Web3とWeb2の融合が暗号資産のマスアダプションを生む──Base、TON、ソラナの3事例をチェック

今年は、ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)の現物ETF(上場投資信託)がスタートし、暗号資産(仮想通貨)は大きく前進した。これはメインストリーム普及への一歩として祝福されているが、真の普及は単なる所有ではなく、オンチェーンでの利用から生まれるべきだ。

長いシードフレーズでウォレットをセットアップし、ガス代支払いのために暗号資産を取得するといった馴染みのないステップのため、トークンを金銭的インセンティブとして使用したとしても、ユーザーの取り込みは困難だ。

こうしたハードルに加え、ブロックチェーンのセキュリティに対する認識の低さや詐欺への懸念が多くのユーザーを遠ざけている。

しかし、急成長している以下3つのブロックチェーンエコシステムは、Web2とWeb3の長所を組み合わせることでこうした課題に対処し、Web2のようなシームレスなオンボーディング体験を実現しつつ、Web3の主権的な所有のメリットをユーザーに提供している。それぞれ見ていこう。

Base:Web2.5からWeb3へ

もしあなたがコインベース(Coinbase)のアカウントを持っているなら、おめでとう! 中央集権型の取引所を通じて暗号資産にアクセスすることで、あなたはすでにWeb2.5の世界にいる。

分散型取引所(DEX)や他のオンチェーン活動は、複雑さのために暗号資産に興味を持つユーザーを遠ざけることが多い一方で、コインベースが開発したレイヤー2「Base」は、自社のWeb2.5ユーザーをWeb3へ橋渡しすることを目的としている。 

コインベースのモバイルとウェブアプリケーションに統合されたBaseは、取引所からの簡単な法定通貨オン/オフランプを提供する。例えばWeb2のようなログイン体験を実現したSmart Walletや、ガス代支払いを抽象化するMagic SpendなどのコインベースのUI改善は、プロセスを簡素化する。

さらにBaseは、AerodromeやMoonwellのようなDeFi(分散型金融)アプリケーションやDegenのようなソーシャルアプリケーションとともに活気あるエコシステムを開発しており、オンチェーンでのやり取りをより楽しく、魅力的なものにしている。

TON:Web2からWeb3へ

Baseが暗号資産に関心の高いユーザーをターゲットにしているのに対し、TONのTAM(獲得可能な最大市場規模)はさらに大きく、テレグラム(Telegram)の9億人のユーザーをターゲットにしている。

2013年にローンチされたテレグラムは、瞬く間にグローバルなユーザー数でWeb2ソーシャルアプリのトップ5に入り、ロシア、東欧、東南アジア、アフリカの一部ではメインのアプリとなった。

TON(The Open Network)は当初、ブロックチェーンをテレグラムのエコシステムに統合するために、テレグラムの創設メンバーによって設計された。

テレグラムの複数の国にまたがるユーザー基盤とユニークな地政学的背景を考えると、統一された暗号資産決済手段は非常に有益なものとなる可能性がある。

TONのテレグラムへの統合には、シームレスなウォレット作成、アプリ内購入、法定通貨のオンボーディングが含まれる。テレグラムはまた、広告料の支払いをTONで受け入れ、クリエイターに収益の50%をシェアしている。

TONはWeb3アプリケーションの著しい成長に拍車をかけた。「Tap to Earn」ゲームのNotcoinは、わずか2カ月で3500万人以上のプレイヤーと650万人のデイリーアクティブユーザーを集めた。

同様に、ウィーチャット(WeChat)のミニアプリで経験を積んだアジアの開発者が手がけたCatizenは、2000万人のユーザーと1000万ドル(約15億6000万円、1ドル156円換算)以上の収益を獲得し、Web3のdApp(分散型アプリ)史上最速の収益成長を記録した。

TONの週間アクティブウォレット数(水色)の推移(左)とテレグラムの月間アクティブユーザー数(水色)の推移(右、単位:100万人)
(Folious Venture)

ソラナ(Solana):ウェブ3をあらゆる場所へ

高性能ブロックチェーンで知られるソラナは、ブリンク(Blinks)によってマスアダプションに向けて大きく前進した。ブリンクはオンチェーン取引をシンプルなURLに抽象化し、あらゆるWeb2ビジネスに埋め込むことができるため、ブロックチェーンテクノロジーとのやり取りのプロセスが簡素化される。

ユーザーはURLをクリックするだけでオンチェーン取引を実行でき、複雑なウォレット設定は不要。これにより、Web2ビジネスはブロックチェーン機能を既存の業務に統合しやすくなる。

1970年代に誕生したインターネットがマスアダプションを実現したのは2000年代に入ってから。ビットコインの誕生から15年目を迎え、Web2とWeb3の融合がブロックチェーンテクノロジーの普及を加速させ、メインストリームがこの新しいテクノロジーを利用し、そこから恩恵を受けることを可能にしている。オンチェーンは新しいオンラインだ。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Crypto for Advisors: Web2 to Web3