イーサリアムETFから大規模な資金が流出したが、それは全体像ではない
  • 一見、イーサリアム現物ETFから大規模な資金が流出したように見えるが、これはもっと複雑だ。
  • ブラックロックのETHAは、累積の純流入額が10億ドルを超え、今年7番目の成果を上げたETFのローンチとなった。他のイーサリアムETFも同様に活発な需要が見られる。
  • グレイスケールのETHEは数十億ドルの損失を出し、イーサリアムETF全体の成功を相殺。

見出しは簡潔にこうなるかもしれない。「最近ローンチしたイーサリアム(ETH)現物ETF(上場投資信託)は失敗に終わった」

というのも、1カ月前に米国で取引を開始した9つのイーサリアムETFから、投資家が合計4億6500万ドル(約670億円、1ドル145円換算)の資産を引き出したからだ。

しかし、もう少し深く掘り下げると、成功が見えてくる。

ブラックロックのiShares Ethereum Trust(ETHA)の純流入額が10億ドルを突破し、ETFストア(ETF Store)のネイト・ジェラチ(Nate Geraci)社長によると、今年7番目の成果を上げたETFのローンチとなった。ファーサイド・インベスターズ(Farside Investors)のデータによれば、フィデリティ(Fidelity)のAdvantage Ether ETFは3億9000万ドル(約566億円)、ビットワイズ(Bitwise)のイーサリアムETFは3億1200万ドル(約452億円)の純流入を記録した。

だが、イーサリアムETF全体の資金流出に話を戻すと、これはGrayscale Ethereum Trust(ETHE)から数十億ドルが引き出されたことに起因する。この商品は2017年に投資家に初めて販売され、2019年に公開取引が開始されたが、あまり魅力的ではない信託形式だった。ブラックロックなどの新たなETFが突然登場し、ETHEは今年7月にETFに転換された。

グレイスケール(Grayscale)の商品は投資家にとってかなり高い手数料を特徴としており、多くの投資家はより安いETFにシフトしたいと考える可能性がある。グレイスケールからの大規模な資金流出を除くと、投資家は最初の5週間で20億ドルを超える資金を他のETFに割り当てた。

「他のイーサリアム現物ETFに20億ドルを超える資金が意図的に配分された事実は、投資家がイーサリアムへのエクスポージャーを求めていることを示す良い兆候だ」とジェラチ氏は述べた。「ビットコイン(BTC)現物ETFのような華々しいデビューではないものの、イーサリアムETFの最初の1カ月は明らかに成功したと私は考えており、今後もこの傾向が続くと予想している」

ジェラチ氏はグレイスケールについて、資金流出が水を濁し、ETFに対する需要がどれほどあるのかを正確に把握するのを難しくしていると考えている。「ETHEの売り手の根本的な動機をすべて把握することはどうしてもできず、それがこの商品以外にも目を向けることが重要だと私が考える理由だ」

イーサリアム現物ETFの需要が増加か

インデックス・プロバイダーのCFベンチマーク(CF Benchmark)のCEOであるスイ・チョン(Sui Chung)氏は、今後数カ月で需要は継続的に増加する可能性が高いと述べた。同氏は、より多くのウェルスマネージャーが顧客にこれらの商品を提供すると予測している。

「ウェルスマネージャーやファイナンシャルアドバイザーが、イーサリアムとは何か、その有用性、ビットコインETFと並行して保有すべき理由についての教育プロセスを完了させれば、イーサリアムETFへの資金流入は増え続けると予想している」とチョン氏は述べた。「教育プロセスでは、投資家にイーサリアムエコノミーを公開し、ビットコインとの主な違いを強調することで、アロケーション・ドライバーが異なり、どちらもバランスの取れた投資ポートフォリオに属することを明確にする」

1月に取引が開始されたビットコイン現物ETFは、約180億ドル(約2兆6100億円)の資金流入を記録した。投資家はブラックロックの商品に約200億ドル(約2兆9000億円)を割り当てたが、Grayscale Bitcoin Trust(GBTC)から170億ドル(約2兆4650億円)相当の資金が流出したことでほぼ相殺された。GBTCは信託として何年も存在し、今年ETFに転換されたグレイスケールのもう1つのETFだ。

|翻訳・編集:廣瀬優香
|画像:Fineas Anton/Unsplash
|原文:Ether ETFs Have Bled Money, but That’s Not the Whole Story