バイデン氏撤退で新局面──予測市場ポリマーケットの1日の取引高は過去最高に
  • バイデン米大統領が2期目を目指していた大統領選から撤退したことで、市場は活況を呈している。
  • また、ある市場では、時価総額10億ドルを最初に達成する猫をテーマにしたミームコインについてベッター(賭ける人)たちが議論している。
  • クラウドストライク(CrowdStrike)の失態は1日で解決されると誰もが思っていた。間違いだった。

撤退の決断と記録的な取引高

バイデン氏の再選を目指さないという決断には、前例がまったくないわけではない。ジェームズ・ポークからリンドン・B・ジョンソンまでの何人かの歴代大統領も何らかの理由で再選を断念している。

しかし、バイデン氏の場合に特別なのは、撤退決断の時期が遅かったことだ。民主党全国大会(党が正式に大統領候補を決定する大会)のわずか1カ月前であり、支持者たちに、有力者たちは自分を追い出すことはできないと語ったわずか数日後だった。

撤退の決定は、予測市場ポリマーケット(Polymarket)における選挙関連のベット(賭け)を急増させ、取引高を同プラットフォーム史上かつてないレベルに押し上げた。

デューン・アナリティクス(Dune Analytics)のダッシュボードによると、ポリマーケットの1日の取引高は、歴史上類を見ない大統領選におけるポジションを取ろうとするベッターたちの競争で2800万ドル(約43億6800万円、1ドル156円換算)超えの記録的なレベルとなった。

(ポリマーケットの1日の取引高:Dune Analytics)

1カ月前、バイデン氏とトランプ氏の討論会の余波で、バイデン氏の撤退を求める声が大きくなってきたとき、ポリマーケットの1日の取引高は400万ドル〜500万ドルだった。デイリー・アクティブ・アカウント(ウォレット)も、1カ月前の約3000から、2倍以上の約6000に増加した。

ベッターはまた、ポリマーケットでの最大規模の政治関連の賭けのいくつかに5億ドル以上をプールしている。米大統領選の勝者を選ぶ市場には3億1900万ドル、民主党候補を選ぶ市場には2億1200万ドル以上(カマラ・ハリス副大統領が圧倒的人気)、民主党の副大統領候補を決める市場には1000万ドルが投じられている。

今のところ、2020年の選挙で英国最大のベッティング(賭け)プラットフォームであるベットフェア(Betfair)に賭けられた額、7億4400万ドルが更新すべき記録だ。

しかし、まだ7月。選挙まで3カ月半残っている。注目すべきは、ポリマーケットが「10億ドル」を達成するかどうかだ。

10億ドルを突破した猫ミームコイン

猫をテーマにしたミームコインの時価総額に関するポリマーケットでの賭けが7月21日遅くに決着し、ソラナ(Solana)ベースの「ポップキャット(POPCAT)」が勝利した。

ポリマーケットの賭けは、差し迫った問題を扱ったものだった。つまり、猫をテーマにしたどのミームコインが最初に10億ドルの時価総額を達成するかだった。

4月上旬、ポップキャットの勝率は2%と振るわず、他の2つの猫をテーマにしたミームコインである「Keycat」と「Hobbes」の後塵を拝していた。

この賭けの取引高は3月に開始されて以来、460万ドルを記録。Base、イーサリアム(Ethereum)、ソラナ(Solana)など、複数のブロックチェーンのミームコインが勝利者候補にあがっていた。

しかし、63万ドル相当のポップキャットの単独での買いが時価総額10億ドルを突破させる急騰を引き起こした。ただし、市場操作だと主張する人もいたため、この結末は物議を醸している。

「これは興味深い。明らかに市場操作だが、実際に1つのウェブサイトで10億ドルを超えたのは確かだ。ポリマーケットでポップキャットに既得権益を持つ誰かが市場を操作し、価格を押し上げた」とポリマーケットのユーザー@The_Guru55は指摘している。

「1つのウェブサイトでの1つの注文で1秒での価格吊り上げはかなり疑わしい」

しかし、ポップキャットが勝ったというポリマーケットの決定は、22日時点ではまだ有効であり、正式な異議は唱えられていない。

予想に反して長引く障害

予測市場はクラウドストライクが原因で引き起こされたWindowsの障害は簡単に直ると思っていた。だが、間違いだった。

クラウドストライクが19日にリリースしたセキュリティソフトの欠陥パッチは大混乱を引き起こし、まずはヨーロッパとアジアで、次にアメリカと世界中のWindowsコンピューターが使用不可能となった。

アジアの就業時間が終わろうとし、ヨーロッパの人々が目を覚ます頃、ブルースクリーンが表示されてPCがフリーズした。ポリマーケット市場は、これは大きな問題ではなく、19日の夜までには解決するだろうと確信しており、その確率は89%となっていた。

しかし、間違っていた。クラウドストライクのエンジニアが、ロックされたパソコンごとに多大な労力を必要とする初期修正の方法を公表するなか、問題はさらに深刻化した。2500便以上のフライトがキャンセルされ、8000便が遅延。デルタ航空は22日時点で、いまだに乗客の再予約の対応に追われている。

マイクロソフトのWindows部門元社長のスティーブン・シノフスキー(Steven Sinofsky)氏は「このような動作をするアップデートをプッシュする(アンチウイルス)ソフトウェアというシナリオは、この20年で『最悪の悪夢』だ」とXに投稿した。

19日中に問題が解決しないことに賭ける契約の「No」側は、3人のベッターが合計45シェアを保有するのみとなっており、賭け金の合計もわずか9万ドル強だった。

クラウドストライクが引き起こした障害が19日に解決するかどうかの契約でのベット(Polymarket)

一方、「Yes」側の最大保有者は2800ドルを失った。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:バイデン氏撤退を受け民主党米大統領最有力候補のカマラ・ハリス副大統領(lev radin / Shutterstock.com)
|原文:Biden’s Exit Spurs Record $28M Daily Volume on Polymarket as Election Enters Uncharted Territory