ストーリー・プロトコル開発企業、115億円をシリーズBで調達──AIと知的財産の課題に取り組む

2023年7月の論説において、俳優のジョセフ・ゴードン=レヴィット(Joseph Gordon-Levitt)氏は、人工知能(AI)があなたの作品を利用するなら、あなたに報酬を支払うべきだと主張している。これは、知的財産に焦点を当てたブロックチェーン「ストーリー・プロトコル(Story Protocol)」の大前提であり、この投資テーマは、急速に資金がつくものへとなりつつある。

現地時間8月21日、ストーリー・プロトコルに対して初期から中心的に貢献してきたPIP Labsは、ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z:Andreessen Horowitz)が主導する8000万ドル(約116億円、1ドル=145円換算)に上るシリーズBの資金調達を発表した。

AI関連企業は、大規模言語モデル(LLM)をトレーニングするために、Web上のクリエイティブコンテンツを大量に収集しており、その結果、クリエイターとオープンAI(OpenAI)などのテクノロジー大手との間で訴訟が起きている。ニューヨークタイムズ(New York Times)は著作権侵害の疑いでOpenAIと争っており、ユーチューバーもエヌビディア(NVDA:Nvidia)と争っている。NVDAは、スクレイピングされたコンテンツを使用してビデオモデルを構築することで不当に利益を得たとされている。同時に、ウォールストリートジャーナル(Wall Street Journal)のオーナーであるニューズコーポレーション(News Corp)は、LLMトレーニング用のコンテンツのライセンスを2億5000万ドル(約363億円)以上でOpenAIと締結した。

「素晴らしいオリジナルIPがなければ、AIモデルは開発されない」とPIP Labsの共同創業者兼CEOのSYリー(SY Lee)氏はインタビューで述べ、AIは「ユーザーの同意なしにすべてのデータを取得し、盗み」、オリジナルの作成者と報酬を分け合うことなくその恩恵を受けていると強調した。

知的財産を「IP レゴ」に変換

ストーリー・プロトコルは、知的財産を「IP レゴ」に変換することで機能する。IP レゴとは、ブロックチェーン上のスマートコントラクトを通じてライセンス付与、管理、収益化できるモジュール式でプログラム可能な資産だ。リー氏は、ストーリー・プロトコルにより、クリエイターはライセンスとロイヤリティ条件を知的財産に直接埋め込むことで、データに対するコントロールを主張できると説明する。

「ストーリー・プロトコルを使えば、クリエイターはライセンス条項を自分の知的財産に直接埋め込むことができ、それを使用する人は誰でもそのルールに従わなければならないことを保証できる」と同氏は述べる。「データに関する主権を宣言することになる。これは『私のデータをいじらないでください。これは私の知的財産です』と言っているようなものだ。」

リー氏によると、AI企業がクリエイターに何を負っているかという議論は、エンターテインメント業界にとって極めて重要な問題だという。「過去には、グーグル(Google)が親切にもコンテンツへのアクセスをいくらか増やしてくれたが、それでも多くの地方紙は潰れてしまった」と、リー氏はプレスリリースで述べている。「AIの現状は、私たち全員にとってオリジナルの知的財産を創造する動機を完全に破壊している。」

このプロジェクトは、ブロックチェーンの新たなユースケースを示しており、同じユーザー・プールから引き出して僅かな技術的改善だけで同じ流動性を出す、さらに他のDeFi(分散型金融) チェーンを超えたものである。

「すべては単なるインフラの自己満足だ。他のちょっとした調整、他のDeFiチェーン、他のDeFiアプリ、といった具合に」と同氏は語る。「誰もが同じことをして、難解な技術的改善を追い求めている」

ストーリー・プロトコルのメインネットのローンチは今年後半に計画されており、9月にソウルで開催されるコリア・ブロックチェーン・ウィーク(Korea Blockchain Week)でさらに詳しい情報が発表される予定だ。

|翻訳・編集:T.Minamoto
|画像:Shutterstock
|原文:Story Protocol Developer Raises $80M Series B, Led by A16z, for Intellectual Property Chain