JVCEAとJCBA、税制改正に関する要望書を発表

アメリカでは1月にビットコインETF(上場投資信託)がデビュー、さらに7月にはイーサリアムETFも登場し、暗号資産の金融資産としての位置づけがますます強くなっている。

日本では暗号資産(仮想通貨)口座開設数が1000万口座を超え、数字のうえで大まかに捉えれば国民の約10人に1人が保有する資産となりつつある。

暗号資産を取り巻く税制も、法人税については、一昨年は自社保有分、昨年は第三者保有分について期末時価評価課税の対象外となり、2年連続で改正が進んだ。これは大きな成果であり、「2年連続」での改正はある意味、驚きを持って受け止められた。

しかし、個人の所得税については、依然として雑所得として扱われ、最大55%の税金が課せられる状況が続いている。国がWeb3を国家戦略として定めるなかで、これがマスアダプションへの大きなハードルとなっている状況は変わっていない。

日本暗号資産取引業協会(JVCEA)と日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は7月30日、「2025年度税制改正に関する要望書」を取りまとめ、発表した。すでに一部関係省庁にも提出済みという。

要望の骨子は以下の通り:

所得税:所得区分の見直しと分離課税
・暗号資産の実態を踏まえた税制を構築する観点から、雑所得以外の所得区分がありうることを明らかにすること
・その上で、20%の申告分離課税、損失繰越控除(3年間)を要望
・暗号資産デリバティブ取引についても同様

所得税:寄附
・一律に現行所得税法40条及び同法施行令87条を適用することをやめる
・所得税法59条や租税特別措置法40条の適用を含めて、暗号資産による寄附を阻害しない税制とする

資産税
・相続した暗号資産の譲渡による所得を取得費加算の特例対象とする
・相続財産評価に過去3ヶ月の平均時価の最低額を選択可

暗号資産同士の交換
・暗号資産同士の交換時には課税せず、法定通貨に交換した時点でまとめて課税対象とする

7月19日には、日本ブロックチェーン協会(JBA)が「暗号資産に関する税制改正要望」を提出している。2つの要望書が目指しているところに違いはなく、双方とも第一に要望しているのは、所得税への「20%の申告分離課税」の導入だ。

違いは、今回のJVCEAとJCBAの要望書は、所得税の改正に向けた機運を高めるために、「雑所得以外の所得区分がありうることを明らかにすること」を求めている点だ。

暗号資産に関わる税制改正が2年連続で進んだこともあって、所得税の改正は「今年は難しいのではないか」との見方もある。実際、他の業界からは「なぜ暗号資産だけ2年連続で?」という声もあるという。そうした状況を勘案したうえで、JVCEAとJCBAの要望書は、改正への布石となることを狙ったものと言えそうだ。

また、JCBA税制検討部会長の斎藤岳氏(pafin代表取締役)は、過去2年の税制改正で企業のWeb3推進、あるいはスタートアップの起業環境は整備された。しかし、利用者の環境を整えなければ、日本のWeb3市場は拡大しないと過去2年の成果を振り返りつつも、危機感を表明した。

税制は国を支える制度であり、改正は簡単なものではない。だがWeb3マスアダプションの実現に向けて、「3年連続」の税制改正が実現されることを期待したい。

|文・編集:増田隆幸
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