ハリス氏、ポリマーケットでトランプ氏を大きくリード:米予測市場動向
  • ハリス氏がポリマーケット(Polymarket)で優位に。
  • トランプ前大統領がXに復帰。トランプ氏とマスク氏のインタビューでは、MAGAと暗号資産(仮想通貨)がトピックとなりそうだ。
  • オープンAI(OpenAI)のソラ(Sora)が2025年までに一般公開される可能性は低いと、カルシ(Kalshi)ユーザーは見ている。

ハリス氏の逆転劇

カマラ・ハリス米副大統領は、8月8日に予想市場ポリマーケットでドナルド・トランプ前大統領に並んだ後、翌日には逆転し、現在は7ポイントリードしている。

ハリス氏の当選に賭ける「イエス」シェアは、米国12日の朝の時間帯にポリマーケットで52セントで取引されていた。つまり市場は、ハリス氏当選の確率が52%と見ているということである。

暗号資産ベースのベッティング(賭け)プラットフォームであるポリマーケットでは、各シェアには、予想が当たれば1ドル相当のUSDコイン(USDC:米ドルと対価で取引されるステーブルコイン)が支払われ、当たらなければ支払い額はゼロとなる。トランプ氏のシェアは、45セントで取引されていた。

2024年米大統領選挙の勝者に賭ける契約

1カ月前にも満たない頃、ジョー・バイデン大統領が選挙戦から離脱してハリス氏を支持する前は、トランプ氏の勝率は72%にも達していた。

現在のポリマーケットの水準は、世論調査集計と比較すると、ハリス氏のリードが大きくなってる。リアル・クリア・ポーリング(Real Clear Polling)の世論調査平均では、ハリス氏のリードは0.5ポイントだ。

一部の主要世論調査では、トランプ氏が依然優勢である。7月末に実施されたハーバード主催の世論調査ではトランプ氏が4ポイントリード、8月4日まで実施されたCNBCの最新世論調査では、トランプ氏が2ポイントリード、共和党寄りのRasmussen Reportsでは、トランプ氏が5ポイント優勢となっている。

民主党の大統領候補トップに躍り出て以来、ハリス氏は主要メディアで熱烈な報道を受け、セレブリティからの支持も得ており、一方でトランプ氏の最近の公の場でのパフォーマンスは、彼のアドバイザーたちを動揺させていると伝えられている。

予測市場での駆け引き

ただし、取引の場であるという特異性から、ポリマーケットにおける勝率の逆転は、誇張されすぎているかもしれない。

CSPTrading.ethというハンドルネームで活動するある政治ベッター(賭けをする人)は、選挙市場でのパニック売りと集団思考を目の当たりにしているという。

「トランプ氏のシェアを70セントで買い、価格の下落を見続けている誰かが、ポジションを清算するために、価格を下げようとしている」と、彼はCoinDeskのインタビューに答えた。

ただ、「マーケットメーカーは値動きへのエクスポージャーをヘッジするために方向性のある買いを入れ、その後お互いに売り叩き合うので、自己充足的予言のようなものでもある」と付け加えた。

CSPTrading.ethは、州レベルの市場(例えば、アラスカ州やインディアナ州でどの政党が勝つか)の一部において、あるトレーダーが「急速に減価する資産」を売り叩き、他のトレーダーがそれに追随することを指摘している。「彼らは取り残されたくないのだ」と、彼は説明する。

CSPTrading.ethによれば、ポリマーケットの様々なバランス・オブ・パワー契約には裁定取引の機会があり、トレーダーはトランプ氏の再選に対するエクスポージャーをメイン契約のコストよりも安く買うことができる。

例えば、共和党が上院で勝利する確率は78%と予測するモデルもあるなか、共和党が大統領選と上院選を制し、民主党が下院選を制する可能性に賭ける契約は、現在12セント(12%の可能性)で取引されているが、共和党が大統領選および上下両院選のすべてを制する可能性に賭ける契約は28セントである。

これらを合わせると40セントで取引されていることになるが、一方トランプ氏はメイン契約では46セントで取引されている。

「暗号資産」を話題にするか?

