日本のWeb3の現状と未来を総括──注目発言を「IVS Crypto/JWB Summit」のセッションからピックアップ

京都で開催された「IVS Crypto/JWB Summit」では、業界リーダーたちが会場内に設けられた複数のステージに登壇し、幅広い議論を行った。CoinDesk JAPANでは、すでに注目のセッションを紹介しているが、ここでは、登壇者の注目の発言をピックアップしてみよう。

なお、見出しは各セッションのタイトル、各セッションを紹介した記事には、リンクからアクセスできる。

日本のゲーム会社におけるWeb3戦略

スクウェア・エニックス 畑 圭輔氏

Web3ゲーム、ブロックチェーンゲームは「稼げる」というワードが使われる。だが、私自身もゲーマーだが、ゲームユーザーは最初の入口が「稼げる」ではない。もちろん「稼げる」ことは悪いことではないが、この「稼げる」というワーディングは変えていく必要があると考えている。

コナミデジタルエンタテインメント 金友 健氏

今は、NFTのユーティリティに集中した方がいいと考えている。一旦、トークノミクスは忘れましょう。いずれ、そういう時代が来るが、まだ早い。NFTが使えること、そしてゲームとして面白いことを確立させる。順番が重要だ。

ディー・エヌ・エー 田中翔太氏

日本のゲーマーが皆、Web3ゲームをプレイする時期は正直わからないが、グローバルで見たときには、局所的な盛り上がりはもう存在している。兆しはすでにある。

全文はこちら:Web3ゲーム普及の壁は? 大手がやるべきことは?【JBW Summit at IVS Crypto】

世界と勝負する、日本発チェーンの「勝ち筋」

YGG Japan/SHAKE 原島和音氏

Web2的なものが消えることはない。例えば、ビデオゲームが出てきても、ボードゲームは存在しているし、面白い。Web3ゲームにはブロックチェーンがもたらす新しいファンクショナリティ(機能性)が必要だと考えている。

自民党衆議院議員 平将明氏

日本のデジタル化の一番の課題は「経費」のデジタル化ばかりやってきたこと。人員削減とか、効率化ばかりで、「売上」のデジタル化を進めなければならない。数量×単価の世界で、数量はECサイトやSNSの活用で個人経営のお店でも世界を相手にできるようになっている。残るは単価。ここにブロックチェーンやNFTを活かす。実際、いろいろな体験をNFT化することで、一瞬にしてグローバル価格になった事例がある。国として、コストカット経済から脱却しなければならない。

Startail Labs Japan 海老島幹人氏

アスターは最初から世界を見据えている。さまざまな取り組みのなかで最近では秋元康さんと連携したり、まだ発表できない取り組みも多いがリアルユースケースを生み出すことに取り組んでいる。日本のコンテンツはグローバルからも引きが強いので、どうハンドリングできるかがポイントになると考えている。

Oasys 満足亮氏

チェーンよりもコンテンツが重要。チェーン側の立場で考えると、いかにコンテンツ側を支援できるか。マーケティングの支援や、ゲームは開発費がかかるのでブロックチェーンをプロジェクトファイナンスのような形で利用し、リスクを分散させる。チェーン自体というより、チェーンを使ってコンテンツクリエーターを支援するようなことができるのではないか。

全文はこちら:ブロックチェーンで「コストカット経済」から脱却【JBW Summit at IVS Crypto】

■大企業がWeb3ビジネスを実現する際の課題と可能性:社内外の見えない敵とどう戦うか?

OPTAGE Web3 business team Team manager 小野晃寛氏

大企業でやるからには兵站をしっかり作りたいという信念がある。いざスケールさせる時、大量にリソースを投入できる状態にしたい。(人材の多い大企業では)よく探せば社内にビットコイナーやクリプトに詳しい人がいて、それもメリットだ。

Laser Digital Japan 代表取締役 工藤秀明氏

一つ目としては、非常に高い熱量を持った人が、中と外それぞれにいる状況をつくることが大事だ。二つ目はエッジのあるビジネスや、シナジーをどうわかりやすくアピールできるかだ。

Securitize Japan K.K. Country Head 小林英至氏

我々のような外資のスタートアップは、基本的にグローバルでビジネスをどうやって勝ち抜いていくかという視点でやっている。そういった「異質なもの」をうまく使ってもらって、社内理解を広げていくのが重要だと思っている。

SBI Holdings Executive Managing Officer 小田玄紀氏

大企業といっても、それぞれの案件のコアメンバー数を見てみれば、10数人でスタートアップと変わらなかったりもする。結局、自分たちが本当に価値あることを提供できているかどうかだけを考えるのがいいと思う。

