仕組商品とブロックチェーンの融合──2兆ドル市場のさらなる可能性とは

伝統的に機関投資家の領域である仕組商品は、様々な資産とデリバティブを組み合わせ、オーダーメイドのリスク・リターンプロファイルを構築する。

ブロックチェーンの登場により、仕組商品市場の可能性は非常に大きくなり、大幅なコスト削減、コンポーザビリティの強化、アクセシビリティの向上が期待できる。

現在、世界の仕組債市場は2兆ドル(約312兆円、1ドル156円換算)を超えると推定されており、ブロックチェーンは、組成から投資家基盤に至るまで、市場の幅を広げる要因となる。

詳しく見てみよう。

プロセスの合理化とコスト削減

従来の仕組商品には、ブローカー、カストディアン、クリアリングハウスといった複数の仲介業者が介在しており、運用コストは年間投資額の1%〜5%に及ぶ。

アクセンチュア(Accenture)によると、ブロックチェーンテクノロジーは大手投資銀行のインフラコストを平均30%削減でき、年間80億~120億ドルのコスト削減につながるという。

ブロックチェーンによるコスト削減の可能性は、ライフサイクル管理が複雑な仕組商品にとって特に大きい。ブロックチェーンの持つ優れた透明性と監査証跡は、こうした規制上の資本要件を削減することに役立つ。

カスタマイズ可能な金融ソリューションの構築──コンポーザビリティの強化

スマートコントラクトは、デリバティブや仕組商品のような複雑な金融商品を管理する上で特に魅力的であり、迅速かつ革新的な金融エンジニアリングを可能にする。

このモジュール性により、投資家は、利回りを生み出すDeFiプロトコル、トークン化された資産、オプションや先物のようなリスク管理デリバティブを組み合わせるなど、オーダーメイドの商品を作ることができる。

オリジネーターと投資家のアクセシビリティの向上 

仕組商品はこれまで、機関投資家しかアクセスできなかった。ブロックチェーンのモジュール性は、仲介者を排除することで構成と組成を簡素化する一方で、分割所有は投資家へのアクセスを拡大し、供給側と需要側の両方の摩擦を軽減する。

DeFi仕組商品市場の成長

仕組商品は、元本保護やダウンサイドバリアといったメカニズムを通じて、高度なリスク管理を提供する。過去1年間で、Pendle(TVL:60億ドル)やEthena(TVL:36億ドル)のようなDeFi仕組商品は大きく成長し、新たなデリバティブに対する強い需要を示している。市場インフラの成熟と商品ラインナップの拡大により、この傾向は今後も続くと予想される。

トークン化標準: ERC-1155、ERC-404、ERC-1400などのイノベーションにより、債券の識別、商品のトランチング(条件による区別)、仕組商品発行の規制管理などの課題が解決されつつある。

DeFiプライムブローカレッジ:Arkisのようなプラットフォームは、資産別評価、クロスマージン、クロスチェーン清算のための洗練されたマージンエンジンを導入。

リスク管理: Talos(Cloudwall)やGauntletのような企業が開発した機関グレードのリスク管理システムは、機関投資家の資本参入を促進するために不可欠。

分散型オプションヴォールト(DOV): DOVは、自動利回り生成、リスク管理、他のDeFiプロトコルとの統合を提供し、オンチェーン仕組商品にとって重要。

オラクル: ChainlinkのCCIP(Cross-Chain Interoperability Protocol)は、データの信頼性とクロスチェーン機能を強化し、伝統的な市場、暗号資産市場、クロスチェーン間の統合を容易に。

暗号資産オプション: AEVOやHegicのようなプラットフォームは、自動化されたオンチェーンオプションを提供し、アルゴリズムによる仕組商品と効率的に統合。

ベンチマークとインデックスの開発: Coindesk 20 Index(CD20)やCESR Composite Eth Staking Benchmarkなど、より多くのベンチマークやインデックスが作成され、投資家に信頼性の高い強力なリファレンスを提供することで、市場見解を表明し、リスク管理ツールとして機能。

トークン化:トークン化は、仕組商品をオンチェーン化するための基礎となる。RWA.xyzによると、2024年のTVLは1300億~1700億ドル(ステーブルコインを含む)に達する。

暗号資産の世界で広く浸透しているセンチメントの1つは、商品がしばしばバーベル型のリスクリターン・プロファイルを示すことである。

仕組商品は、この資産クラスの大幅なアップサイドを取り込みながら、特定のリスクリターン・プロファイルを作成することで、このジレンマを解決する。その一例が、デペッグのリスクを軽減する元本確保型債券だ。

オンチェーン型仕組商品を前進させることは、テクノロジーからではなく、その可能性を示す魅力的なユースケースを開発することから始まる。トークン化が進むにつれて、伝統的な資産と暗号資産を仕組商品に統合することがますます一般的になり、伝統的な金融と暗号資産の間のギャップがさらに縮まるだろう。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Financial Building-Blocks: Structured Products and Blockchain