FRB、利下げ判断でインフレより労働市場の弱体化を重視する可能性:エコノミスト
  • インフレはFRBの2%目標から程遠いものの、11日のCPI報告は、物価が冷え込んでいることを示すさらなる兆候となった。
  • しかし、FRBは労働市場をより重視する可能性があり、労働市場がさらに大幅に減速すれば脅威となる可能性がある。
  • 9月の利下げの可能性は95%近くまで上昇した。

11日の消費者物価指数(CPI)発表では、6月の物価が予想以上に冷え込んだことが示され、暗号資産(仮想通貨)を含む市場は一時的に上昇した。トレーダーの間では連邦準備制度理事会(FRB)が今年実際に利下げする可能性があるとの期待が高まった。

12日に発表されたあまり注目されていない経済指標、生産者物価指数(PPI)のデータは予想よりも高かったが、トレーダーらはFRBが9月に利下げを行うと確信している。CMEのFedWatchツールでは、その可能性は現在95%弱となっている。

FRBには、物価を安定させつつ雇用の最大化も促進するという2つの使命がある。したがって、労働市場の弱体化により、インフレが目標の2%に戻るずっと前に、FRBは金融政策の緩和を開始せざるを得なくなる可能性がある(6月のCPIデータでは、インフレが前年比3%のペースで上昇している)。

アメリカの失業率は、3月の3.8%から6月には4.1%に達し、3か月連続で上昇している。

モーニング・コンサルト(Morning Consult)の経済インテリジェンス責任者を務めるジョン・リーア(John Leer)氏は、「今後、労働市場が経済にとってより大きなリスクになると考えている」とし、「冷え込みの兆候を見せているが、歴史的基準からすると依然として非常に堅調だ」と指摘。「FRBがソフトランディング、つまり景気後退を招かずにインフレを抑えることに成功すれば、それは歴史的に異例なことだ」とコメントした。

FRBのジェローム・パウエル(Jerome Powell)議長は今週行った議会証言で労働市場の減速を認め、もはや「経済に対する広範なインフレ圧力の源ではない」と述べた。

フィッチ・レーティングス(Fitch Ratings)のアメリカ経済調査責任者を務めるオル・ソノラ(Olu Sonola)氏は、「FRBは、このマイナス傾向が将来的に労働市場のさらなる弱さの転換点となるかもしれないと懸念するだろう」とし、「パウエル議長は今週に、失業率とインフレの間のリスクバランスが今や二極化しており、労働市場は現在均衡を取り戻していることを示唆した。このことは、インフレが2%へと低下する軌道に戻ったように見える今、FRBが遅かれ早かれ利下げを開始する動機となる」と指摘した。

10x Researchのマーカス・ティーレン(Markus Thielen)氏は、経済が弱まると投資家はリスク資産(暗号資産を含む)から資金を引き揚げ、より安全な投資に資金を振り向ける可能性があることを考えると、FRBが利下げを開始したとしても一部のトレーダーが考えるほど強気なシグナルではないかもしれないと述べた。

|翻訳・編集:林理南
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|原文:Fed Might Focus on Weakening Labor Market Rather Than Inflation as It Mulls Rate Cuts: Economists