トランプ氏、ビットコインイベントで講演:国によるビットコイン保有を支持、民主党の勝利は大惨事になると発言

ドナルド・トランプ氏は27日、米テネシー州ナッシュビルで開催中の「Bitcoin Conference」に登壇、「戦略的国家ビットコイン準備金」を保有し、政府が押収したビットコインは「決して売却しない」と述べ、巨額の支援につながる暗号資産支持者における支持固めを行った。

イベントでの講演に先立ち、暗号資産支持者の間では、トランプ氏がそうした準備金の構想を発表するのではないかとの憶測や期待が広がっていた。

3000人以上が詰めかけた満員の会場でトランプ氏は、ビットコインについて「アメリカでマイニングされ、ミントされ、作られるべきだ」述べ、その後、ステーブルコイン規制からビットコインのセルフカストディの権利までを含む包括的な暗号資産政策の必要性を訴えた。

講演は、ビットコインがインターネットの最も深く、ニッチな場所から、アメリカの政治の中心的テーマに躍り出たことを象徴していた。以前は、ダークネット市場で使われるものとして非難されていた。

「我々がやらなければ、中国がやるだろう」とトランプ氏は暗号資産を受け入れることについて述べた。暗号資産は「100年前の鉄鋼業界のようなもので、まだ発展途上だ」と同氏は述べた。

「いつか金(ゴールド)を超えるだろう……かつてないものだ」

「彼ら(民主党)は凶暴になる」

さらに、トランプ氏は、民主党がホワイトハウスを維持することは暗号資産にとって大惨事になると付け加えた。

「彼らがこの選挙に勝てば、あなた方は皆、いなくなる。彼らは凶暴になる。無慈悲になる。信じられないようなことをするだろう」

当選した場合、トランプ氏は1日目に、暗号資産業界で広く嫌われているSEC(米証券取引委員会)のゲイリー・ゲンスラー委員長の解任を計画していると述べた。この公約は聴衆から大きな拍手を浴びた。

「彼がこれほど嫌われているとは知らなかった」と同氏は述べ、また、就任後、「ビットコインおよび暗号資産諮問委員会」を設置すると述べた。

複数の関係者によると、ナッシュビルのミュージック・シティ・センターでの講演の前には、資金力の豊富な暗号資産企業の経営者をターゲットにした大規模な資金調達イベントが行われ、数千万ドル、つまり数十億円を集めたという。

会場では、トランプ氏を見るために、数千人ものビットコイン支持者たちが何時間も前から待っていた。トランプ氏は以前は暗号資産を激しく非難していたが、今では暗号資産支持に転向。Bitcoin Conferenceに参加した初の大統領経験者となった。

冒頭でトランプ氏はイベント主催者に感謝を述べ、会場には多くのレジェンドがいると述べ、暗号資産取引所ジェミナイ(Gemini)の創設者であるタイラー氏とキャメロン氏のウィンクルボス兄弟、マイクロストラテジー(MicroStrategy)のマイケル・セイラー氏など、業界の有名人たちの名前をあげた。

政治的な爆発

5月下旬、暗号資産は大統領選のアジェンダとして急浮上した。トランプ氏が自身を暗号資産業界のための候補者と述べ、「暗号資産に賛成ならトランプに投票すべき。なぜなら、彼ら(民主党)は暗号資産を終わらせようとしている」と発言した。

トランプ氏の暗号資産への支持は、業界トップにおける支持政党の再編を加速させた。それまで民主党を支持していたヘッジファンドの弁護士、スタートアップ創業者や投資家など、広い人脈を持つ人たちが、バイデン政権下での長年の厳しいスタンスに対抗するために、トランプ氏を支持すると発言し始めた。

ナッシュビルのBitcoin Conferenceには、「Make Bitcoin Great Again(ビットコインを再び偉大に)」の帽子をかぶった熱狂的なトランプ支持者たちも加わった。2万人の参加者の多くにとって、トランプ氏支持は当然の結論のように思えた。

ナッシュビルのイベントに参加したトランプ支持者たち(CoinDesk)

カンファレンスの舞台裏では、業界のリーダーたちがトランプ氏の方向転換に多額の資金を提供し、選挙戦に弾みをつけた。講演前に行われた資金調達パーティーの参加チケット代は約90万ドル(約1億4000万円)。下院議員候補者たちも、それぞれ資金調達パーティーを開催した。

暗号資産支持者は、2024年の大統領選挙をアメリカの敵対的な規制を変える絶好のチャンスと捉えており、実現に最も適した候補者はトランプ氏と考えている人が多い。トランプ氏は大統領在任中、ビットコインは「根拠のない空想」と発言していたにもかかわらず。

マーケティングに長けたトランプ氏は、ホワイトハウスを去った後、愛国心のさまざまな形で表現したNFTコレクションを発売し、すぐに完売した。数百万ドルの収益は、かつて否定していた業界について、同氏に新たな視点をもたらした。

バイデン陣営は選挙戦から撤退する前、暗号資産支持者の支持を得るための取り組みを行わず、一時はトランプ氏のNFTの購入者を「カモ」と呼んだ。バイデン大統領が任命したゲンスラーSEC委員長は、暗号資産業界と長年にわたる法廷闘争を展開しており(ゲンスラー委員長は暗号資産業界はアメリカの法律をほとんど無視していると述べている)、バイデン陣営のメッセージは業界にとって決定的な一撃となった。

だがハリス副大統領が民主党の事実上の候補者となったことで、民主党はスタンスを見直すチャンスを得るかもしれない。一部の議員はハリス氏に変更を求めている。だがハリス氏はまだ何も発言していない。

「ちなみに彼女は暗号資産に反対で、かなり強く反対している。投票に行かなければならない」とトランプ氏は述べた。

|翻訳・編集:増田隆幸
|画像:Bitcoin Conferenceに登壇したトランプ氏(CoinDesk)
|原文:Trump Backs U.S. Bitcoin Reserve and Says Democrat Win Will Be Disaster for Crypto: ‘Every One of You Will Be Gone’