暗号資産界の『プレイボーイ』なるか──Web3カルチャー伝える男性誌を創刊へ

暗号資産(仮想通貨)業界には、人口統計的な問題がある。つまり、男性過多なのだ。この業界のある最新カルチャー雑誌は、こうした男女比の不均衡にレベレッジをかけて有効に利用しようとしている。ミームコインの取引で見られる以上のレバレッジである。

ロサンゼルスに深く根ざし、ライフスタイル雑誌を志す、創業1ヶ月の Superbasedd は、暗号資産業界の原始的な本能に訴える印刷物の発行を計画している。表紙には女性、裏表紙には威厳ある男性スタートアップ創業者、そしてその間を埋めるのは暗号資産トレーダーの戦場からの物語が紡がれる。

「我々はみんな男で、みんな堕落者だ。堕落者について私が知っていることが 1 つあるとすれば、女性が大好きということだ。そしてそれはブランドの着手点として実に良い」と Superbasedd の創業者スティーブ・マクヒュー(Steve McHugh) 氏は語った。

世界中の男性読者に対してWeb3のカルチャーを伝える、権威ある、しかしエッジの効いた雑誌だとマクヒュー氏と共同創業者が呼ぶこの雑誌にとって、女性は「おとり」的な存在となる。魅力的な写真で読者を誘い込み、「この業界を際立たせる本当に優れたカルチャーとプロフィール記事」で読者の頭を揺さぶるのだ。

性とカルチャーで、雑誌がまだ売れるかどうかは未知数である。『プレイボーイ(Playboy)』は、年刊の光沢のある版で新聞売り場の店頭に再び並ぶ計画を立てているところだ。かつては男性の代名詞的に謳われていたこの雑誌は、カルチャーに興味あるほぼすべての者にとって魅力ある記事を掲載していた。一方、Superbaseddのコンテンツは、暗号資産が好きな若い男性という、はるかに小さな層に訴求するだろうが、マクヒュー氏は、女性を前面に押し出したマーケティングは「男性」全般をターゲットにしていると述べた。

スタッフのキャラクター

Superbasedd の「危険な」コンテンツ戦略は、そのスタッフにぴったり合っている。マクヒュー氏の細身なビジネスパートナーであるジェイク・ヒルハウス(Jake Hillhouse)氏は、数週間後にシンガポールで開催される空手大会の前座試合に出場を控えていたが、砂丘でバギーの事故により肘を負傷し、そのわずか48 時間後に腕を吊って病院のリストバンドを巻いた状態で、我々の即席インタビューに現れた。

上記を踏まえた上で、この雑誌は幾ばくかの資金を蓄えている。今月、Superbasedd は、まだ開始されていない3年間の定期購読が付属するNFT(非代替性トークン)を販売して、110万ドル(約1.6億円、1ドル=144円換算)近くを得ている。別の定期購読オプションでは、99ドル(約1.4万円)で 1 年間のアクセスが提供される。

マクヒュー氏は、既存のメディアブランドが見逃していたり手をつけていないような暗号資産業界の一面を特集する予定だ。業界関係者がよく奇抜に自己表現しているのを特集するような記者を抱えるのは、暗号資産を専門にする出版界でDecryptくらいである。

それらのストーリーは、しばしば狂気じみて、いやらしくさえなり得る。ミームコインが発行されるPump.Fun では、トークンの価格を上げるためにトークン作成者が恥をかいたり、傷つくような、くだらない茶番が毎週見られるようである。ライブ配信で男性がコカインを吸ってストリッパーに頭を剃られた事例のように。

「我々のエッジーさは、女性に始まり、コカイン中毒の開発者に終わる」とヒルハウス氏は語った。

Superbasedd は、暗号資産業界をリードする男性の人物についての詳細な特集とともに、こうしたストーリーを伝える予定だ。インタビュー中、マクヒュー氏は、10月に発売される初版にソラナ(Solana)創業者のラジ・ゴカル(Raj Gokal)氏とアナトリー・ヤコベンコ(Anatoly Yakovenko)氏の起用を検討していた。

印刷物というフォーマット

暗号資産に特化しながら、印刷物に賭けている点は、非常に奇妙に映る。21世紀において急速に衰退するジャーナリズムの中でも、特に絶滅の危機に瀕している媒体だ。

Superbasedd のチームは、触れることができるフォーマットは、インスタグラム(Instagram)時代のノウハウと組み合わせると、それでも機能すると考えている。まず、セクシーな女性の写真を用いて男性の目を引き、次にX(旧ツイッター)のスレッドのように概要を説明するなど、わかりやすくストーリーを伝える気の利いた記事で、その注目を維持するというものだ。

マクヒュー氏は、Superbasedd をハリウッド・ヒルズにある裕福なコーヒーテーブルの上に置かれるほどの名声を持つ存在に押し上げるというビジョンを抱いている。同氏は、アメリカでセレブ・カルチャーが浸透することによって、この雑誌が広い層に関わりを持つようになることに賭けている。

しかし今のところ、Superbasedd は、初手として、だいぶ偏った形をとっている。それは、この雑誌の発行者が最も似合っていると思われるチェーンであるソラナでNFTを熱心にやり取りする層のみに訴求するものだ。

マクヒュー氏によると、Superbasedd は最近、かつて人気のあった NFTコレクションであり時価総額が250万ドル(約3.6億円)だったCatalina Whale Mixerの知的財産を5万ドル(約720万円)未満で買い上げた。次は Thug Birdz NFT コレクションを引き継ぐ予定だ。

この3 人からなる出版チームは、他の暗号資産業界の創業者たちへ接触するために mtnDAO に来たのだと、2回出席したマクヒュー氏は語った。対面型の暗号資産ワークスペースというのは、たとえばトークンの立ち上げのような、この業界の奇妙なビジネス提案に対してスタートアップがより迅速に事を運ぶ上で有用となる。

年2回開催され、今年で6期目を迎えるこのハッカーハウスにおいて、Superbaseddメンバーの経歴は標準的ではない。毎年8月と2月には、ますます多くのソラナ開発者がソルトレイクシティに集まり、1 か月間プロジェクトで協力し合う。こうしたプロジェクトの多くは、新しい金融の形を生み出そうとするものに傾いている。

「我々は開発者でもビルダーでもない。スタートアップであり、コンテンツ界隈の人間だ」とマクヒュー氏は語った。

|翻訳・編集:T.Minamoto
|画像:Danny Nelson/CoinDesk
|原文:Upstart ‘Degenerate’ Crypto-Culture Publication Bets on Print