アメリカの景気先行指標は低下を続けているが、もはや景気後退を示唆しない
  • 全米産業審議会の先行指標はもはや景気後退を示唆するものではなくなった。
  • アメリカの景気後退懸念は、8月初旬の株式と暗号資産の下落の一因となった。

超党派の非営利調査機関である全米産業審議会(Conference Board)が8月20日に発表したデータによると、アメリカの主要経済指標は依然として景気減速を示しているものの、もはや景気後退を示唆するものではないという。これは暗号資産(仮想通貨)を含むリスク資産にとって明るい兆しだ。

同審議会の景気先行指標(LEI)は、6月の0.2%減に続き、7月も0.6%減の100.4となった。データソースであるマクロマイクロ(MacroMicro)によると、この指標は2022年第2四半期にピークを迎え、それ以来下がり続けている。

LEIは、製造業の週平均労働時間、週平均失業保険申請件数、ISM新規受注指数、株価、先行信用指数など、いくつかの先行指標で構成されている。LEIは景気動向の変化や金融市場の転換点を見極めるのに役立ち、景気後退の最も信頼できるシグナルと考えられている。

LEIの継続的な低下は、景気への逆風が差し迫っていることを示している。しかし、年率換算した6カ月間の変化率は6月の-3.1%から7月は-2.1%に縮小し、景気後退のリスクが軽減していることを示している。

「LEIは前月比で下落を続けているが、6カ月間の年間成長率はもはや景気後退を示唆するものではない」と、同審議会の景気循環指標担当シニア・マネージャーであるユスティナ・ザビンスカ・ラ・モニカ(Justyna Zabinska-La Monica)氏は声明で述べた。

最新の数値は、リスク資産の強気派にとって心強いものだろう。恐らく、最近の市場下落とその結果センチメントへの影響を与えた株式と暗号資産の痛みを伴う取引は、今は解消されつつあるのだろう。

7月のアメリカの非農業部門雇用者数統計で雇用創出が急減速したことが明らかになり、景気後退懸念が市場を襲った。国債のイールドカーブは、いわゆるサーム・ルールによる同様の警告とともに、景気後退を示唆するスティープ化が見られた。そこへ円キャリートレードの大量の巻き戻しが火に油を注いだのだ。

その結果、株価は大きく下落し、ビットコイン(BTC)は7万ドルから5万ドルに暴落した。その後、ビットコインは6万ドル超まで回復したことがCoinDeskのデータで明らかになっている。

アメリカの景気循環指標(全米産業審議会の指標に基づく)。(MacroMicro)
アメリカの景気循環指標(全米産業審議会の指標に基づく)。(MacroMicro)

このグラフは、全米産業審議会の先行指数が下落傾向にある一方で、経済の現状を示す一致指数は遅行指数とともに上昇していることを示している。これは経済が拡大期後期にあることを示す典型的な兆候だ。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:U.S. Leading Economic Indicators Continue to Fall, No Longer Signal Recession