トランプ関連トークン95%下落──期待と噂に翻弄のミームコイン市場

ソラナ(SOL)で新たに発行された暗号資産(仮想通貨)の Restore the Republic(RTR:共和党の復権)はドナルド・トランプ(Donald Trump)氏の公式トークンと噂されていた。このトークンは時価総額が1億5500万ドル(約225億円、1ドル=145円換算)まで膨れ上がり、同氏はまだ公式トークンを持っていないと同氏の息子が警告した後、現地時間8月8日に95%暴落した。

ドナルド・トランプ氏の息子であるエリック・トランプ(Eric Trump)氏が「暗号資産、DeFi(分散型金融)に恋をした。重大発表があるのでお楽しみに」とX(旧ツイッター)に投稿したことで、ドナルド・トランプ氏による暗号資産に対する世間の期待が高まった。 そして現地時間8月8日、RTRの取引が始まり、発行から僅か数時間で時価総額1億5500万ドル(約225億円)まで急騰した。

保守派活動家でトランプ氏を支持する団体ステューデンツ・フォー・トランプ(Students for Trump)の議長でもあるライアン・フォーニエ(Ryan Fournier)氏は「公式トランプコインが出たという噂がある。Restore the Republicと呼ばれている」と投稿して、この伝聞情報を拡散させた。このXへの投稿は後に削除されている。

トランプ氏公式トークンへの期待

その後、エリック・トランプ氏がバブルを弾いたことで、混乱が巻き起こることになる。同氏はユーザーに対して「偽のトークン」について警告し、「唯一の公式トランプ・プロジェクトはまだ発表されていない」と述べた。この投稿によりRTRは急展開を見せ、ピーク価格から95%下落した。

フォーニエ氏は「情報筋から、ドナルド・トランプ氏がこのトークンを支援するだろうと聞いていた」と、そして「それが噂と言った理由だ。私は暗号資産には詳しくないし、このプロジェクトには一切関わっていない」と現地時間8月8日にXへ投稿した。

また、カンパイ・パンダ(Kanpai Pandas)というNFT(非代替性トークン) の運営元カンパイ・ラボ(Kanpai Labs)が、RTR発行前に広告を用いてこのトークンについて扇動した証拠も、暗号資産の観測筋からは指摘されている。

Bagsという名前で活動する、カンパイ・ラボのクリエイターは、トランプ一族が発行日を決定した後、「私たちを激しく苛めた」と述べており、この投稿はすぐに削除された。

6時間で約6億円の利益

オンチェーンの調査会社ルックオンチェーン(Lookonchain)によると、RTRへの初期からの投資家(インサイダー)は、このトークンの上昇と下落により6時間で400万ドル(約5.8億円)の利益を得たことがブロックチェーンのデータから判明した。5つの暗号資産ウォレットが、88万2000ドル(約1.3億円)相当のSOLで1億500万RTRを購入し、その後9500万RTRを500万ドル(約7.2億円)相当のSOLで売却している。

この大騒動は、急成長するミームコイン市場のワイルド・ウェスト(西部開拓時代)的な性質を浮き彫りにしている。最近は、トランプ氏をテーマにした別のトークンであるDJTが注目を集めていた。これは、マーティン・シュクレリ(Martin Shkreli)氏が自身とドナルド・トランプ氏の息子バロン・トランプ氏とでトークンを作製したと主張したためだ。DJTは先週、大口保有者が一斉に売りに出たため、90%暴落している。

このエピソードはまた、暗号資産愛好家の間でのドナルド・トランプ氏の影響力を浮き彫りにしている。分析会社ルナクラッシュ(LunarCrush)によると、現在トランプ氏またはMAGA(トランプ氏の有名な選挙スローガン:Make America Great Again「アメリカを再び偉大な国に」の短縮版)関連の暗号資産トークンは162種類あり、2週間前の111から増加している。

|翻訳・編集:T.Minamoto
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|原文:Kamala Harris, Donald Trump Tied on Polymarket on Who Will Be The Next U.S. President