銅がゴールドに対して下落傾向、ビットコイン強気派は警戒が必要
  • 銅とゴールド(金)の価格の比率は2020年11月以来の最低水準まで下落しており、暗号資産を含むリスク資産に弱気なシグナルを送っている。
  • この比率の低下は、今後、金利が低下することを意味する。

仮にあなたが暗号資産(仮想通貨)市場をしばらく観察してきたとしよう。もしかしたら、市場関係者が「ビットコイン(BTC)の現物ETF(上場投資信託)がアメリカでデビューしたことで、数十億ドルの規模のメインストリームの需要が開放され、暗号資産は長期的な強気基調に入った」と発言するのを耳にしたかもしれない。

しかし、トレーダーはその「数十億ドル規模」は依然として経済動向に依存していることを認識しておく必要がある。したがって、トレーダーは銅とゴールド(金)の価格比率のような重要なマクロ指標に細心の注意を払うべきだ。現在この比率は急速に低下しており、暗号資産を含むリスク資産にとってマイナス材料だ。

この比率は、銅1ポンドあたりの市場価格をゴールド1オンスあたりの価格で割ったもので、TradingViewとMacroMicroが追跡しているデータによると今月は8%以上下落し、2020年11月以来の最低値を記録した。

製造業に深く関わる金属である銅の需要は、産業活動と密接に関連している。そのため、銅は「ドクター・コッパー」と呼ばれ、経済の健全性や投資家のリスク選好の代理指標とされている。一方、ゴールドは「安全資産」と見なされている。

そのため、この比率は、投資家のリスク許容度やテクノロジー株やビットコインなどの成長性の高い資産に対する投資意欲、逆にゴールドや米国債などの安全資産に対する投資意欲を反映する。 ダブルライン・ファンド(DoubleLine Funds)のような伝統的な市場の大手企業は、リスク資産に対する需要のヒントを得るためにこの比率を追跡することで知られている

「世界経済が拡大すると、銅とゴールドの比率が上昇し、株価も上昇する。経済の不確実性が高まると、ヘッジ目的のゴールド需要が高まり、銅とゴールドの比率が低下する」と、データ追跡サイト MacroMicroはチャートの説明で述べている。

簡単に言えば、銅とゴールドの比率が低下すれば、ビットコインは下落する可能性があるということだ。

銅とゴールドの比率は、アメリカのISM製造業指数と密接に関連している。現在はどちらも低下しており、景気の低迷を示している。(MacroMicro)

今後は金利が低下する

ダブルライン・キャピタル(DoubleLine Capital)によると、歴史的に、銅とゴールドの比率の変動は、金利、より具体的には10年物米国債利回り、いわゆるリスクフリーレートの下落傾向の再開を予兆してきた。

モーニングスター(Morningstar)によると、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の基準金利は、現在の5.35%〜5.5%から、2024年末には4.75%~5.00%、2025年末には3.00%~3.25%、2026年末には1.75%~2.00%になると予想されている。

つまり、銅とゴールドの比率が示す潜在的な経済の弱さによる初期のショックが価格に織り込まれれば、ビットコインやリスク資産は落ち着きを取り戻す可能性がある。低金利は最終的に利回りの追求を誘発し、2020年3月の新型コロナウイルスによる暴落後に見られたように、リスク資産への資金の新たな流入につながることもある。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin Bulls Beware as ‘Doctor Copper’ Slides Against Gold