イーロン・マスク氏とトランプ氏は、米国時間12日夜にXでインタビューを行うことになっており、トランプ氏が暗号資産について言及する可能性は高い。

ベッター達は、トランプ氏が暗号資産について語る可能性を60%と見ている。先日の「BTC 2024」カンファレンスに出席したトランプ氏が、満席の会場から万雷の拍手を浴びたことを考えれば、これは確実な賭けのように思える。

しかし、1つ注意点がある。トランプ氏は「crypto(暗号資産)」という言葉を使う必要があるのだ。ビットコインでもイーサリアムでもなく、この総称である。

複数形や所有形も含め、この単語を使用した場合は市場での決議にカウントされると、ルールには規定されている。分散型通貨を意味する「crypto」を含む複合語もカウントされる。

また、「MAGA(アメリカ合衆国を再び偉大な国にするという意味のスローガン)」、「censor(検閲をする)」または「censorship(検閲)」、「Tesla(テスラ)」、「illegal Immigrant(不法移民)」という言葉が使われる確率についても、ベッターたちは高いと考えている。

Xへの復帰

一方、前大統領は約1年間のツイート休止を経てXにも復帰した。ツイッターへの最後の投稿は2023年8月24日のもので、顔写真が掲載されていた。

トランプ氏のXへの復帰について問う契約は2つあった。トランプ氏が選挙前に再びツイートするかどうかを問うものと、9月末までにツイートするかどうかを問うものである。

前者は15万ドル近い取引高があり、ハンドルネーム「BarronTrump」のユーザーが「イエス」側で最も多くのシェアを保有し、9000ドル以上を獲得した。

このトレーダーはまた、ハリス氏が選挙で勝利するという契約で、現在5600ドルの「ノー」ポジションをとっている。

トランプ氏とツイッターに関する契約で2番目に大きなポジションを持ったユーザーは、8500ドルを獲得した。このトレーダーは、ハリス氏当選の「イエス」ポジションを持っており、現在3万5000ドル以上の価値がある。

トランプ氏が9月30日までにXに戻るかどうかを問うより小規模の契約では、「イエス」側を持つベッターは2人だけで、合わせて34ドルだった。

「ノー」側では、最大のユーザーが5100ドル強の損失を出しており、この人物はこの契約と、取引所バイナンス(Binance)が自称「暗号資産カジノ」であるロールビット(Rollbit)のトークンを上場させるかどうかについての賭けにしか興味がないようだ。

ソラ登場はいつ?

オープンAIが今年2月、テキストから動画を生成する人工知能モデル「ソラ」を発表したとき、世界中が驚いた。デモでは、いつの日か高性能のプレイステーションゲームのようなリアルな映像をリアルタイムで生成できると約束されていた。

その最初のデモに欠けていたのは、ローンチ日だった。

ベット(賭け)がドルで決済される、米国の規制を受けたプラットフォーム「カルシ」のベッターたちは、ソラが2025年までにローンチされる可能性を38%と見ており、5月に契約が開始されたときの75%から下がっている。

ソラの一般公開日に賭ける契約

オープンAIが直面している可能性のある問題のひとつは、リアルタイムの動画を生成するための膨大な計算コストだ。研究グループFractorial Fundsでは、TikTokやYouTubeのクリエイティブコミュニティにAIが生成した動画を提供するためには、72万個の高性能なNvidia H100 GPUが必要になると見積もっている。

この量のシリコンのコストは216億ドルとなり、カードの総数はメタ、マイクロソフト、グーグル、アマゾン、オラクル、テンセント(エヌビディアの最大規模の顧客たち)の総数を上回ることになる。

ベッターはまた、AIの膨大な電力需要が送電網に負担をかけ、データセンターをさらに建設する政治的意志が試されていることも考慮しているかもしれない。

SemiAnalysis社の調査によると、AIのサーバー容量に対する需要は倍増し、世界のデータセンターの電力需要は2023年の49ギガワットから2026年には96ギガワットに急増すると予想されている。

この電力需要の急増予測によって、これまで電力負荷の高いビットコインマイニングとデータセンターを受け入れてきたテキサス州でさえ、より多くの容量を供給するという考えに消極的となっている。

このような状況に対して、1つのヘッジがある。中国のByteDance社は最近、中国国内のユーザーだけが利用できるテキストから動画を生成するAIの独自バージョンをリリースした。各ユーザーが生成できるビデオの数には限りがあるが、このような取り組み自体は不可能ではないことを示している。

|翻訳・編集:山口晶子
|画像:カマラ・ハリス米副大統領(Sheila Fitzgerald / Shutterstock.com)
|原文:Kamala Harris Pulls Well Ahead of Trump on Polymarket