフトの元エネルギー担当バイスプレジデント、ブライアン・ジャナス(Brian Janous)氏の言葉を引用している。氏のコメントは「つまり、私は少し悲観的なのだ」と続く。

    同氏の主張は、電力会社と立法者は新しいエネルギー源に適応するために送電インフラに投資しているが、これを成功させる鍵は消費者の利用料金を横ばいに保ちながら送電網を大規模に見直すことであり、そうでなければこの問題をめぐる政治は頓挫するというものだ。

    「結局は、米国はこの課題を乗り越えることができると楽観的に考えているが、今後10年間は、電力需要が供給力を上回るため、苦しい状況が続くだろう」と締めくくられている。

    AIの今後をどう読むか

    一方、セコイア(Sequoia)による別のレポートでは、この業界には依然として大きな収益格差があり、その額は6000億ドル(約96兆円、1ドル=160円換算)にのぼると論じられている。

    同レポートでは、AIが「膨大な経済的価値」を生み出すと強調されているが、まずは投機的な熱狂を乗り越える必要がある。

    「この瞬間に冷静さを保った者が、極めて重要な企業を築き上げる機会を手にする」と同レポートを書いたデイビッド・カーン(David Cahn)氏は述べる。「しかし、シリコンバレーから他の地域、さらには世界へと広がりつつある妄想を信じないようにしなければならない。」

    AIトークンは確かに、こうした極めて重要な企業の一角を占める可能性を秘めている。エヌビディア(Nvidia)はこの点を認識しており、今年初めのGTCカンファレンスでは、NEARの創設者イリア・ポロスキン(Illia Polosukhin)氏をステージに招き、ジェンスン・フアン(Jensen Huang)氏との対談が行われた。NEARは、LLMの基盤となるアーキテクチャであるトランスフォーマーの研究で自然言語処理に革命を起こした。

    さはさりながら、暗号資産(仮想通貨)はその投機的熱狂でも知られており、AIが伸るか反るかは未知数である。

    |翻訳・編集:T.Minamoto
    |画像:Unsplash
    |原文:AI Tokens Outperform CoinDesk 20 Index Tuesday Despite Clouds Forming Over Industry