米上院共和党の金融規制キーマン、暗号資産推進へ<strong>──</strong>上院銀行委の次期委員長候補
  • 米国の暗号資産関連法案は下院で進展が見られたものの、米上院銀行委員会では今のところ頓挫している。その中で、共和党の大物議員ティム・スコット氏が暗号資産を擁護するような規制の推進に名乗りをあげた。
  • テネシー州で開催のBitcoin 2024では、同氏をはじめとした議員の暗号資産業界を支持する演説が行われ、特に米国の準備資産にビットコインを用いる考えをマイクロストラテジーのマイケル・セイラー氏やアークインベストメントのキャシー・ウッド氏らが味方した。
  • 上記は、暗号資産に対し長年の反対から強い推進派に転じた、大統領候補であり前大統領のドナルド・トランプ氏による登壇の前哨となった。

米上院銀行委員会の共和党トップで、次期委員長になる可能性のあるティム・スコット (Tim Scott)上院議員(サウスカロライナ州選出)は、現地時間7月26日に開催されたBitcoin 2024において、暗号資産産業が米国でイノベーションを起こすのを政府は「容易にする」べきだと主張した。

これは近頃、共和党議員の常套句ではあるが、スコット議員は暗号資産に対して懐疑的なシェロッド・ブラウン委員長(民主党、オハイオ州選出)に直接対峙する相手であり、同委員会が米国での立法におけるボトルネックとなる中、暗号資産に関して比較的に沈黙を守っていた経緯がある。

テネシー州ナッシュビルで開催されたBitcoin 2024において、スコット議員はデジタル資産のメリットを声高に叫んでその沈黙を破り、暗号資産シーンへの鮮やかなデビューを果たした。同議員は、11月の選挙後に共和党が上院の過半数を奪還すれば、米国の金融規制を司るこの委員会の委員長に就任する可能性がある。

「邪魔者を排除しなければならない」と彼は語り、シンシア・ルミス(Cynthia Lummis)上院議員(ワイオミング州選出)とともに、証券取引委員会のゲーリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長を暗号資産政策の障害となっているとして非難した。「ゲンスラー委員長、主よ慈悲をお恵みください、出て行ってくれ、ジャック、二度と戻ってこないで、二度と、二度と、二度と」(編註: レイ・チャールズの曲『Hit The Road, Jack』の歌詞からの引用)と発言している。

今年の共和党の大統領候補に名を連ねたスコット議員は、エリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州選出)をはじめとする同委員会の民主党議員が暗号資産業界を率直に批判するようになっても、この手の問題については比較的沈黙を守っていた。来年、上院銀行委員会の委員長に就任する可能性についてルミス議員とのステージで何度も話題に上ったが、もしそうなればスコット議員はルミス議員の法案を速やかに採決し、「我々のこの国において、ビットコイン(BTC)を自由にする 」手筈だと語った。

ビットコインを戦略的な準備資産に

ルミス議員は最近、連邦準備制度理事会(FRB)が戦略的な準備資産としてビットコインを保有することを求める法案を推進していると報じられている。同議員が登壇時にこの話題に触れることはなかったが、今回のイベントでのドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領による登壇で本件に関しての言及があることを望む参加者は多い。

「ビットコインの技術革新は、米国上院では益々明らかになりつつあり、誰が技術革新を保護し、誰が規制したいのかも益々明らかになってきている」とルミス議員は述べた。

暗号資産を規制する法案は下院を通過したが、上院では今のところ停滞している。擁護派は年末には何かが可決されることを望んでいるが、その可能性は低いままである。

2024年の選挙が迫り、議会会期が終わりに近づいている現段階で、暗号資産に関する新法が成立する可能性は低いが、このような取り組みが将来の法案に向けた交渉のきっかけになることはある。

今回、議員たちの登壇前には、ビットコインの最大保有企業であるソフトウェア会社マイクロストラテジー(MSTR: MicroStrategy)のマイケル・セイラー(Michael Saylor)会長が登壇し、米国は財務省を後押しし、財政力を強化するために400万BTCの取得を目指すべきだと提唱している。同氏は、ビットコインの将来的な超成長を丸々享受できる機会を手にするのは1、2カ国しかないだろうと発言した。

「ビットコインは我々が抱えるすべての問題を解決するものではない」一方で、「その半分を解決するものだ」と同氏は述べた。

米国が戦略的にビットコインを準備金に充てる考えに対しては、アーク・インベストメント(ARK Investment)CEOのキャシー・ウッド(Cathie Wood)氏も賞賛した。

ウッド氏は、「もし適切に実行されれば、つまり金融政策の手段ではなく、単にバランスシートに載せるということであれば、これは転機となるかもしれない」と語った。

今回のイベントでは、長年デジタル資産を支持してきた無所属の大統領候補ロバート・F・ケネディ(Robert F. Kennedy)氏が、当選の暁には、ビットコインを戦略的な準備資産にすると約束する場面も見られた(世論調査によると、当選する可能性の低い候補のようだが)。また、カマラ・ハリス(Kamala Harris)副大統領による同イベントへの出席について代理人との話し合いが直前まで持たれていたとの報道があったが、出席の予定はない。

|翻訳・編集:T.Minamoto
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|原文:Key U.S. Senate Republican Tim Scott Makes Crypto-Fan Debut