ステーブルコインのバランスシートは監視可能──BISとイングランド銀行のプロジェクトが主張
  • 国際決済銀行(BIS)とイングランド銀行(BoE)は、ステーブルコインのバランスシートが監視可能であることを見出した。
  • この監視技術は、各国がステーブルコインのリスクにより効率的に対処するのに役立つという。
  • 各国は近年、ステーブルコインの暴落に対する懸念を強調。

いわゆる中央銀行のための中央銀行である国際決済銀行(BIS)とイングランド銀行(BoE)は、ステーブルコインのバランスシートが監視可能であることを実証できたと、31日に両行の最新プロジェクトに関するレポートで述べた。

プロジェクト「Pyxtrial」はプロトタイプのデータ分析パイプラインを開発し、これによりステーブルコインの負債とその裏付け資産に関するほぼリアルタイムのデータを監視当局に提供できると、両行は31日に発表。ステーブルコインは、例えば法定通貨などの他の資産に価格がペッグ(固定)された暗号資産(仮想通貨)だ。

「この技術は、監視当局や規制当局がステーブルコインの裏付けに関する問題を積極的に発見し、統合されたデータに基づく政策枠組みの開発を支援するツールに向けた第一歩だ」とレポートは述べている。

レポートによると、ステーブルコインの市場規模は1637億ドル(約24兆6000億円、1ドル150円換算)で、成長中ながら大部分が規制されておらず、監視技術が欠如しているセクター。Pyxtrialの創設は、こうした事実が動機となっている。

「ステーブルコイン発行者の負債(流通しているステーブルコイン)とその裏付け資産の間に不一致が生じた場合、発行者が額面通り償還する能力への信頼を傷つけ、『暴落』の発生、つまりステーブルコインの価値に対する信頼が突然失われる可能性がある」とレポートは述べている。

各国の中央銀行は、ステーブルコインが暴落するリスクを強調してきた。2年前、米連邦準備制度理事会(FRB)は、各国の法定通貨に裏付けられたステーブルコインの価値が突然下落した場合、暴落に直面する可能性があると述べた。

「これらの脆弱性は、ステーブルコインの裏付け資産の危険性と流動性に関する透明性の欠如によって悪化する可能性がある」と、当時のFRBのレポートは指摘。一方、金融安定理事会(FSB)は、ステーブルコインに適用される可能性のあるグローバルな要件を検討している。

BISによると、Pyxtrialは、現実資産(RWA)を裏付けとするトークン化された商品を監視できる可能性もあるという。

|翻訳・編集:廣瀬優香
|画像:BIS
|原文:Stablecoin Balance Sheets Can Be Supervised, BIS and UK Central Bank Project Claims