- ドバイの裁判所が下した判決は、暗号資産を使った給与支払いを合法化したように見えるが、一部の専門家は疑問を呈している。
- この判決に対して上訴が行われたかどうかは不明だ。
ドバイの裁判所は、ある企業に対し、雇用契約に規定されている通り、暗号資産(仮想通貨)で労働者に報酬を支払うように命じた。この判決は、同地域における暗号資産にある程度の正当性を与えるものではあるが、いくつかの疑問を投げかけるものである。
しかし、ドバイに拠点を置く2人の弁護士がCoinDeskに語ったところによると、この判決は必ずしも給与支払い全般に暗号資産の使用が合法化されることを意味するものではないという。
紛争解決のシンクタンクであるメティス研究所(Métis Institute)のシニアアソシエイトであるアニカ・ダワン(Ankita Dhawan)氏は、「今回の判決は、特定の暗号資産(EcoWatt)が特定の従業員の報酬パッケージの一部として法的に有効であることを認めたもので、従業員の報酬パッケージには暗号資産が含まれる可能性があることを間接的に示唆している」と述べた。「しかし今回の判決では、どのような暗号資産が合法なのかは明らかにされていない。ドバイ規制当局の承認が必要なのだろうか」。
ドバイの第一審裁判所の判決は7月17日付だ。ドバイの労働法では上訴には15日間の猶予がある。ドバイにおける法的手続きは非公開であるため、原告の名前も会社の名前も明らかにされておらず、上訴が行われたかどうかも不明だ。
原告は、会社が契約解除前の5カ月間、理由なく給与の支払いを停止したと主張した。裁判所は雇用主に対し、未払い分として6万2867ディルハム(約250万円。1ディルハム=40円換算)と暗号資産のEcoWattで3万9200EWTの支払いを命じた。トークンの価格は大きく変動するため、ドル建てや円建てで支払い額を評価するのは難しい。
コッチャー・アンド・カンパニー・リーガル・コンサルタンツ(Kochhar & Co. Legal Consultants)のシニアアソシエイトであるナバンディープ・マッタ(Navandeep Matta)氏は、「今回の判決は、両当事者が雇用契約でこの取り決めに合意しているのであれば、暗号資産による給与の支払いを支持するものだ」と述べた。
「これは他社も暗号資産を構成要素として給与を提供し始める可能性があることを意味する」とダワン氏は話している。
それでも弁護士たちは、今回の判決はこのケースとこの暗号資産に特化したものである可能性があり、疑問が残ると述べた。
マッタ氏は「今のところ、これらの規制の適用はドバイ首長国に限られている」と述べ、アラブ首長国連邦(UAE)の他の6つの首長国では適用されないと述べた。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
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|原文:What a Dubai Court Ordering a Company to Pay Its Employee in Crypto Means