全文はこちら:「大企業でWeb3」の可能性と課題・社内外の見えない敵とどう戦うか?【JBW Summit at IVS Crypto】

2,800万人が訪れる2025年大阪・関西万博で日本のWeb3とFintechはどのように変わるか

2025年日本国際博覧会協会 企画局長 河本健一氏

会場内は全面的にキャッシュレスになり、基本的には現金は使えない。この万博のコンセプトは「未来社会の実験場」だ。キャッシュレス化を進めていくきっかけにしたい。

決済可能なブランドは60ぐらい用意する。VisaやMasterなどのクレジットカードをはじめ、国内の主要流通系・交通系電子マネー、コード決済も使えるようにする。

三井住友フィナンシャルグループ Chief Digital Innovation Officer 磯和啓雄氏

「ミャクペ!」は万博会場外でも使えるのでチャージ残金が無駄になったりはしないし、リワードプログラムが7段階あるので、どんどん使ってもらいたい。すでに想定より多い人数にダウンロードしてもらえている。今後はUXを改善していきたい。

内閣府大臣政務官・衆議院議員 神田潤一氏

大阪・関西万博は、2800万人がWeb2とWeb3のウォレットを使うという、過去最大規模の実証実験になるだろう。実験にとどまらず、その後の生活にもWeb3ウォレットが入り込み、広がっていくという世界観になってほしい

HashPort代表取締役CEO 吉田世博氏

今回の万博は大企業とスタートアップが協力して進めているのが大きな特徴だ。エキスポウォレットをきっかけに、(IVS Crypto/JBW Summitの)来場者ともコラボレーションしていけたらと思う。

全文はこちら:キャッシュレスな大阪万博でWeb3とフィンテックは加速する──キーパーソンが語る「未来社会の実験場」【JBW Summit at IVS Crypto】

ステーブルコインの現状と展望

JPYC CEO 岡部典孝氏

スタートアップ企業にとっては、従来の決済手段は手数料の高さがネックになることがある。手数料がほぼゼロの決済手段があれば、もっとイノベーションが起きやすくなるだろうと確信し、ステーブルコインに人生をかけて取り組んでいる。

Japan Open Chain Co-Founder 近藤秀和氏

銀行にとってステーブルコインは、預金と同じようなものだ。いずれ全銀行が始めることになるだろう。そうなれば、ステーブルコイン同士の競争が激化するはずだ。たとえば、持っていると金利が付くとか、テーマパークのNFTチケットがもらえるとか、そうしたサービス競争が起こってくるだろう。

ソニー銀行 CFO 渡邉尚史氏

エンターテインメント、ゲーム、映画、音楽などのコミュニティで、安心・安全に使えるようなステーブルコインの世界があったらいいと考えている。なかでもクリエイターやアーティストと、ファンを結びつけるような、新しい決済を生み出していきたい。

日本銀行 FinTech副センター長 デジタル通貨検証グループ長 鳩貝淳一郎氏

日銀の貨幣博物館に行くと、貝や布、お米など様々なものがお金として使われてきたことがわかる。展示の中には、大勢の人が「これはお金だ」と思うものが、その時代その地域で「お金」として使われてきた、といった趣旨の文言があるが、中央銀行のお金や民間事業者のお金の共存のイメージを踏まえると、非常に示唆的だ。

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持続可能な暗号通貨導入のための規制枠組みの構築

金融庁 イノベーション推進室 伴ちひろ氏

金融庁に来て、改めて感じたことは、日本は規制が厳しい、緩和が必要などと言われるが、必要なことを必要だから行っているということ。入ってみて、身をもって感じている。民間とパブリックセクターのどちらも経験でき、良かったと思う。

金融庁 イノベーション推進室 チーフ・フィンテック・オフィサー 牛田遼介氏

オープンイノベーションの可能性はきわめて大きいと思っている。そういう優れたものを世の中が良い方向に進むように活用できるように金融庁としても、個人としてもやっていきたい。

デジタル庁 Web3.0業務エキスパート 松澤翔太氏

マインナンバーカードは申請件数では1億件を超え、保有率では70%を超え、かなり普及してきた。スマートフォンに搭載可能になり、これは極めて大きいと考えている。新たな事業のタネ、アイデアもどんどん出てくると思うので、相談窓口もぜひ活用してほしい。

全文はこちら:Web3に取り組む金融庁、デジタル庁の本当の姿とは。イベント最後のセッションで明らかに?【JBW Summit at IVS Crypto】

|文・編集:増田隆幸
|写真:7月5日朝の「Japan Blockchain Week Summit Opening」より