ロバート・ケネディ氏は本当に「撤退」したのかをめぐって論争:米予測市場動向
  • ロバート・F・ケネディ・ジュニア(Robert F. Kennedy Jr.)氏は本当に撤退したのか?
  • テレグラム(Telegram)のパベル・ドゥーロフ(Pavel Durov)氏はいつまで拘留されるのか?
  • エムポックスは今年、パンデミックにならないと、ベッター(賭ける人)たちは考えている。

ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏は先週、「組織的な検閲とメディア統制」に直面している以上、勝利への現実的な道はないと主張し、大統領選挙運動を一時中断してドナルド・トランプ氏を支持すると発表した。

しかし、ケネディ氏は本当に撤退したのだろうか?

ケネディ氏が8月23日までに撤退する可能性を尋ねたポリマーケットでの契約

これは、予測市場ポリマーケット(Polymarket)のベッターがサイトのコメント欄やディスコード(Discord)サーバーで繰り広げている最新の論争のテーマであり、ある一派は、論争を調停する分散型オラクルサービスであるUMAの判断を覆そうとしている。

どのようなレベルであっても、候補者がキャンペーンを打ち切ることはめったにない。その代わり、選挙運動は中断される。これは昔から行われていることだ。なぜか? 献金を受け続けることができるからだ。

連邦選挙委員会(FEC)の規則では、選挙運動を一時停止しても法的に終了したことにはならない。そして多くの候補者は、借金を返済する必要がある。例えば、2012年の大統領選挙に出馬したリック・サントラム(Rick Santorum)氏は、資金が枯渇したため選挙運動を一時停止したが、借金返済のための資金調達を続ける目的でインフラは維持していた。

なお、ケネディ氏陣営も、選挙運動全体の一貫した資金提供者であった副大統領候補に100万ドル(約1億4400万円、1ドル144円換算)を返済した後、債務超過に陥りかけている。

もちろん、中断したからといって、選挙運動が終わったわけではない。ケネディ氏の名前がまだ投票表紙に残っている州は23州ある。ジョン・マケイン氏が2008年、金融危機に対処するために選挙戦を一時中断したが、その後、大統領選への出馬を継続するために選挙運動を復活させたことを覚えているだろうか?

ケネディ氏がそのようなことをする可能性は低いが、ジョー・バイデン氏も一時は、撤退する可能性は低いと考えられていた。

ここで本当に問題となっているのは、中断ではなく「撤退」について問うていたポリマーケットの契約の文言である。

テレグラムのパベル・ドゥーロフ氏はおそらく今月中に釈放されないだろう

メッセージングプラットフォーム、テレグラムのパベル・ドゥーロフCEOが週末にフランスで逮捕された。逮捕の理由はテレグラムのモデレーション(コンテンツの監視や管理)ポリシーにある。

同国の当局によれば、テレグラムのモデレーションに対する姿勢が緩かったために、同プラットフォーム、そしてCEOは、同プラットフォーム上で計画または公開されたあらゆる種類の悪質な行為に法的に加担したとみなされるという。

テレグラム側は、そのモデレーションのやり方は業界標準に沿ったものだと述べている。

ドゥーロフ氏は当分の間、刑務所の中で過ごすことになるだろうと、ポリマーケットのベッターたちは考えている。米国東部時間8月26日の朝の時点で、8月31日までに釈放されるかどうかを問う契約の「イエス」シェアは37セントで取引されており、これはその可能性が37%であることを意味している。

パベル・ドゥーロフ氏が8月中に釈放される可能性を尋ねるポリマーケットでの契約

各シェアに対しては、予想が当たればUSDコイン(USDC:通常ドルと1対1で取引されるステーブルコイン)で1ドル分が支払われ、当たらなければ何も支払われない。賭けは、ポリゴン(Polygon)ブロックチェーン上のスマートコントラクトに書き込まれる。

ベッターは、莫大な富を持つドゥーロフ氏がフランス領を脱出し、彼が市民権を持つアラブ首長国連邦(UAE)に戻る手段を十分に持っている可能性を考慮していると思われる。

UAEの法律によって厳格に禁じられているため、UAE政府は自国民の身柄を引き渡さない(非市民の身柄引き渡しは可能で、最近でもイタリア政府の要請を受けてイタリア人ビジネスマンを帰国させた)

バイナンスのチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao)氏はUAEとカナダの国籍を持っていたため、自発的に米国で出頭したにもかかわらず、逃亡の危険性があると言われていた。

ドゥーロフ氏の拘束は長期間になるかもしれない。

エムポックスのパンデミックはない

かつてサル痘として知られていたウイルスであるエムポックスは、8月14日に世界保健機関(WHO)によって世界的な公衆衛生上の緊急事態が宣言された。

米国で規制されている予測市場プラットフォーム「Kalshi(カルシ)」のベッターたちは、このまま事態は収束を迎えると確信している。

2020年の最初の数カ月を象徴するこの用語を覚えていない人のために説明すると、WHOは「公衆衛生上の緊急事態」を、公衆衛生に重大な危険をもたらし、早急な行動を必要とする状況と定義している。一方パンデミックとは、複数の国や大陸にまたがる多数の人々に影響を及ぼす疾病の世界的な流行である。

カルシのベッターたちは、公衆衛生上の緊急事態が年内にパンデミックに移行する確率をわずか13%とみている。

一方、ポリマーケットのベッターたちは、9月30日までに確定症例が米国で発生することに懐疑的で、その可能性は38%に過ぎないとみている。

9月30日までにエムポックスの確定症例が米国で発生する可能性を尋ねるポリマーケットでの契約

エムポックスは新型コロナウイルスとは異なるという医学的コンセンサスを、市場も理解しつつあるのかもしれない。新たな変異株がアフリカで流行しているが、専門家によれば、空気感染するコロナウイルスとは異なり、密接な物理的接触を通じてゆっくりと広がるため、広範囲に感染する可能性は低く、それほど心配する必要はないという。

さらに、アメリカではすでに 「リスクのある」人々のためにワクチンが用意されており、ヨーロッパ全土でもワクチンが展開されている。

ベッターたちはまた、今回のエムポックス流行の原因として研究室からの流出の可能性を除外しており、この仮説が当局によって認められる可能性は5%しかないとみている。

新型コロナパンデミックの初期には、このウイルスの起源に関して研究室からの流出という説は、陰謀論として否定されていた。しかし、「オヴァートンの窓(多くの人が許容できる考えの範囲)」は広がり、今ではニューヨーク・タイムズ紙でさえ、新型コロナウイルスはおそらく研究室から流出したのだろうという論説を掲載している。

|翻訳・編集:山口晶子
|画像:ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏(CoinDesk/Shutterstock/Suzanne Cordiero)
|原文:Did RFK Jr. Really ‘Drop Out’? Polymarket Bettors Argue Over Contract Resolution