Facebook「リブラ」著名企業離脱後の理事会発足

フェイスブックが開始した仮想通貨プロジェクトから多くの著名企業が離脱して数日後、21団体がリブラ協会(Libra Association)の憲章に署名した。

リブラ協会はまた、スイス・ジュネーブでの会議後、その理事会メンバーを指名し、コンソーシアムの執行チームを正式なものとした。

カリブラ(Calibra)のCEOで、フェイスブック(Facebook)のブロックチェーン・リードであったデビッド・マーカス(David Marcus)氏が5人の理事会メンバーの一人として就任するなど、フェイスブックは依然としてこのプロジェクトの中心的存在だ。他の理事は、アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)のゼネラルパートナーのケイティ・ハウン(Katie Haun)氏、ザポ(Xapo)のCEOベンセス・カサレス(Wences Cesares)氏、ペイユー(PayU)の相談役パトリック・エリス(Patrick Ellis)氏、そしてキヴァ(Kiva)の最高戦略責任者であるマシュー・デービー(Matthew Davie)氏である。

ベルトランド・ペレス(Bertrand Perez)氏、ダンテ・ディスパルテ(Dante Disparte)氏、カート・ヘメッカー(Kurt Hemecker)氏は、同協会のエグゼクティブチームでリーダーシップを発揮する。へメッカー氏、ペレス氏、マーカス氏は、3人ともペイパル(PayPal)出身だ。

プレスリリースによると、カリブラ(Calibra)に加えて、コインベース(Coinbase)、ザポ、アンカレッジ(Anchorage)、バイソン・トレールズ(Bison Trails)、クリエイティブ・ディストラクション・ラボ(Creative Destruction Lab)、アンドリーセン・ホロウィッツ、スライブ・キャピタル(Thrive Capital)、リビット・キャピタル(Ribbit Capital)、ユニオン・スクウェア・ベンチャーズ(Union Square Ventures)、ブレイクスルー・イニシアチブ(Breakthrough Initiatives)、イリアド(Illiad)、ボーダーフォン(Vodafone)、ファーフェッチ(Farfetch)、ウーバー(Uber)、リフト(Lyft)、キヴァ、マーシー・コー(Mercy Corps)、ウィメンズ・ワールド・バンキング(Women’s World Banking)、スポティファイ(Spotify)、ペイユーが参加している。

この発表に先んじて、多くの離脱が起きている。リブラ協会が6月に発足した際、フェイスブックは主要企業28社のリストを大々的に宣伝した。しかし、ビザ(Visa)、マスターカード(Mastercard)、ペイパル(PayPal)、ブッキング・ホールディングス(Booking Holdings)、イーベイ(eBay)、ストライプ(Stripe)、メルカドパゴ(Mercado Pago)は先週、リブラからの脱退を発表した。その一部は、本プロジェクトに対する規制当局の反発に懸念を呈していた。

それでも、リブラ協会が10月14日(現地時間)に述べたところによると、1500以上の団体がこのプロジェクトへの参加に関心を示しており、180団体が同協会の会員基準を満たしているという。実際に新メンバーを加えるには、21のボード・メンバーによる3分の2の投票が必要だ。

フェイスブックは6月、100社からなるコンソーシアムがこの仮想通貨プロジェクトのローンチを支援すると発表した。これらの計画や現在のローンチ予定日に関する最新情報は、10月14日(現地時間)には発表されなかった。

リブラのこれまで

フェイスブックは今夏、世界中の銀行口座を持たない人々が利用できるような仮想通貨についての大胆なビジョンを発表した。

当初構想されていたように、トークンのガバナンスはリブラ協会によって監督される。リブラ協会とは、リブラ・インベストメント・トークン(Libra Investment Token)を使用してこの仮想通貨の技術的な決定に投票する100社の企業で構成されるコンソーシアムである。リブラ・インベストメント・トークンは、保有者がバスケットから発生した利息を得ることを可能にする証券としても機能する。

このステーブルコインは、法定通貨バスケットにより裏付けされるよう設計された。それらの通貨は、米ドル(50%)、ユーロ(18%)、日本円(14%)、英ポンド(11%)、シンガポールドル(7%)から構成されると後に発表されている

世界の金融規制当局や政策当局は、リブラが世界の金融秩序を不安定化させる恐れがあるとして、このプロジェクトへの反対を即座に表明した。フランスドイツの大臣はリブラに反対だと述べ、インドはリブラが同国では合法的ですらないかもしれないと発表し、アメリカのマキシン・ウォーターズ下院議員(民主党・カリフォルニア州)は、規制上のすべての疑問が解決されるまで、プロジェクトの一時停止を求めた

しかし、カリブラのマーカス氏は、これらの懸念は見当違いであると主張した。同氏は7月に米議会で証言し、上院銀行委員会と下院金融サービス委員会の懸念を和らげようとした。(フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ氏も、同様の目的で、議会に赴く予定だ)

つい最近になって、マーカス氏は書簡の中で、リブラは規制当局の監視を歓迎し、またこのプロジェクトはドルに取って代わろうとするものではないと述べている。

これは、フェイスブックの意図やリブラの潜在的な影響に関する多くの質問を止めるものではない。リブラ協会からの離脱を発表する前に、ビザ、マスターカード、ストライプのCEOは、アメリカのブライアン・シャッツ(Brian Schatz)上院議員(民主党、ハワイ州)とシェロッド・ブラウン(Sherrod Brown)上院議員(民主党、オハイオ州)から連絡を受けている。両議員は、これらの企業がプロジェクトに参加し続ければ、規制監視の目が厳しくなるかもしれないと述べていた。

ベールに包まれたリブラ

実際にリブラがいつローンチするのかは不明である。

当初フェイスブックは2020年初めのローンチを目指していたが、最近のザッカーバーグ氏の声明では、この時間軸に疑問が投げかけられている。しかし、いかなるローンチの遅れも、技術的な問題というより規制上の問題の結果であるようだ。

ザッカーバーグ氏は、7月の四半期決算の電話会見で、リブラに干渉しないよう規制当局を説得するのに「どれだけ長い」時間でも費やすと述べた。9月には、プロジェクトのローンチに何年もかかる可能性を示唆した。

技術的な観点から見ると、フェイスブックはこれまで構築物について秘密主義を貫いてきた。6月以来、チームはリブラのコードベースの一部をオープンソース化したにもかかわらず、どのような進歩や障害があったかを公表していない。

また、リブラを開発するチームがカリブラの従業員だけで構成されているのか、リブラ協会の他のメンバー企業の者が参加しているのかも不明である。

知られていることといえば、フェイスブックはスイスのジュネーブにチームを立ち上げ、以前はカリフォルニア州メンロパークとイスラエルのテルアビブでブロックチェーン関連の職種を公募していた

翻訳:新井朝子
編集:T.Minamoto
写真:Mark Zuckerberg image via Aaron-Schwartz / Shutterstock
原文:Facebook-Led Libra Forms Governing Council After Big-Name Departures