ブロードバンドが伸び悩むなか、RWAが頼みの綱に

ブロードバンドインターネットを構築するためのプラットフォーム「Althea」のCEO、デボラ・シムピア(Deborah Simpier)氏は、「リキッド・インフラストラクチャー」が世界中の十分なサービスを受けていない人々のために接続性を解き放つことができる方法について、以下のように説明している。

米国が老朽化したインフラの近代化に取り組むなか、政府の取り組みや既存のプロバイダーだけでは、特に通信やブロードバンドに関してはギャップを埋めるには十分でないことがすぐに明らかになってきた。

連邦政府の「アフォーダブル・コネクティビティ・プログラム(Affordable Connectivity Program)」は、アメリカ国民に高速で費用対効果の高いインターネットを約束したが、終了の危機に瀕している。一方、多くの民間部門のインターネット・プロジェクトが、高金利の中で停滞し、倒産や閉鎖につながっている。いまだに4人のうち1人が高速ブロードバンドにアクセスできないアメリカ国民にとって、手頃な価格の選択肢は乏しくなりつつある。

政府の補助金やレガシーな通信事業といった、接続性を拡大するための従来の手段が機能していないことは明らかだ。だが、この溝を埋める革新的な技術が存在する。

RWAに注目集まる

現代的なアプローチは、ブロックチェーン業界で注目を集めている技術に見出すことができる。トークン化された現実資産(RWA)は、物理的かつ伝統的な金融資産を表すブロックチェーン上のデジタルトークンで、より効率的で透明性の高い管理、取引、所有を可能にする。

暗号資産(仮想通貨)をめぐる懐疑的な見方はまだあるものの、その根底にある技術が有形の現実世界のインフラ整備を強化する能力は相当なものだ。RWAの概念に対する最近の注目は非常に大きなチャンスを示しており、ボストン・コンサルティング・グループは、RWA事業が2030年までに13兆ドル(約1898兆円、1ドル146円換算)の市場に成長すると予測している。

リキッド・インフラストラクチャー

オンチェーンの透明性とプログラマビリティ(プログラム可能性)の力は、電気通信やその他のユーティリティ・ネットワークの管理と資金調達の新たな方法を解き放つ。そして、この新しいパラダイムは、従来は脆弱で非効率だったシステムに柔軟性とリスク軽減をもたらす。

「リキッド・インフラストラクチャー」として知られるこの技術は、大規模なインフラ・プロジェクトが資本にアクセスする際の障壁を取り除き、非伝統的な投資家や中小企業、コミュニティが必要なインフラの構築に直接参加できるようにする。

ブロックチェーンが自動決済をサポートするマシン・ツー・マシン決済システムを促進することで、このフレームワークはダイナミックプライシングモデルと自動取引を促進し、小規模な投資家や地域コミュニティがインフラ・プロジェクトに直接関与できるようにする。

リキッド・インフラストラクチャーは最大限の柔軟性を持つよう設計されており、シングルアセットの小口化だけでなく、マルチアセットの分配も可能だ。つまり、複数の異なる流動資産の収益を単一のファンジブル・トークンに自動的に分配できる。

Altheaの開発企業であるHawk Networksは、同社のワイヤレスネットワークの大部分をトークン化し、最近ではリキッド・インフラストラクチャーのプラットフォームを使用して、アリゾナ州フェニックスにある194戸の退役軍人向け住宅への接続を構築した。この住宅はAltheaの決済プラットフォームを利用して建設され、リキッド・インフラストラクチャーは資金提供や建設工事における複数の参加者間の支払いを調整する。

インターネットインフラの場合、RWAはコミュニティが独自の光ファイバーネットワークを構築したり、衛星ブロードバンドインターネット「スターリンク(Starlink)」の力を活用して地域全体にサービスを提供したりすることを可能にする。私はよく現地に行ってブロードバンドを必要とするこうしたコミュニティと直接話し、彼らがブロックチェーン技術をどのように活用しているのか、北極圏からアメリカの農村地域に至るまで、その様子を直接見てきた。

RWAは他セクターにも利益をもたらす

インターネットインフラにとどまらず、RWAの適応性は、エネルギー送電網や物理的なインフラといった他の重要なセクターにも広範な利益をもたらし、これらの公益事業の資金調達や管理方法を変革する能力を秘めている。リキッド・インフラストラクチャーは、政府や民間部門の取り組みに取って代わることを目的とするのではなく、これらの従来のアプローチでは不足するギャップを埋めようとするものだ。

国家が重大なインフラ不足に対処しようと努力するなか、RWAは、将来のインフラ整備のより包括的で公平なフレームワークを促進しながら、既存のギャップを埋めるまたとない機会を提供する。

|翻訳・編集:廣瀬優香
|画像:Shutterstock
|原文:With Broadband Growth Stalling, Real World Assets Offer a Lifeline