熟練イーサリアムユーザーの中には、ブロックチェーン上でプライベートに取引することを選択する人が増えている。彼らはいわゆる「ダークプール」を利用することで、取引のフロントランニング(不正行為の一種)を目的とした取引ボットを回避しているが、パブリックブロックチェーンの特徴であるはずの開放性と透明性を犠牲にしている可能性もある。
こうした傾向は、MEVの防止や影響の最小化を専門とするブロックネイティブ(Blocknative)がまとめた最新の調査結果で明らかになった。MEVとは「Maximal Extractable Value(最大抽出可能価値)」の略で、処理を待っている取引からマージンをかすめ取るために素早く取引に参加できる、動きの速いソフトウェアボットによって吸い上げられる利益を言う。
パブリックなメモリプールではなく、バリデーターに直接送られるプライベートな取引は現在、イーサリアムにおけるガス代使用量(トランザクション処理に必要な計算能力を反映したもの)の約半分を占めている。
この割合は、イーサリアムがプルーフ・オブ・ステーク(PoS)ネットワークに移行した2022年9月には約7%だったが、2024年に入ってからは約15%から急増している。
このトレンドの結果として、「プライベート取引のオーダーフローは、パーミッションネットワーク参加者しかアクセスできない」ことになり、少数の洗練されたプレーヤーがより多くの報酬を得れば、中央集権的なパワーになる可能性がある、とブロックネイティブは調査結果を説明するブログに記している。
「プライベートなフローを見ることができるアクターは少数である。特定の人々は見ることができて、特定の人々は見ることができないものがあれば、それは機会と強みを生み出す」と、ブロックネイティブのCEOマット・カトラー(Matt Cutler)氏は指摘する。
このような統計データを以前に見たことがある人には、このデータは奇妙に見えるかもしれない。プライベートな活動の広がりを測るより一般的な方法は取引件数であり、そちらの割合は現在、約30%。2022年の時点では、約4.5%だった。
だが、ブロックネイティブによれば、プライベートな取引はより複雑で、より「ガス代を大量に消費する」傾向があるという。
「プライベートな取引で使用されるガス代に焦点を移すことで、ネットワークのダイナミクスをより正確に理解することができる」と、ブロックネイティブは説明する。
カトラー氏によると、パブリックな取引を行うユーザーにとってのデメリットは、ネットワークへの需要に応じて変動する手数料率がより不安定になり、予測が非常に困難になることだという。
「ブロックビルダーのような特定のアクターだけが、ネットワークで何が起こっているかを見ることができる」とカトラー氏は指摘。彼らは「特定の情報に独占的にアクセスでき、それが有利に働く。これは紛れもない事実である」と続けた。
|翻訳・編集:山口晶子
|画像:Hubert Robert/Metropolitan Museum of Art(Photomoshを使用してCoinDeskが加工)
|原文:Dark Pools Dominate Ethereum as Private Transactions Surge – at Least by One Measure