「断片化」がレイヤー2の大きな課題:ZKsync開発者

数年前にアービトラム(Arbitrum)とオプティミズム(Optimism)に代表されるほんの一握りのパイオニアたちから始まり、通常はより安価で高速なトランザクションを実行するための代替手段を提供することを目的に設計されたイーサリアム(Ethereum)ブロックチェーン上のレイヤー2ネットワークは急速に増加している。

レイヤー2追跡サイトのL2Beatは現在、73のアクティブなレイヤー2プロジェクト、20のレイヤー3プロジェクト、81の今後予定されているプロジェクト、12のアーカイブ済みプロジェクトをリストアップしている。

そしてこれこそが、レイヤー2プロトコル「ZKsync」の主要開発企業であるマター・ラボ(Matter Labs)のCEO、アレックス・グルチョウスキ(Alex Gluchowski)氏が今後取り組むべき大きな課題として「断片化」を考えていることの背景だ。

「今のレースは、断片化の解決だ」と同氏は8月28日、ニューヨークで行われた米CoinDeskのインタビューで語った。

スーパーチェーンとエラスティック・チェーン

こうしたレイヤー2チェーンの多くは、相互のコミュニケーションに問題を抱えている。この問題を解決するため、マター・ラボが6月にリリースしたエラスティック・チェーン(Elastic Chain)など、相互運用性(インターオペラビリティ)ソリューションが開発されている。

ポリゴンやオプティミズムのような競合するレイヤー2チェーンも、ポリゴンのAggLayerやオプティミズムの相互運用性ソリューションなど、この問題を解決する独自の取り組みを発表している。レイヤー2チェーンはそれぞれ、イーサリアムエコシステム内のさまざまなチェーンを独自の相互運用性レイヤーに接続することで、断片化を解決したいと望んでいる。

だが、ゼロ知識(zk)証明を利用したレイヤー2間の競争が過熱する中で、次は相互運用性ソリューションを提供するプロジェクト間の競争になるだろう。

「より具体的に言えば、オプティミズムのスーパーチェーンとマター・ラボのエラスティック・チェーンだ。なぜなら、相互運用性を実際に実装しているブロックチェーンシステムはこの2つしかないからだ」と同氏。だが、オプティミズムの相互運用計画が、ゼロ知識証明を組み込むシステムのアップグレードなしに容易に実現できるかどうかは疑わしいという。「複雑な技術だ」と同氏は続けた。

多くのレイヤー2ネットワークが開発された理由

過去数年でこれほど多くのレイヤー2チェーンが登場した理由の1つは、開発者にとっては、レイヤー2技術を複製して、独自のネットワークを構築することが極めて容易になったからだ。

オプティミズムの「OP Stack」やマター・ラボの「ZK stack」のような開発者ツールによって、開発者はオプティミズムやマター・ラボの技術を使用し、独自のカスタマイズ可能なレイヤー2ブロックチェーンを構築できる。

たとえば、OP Stackを使って開発された有名なチェーンには、コインベース(Coinbase)の「ベース(Base)」やワールドコイン(Worldcoin)の「ワールドチェーン(World Chain)」がある(編集部注:ソニーが発表したレイヤー2「Soneium(ソニューム)」も、OP Stackを使っている)。

また、レイヤー1のクロノス(Cronos)も、ZKsyncの技術に基づいた、「Cronos zkEVM」と呼ばれる独自のレイヤー2チェーンを開発した。

レイヤー2チェーンを相互接続

現在の目標は、これらすべてのチェーンが相互に接続され、ユーザーが多くのチェーンにまたがって取引しているように感じるのではなく、1つのチェーンのように感じられるようになることだ。

同氏は、数多く存在するレイヤー2チェーンは、特定のユースケースに役立つものとして再解釈され、重視されなければならないとし、「本当の問題は、重要なレイヤー2が存在するかどうかだ。私は、汎用的なレイヤー2はあまり必要ないと考えているが、一部のアプリケーションに特化したレイヤー2や、コミュニティに特化したレイヤー2は必要だ」と述べた。

さらに「これは、ラテンアメリカ、東南アジア、日本など、地域的なものである可能性がある。なぜなら、それらの地域には特有の文化があり、別々のアプローチが存在するからだ。または、たとえばエラスティック・チェーン上でローンチされたゲーミング・チェーンのプロジェクトのように、DeFi(分散型金融)や金融アプリケーションとブロックスペースを共有する必要のない、アプリケーションに本当に特化したチェーンの可能性もある」と同氏は述べた。

|翻訳・編集:廣瀬優香
|画像:マター・ラボのアレックス・グルチョウスキCEO(Margaux Nijkerk/CoinDesk)
|原文:Solving Fragmentation Is Next Blockchain Race as Layer 2s Multiply, ZKsync Developer Says