テザー、中南米農業大手に1億ドル投資はトークン化事業戦略の一環か
  • 規制当局への提出書類によると、テザーはニューヨーク証券取引所に上場している農業コングロマリットであるアデコアグロSAの株式約10%を1億ドルで取得した。
  • アグロトークンはアデコアグロと共同で、SOYA、CORA、WHEAの3つのステーブルコインの開発を開始した。これにより、生産者は穀物で表された独自の通貨を持つことができると、アグロトークンCEOのノビロ・アストラーダ氏は述べた。
  • テザーは今年後半に開始する予定のトークン化プラットフォームにも取り組んでいると、CEOのパオロ・アルドイノ氏は以前に述べている。

時価総額1180億ドル(約16.7兆円、1ドル=142円換算)のステーブルコインであるテザー(USDT)を発行するテザー(Tether)社と、直近のラテンアメリカの農業大手に対する投資は、一見するとあまり共通点がないかもしれないが、両社は現実資産(RWA)のトークン化という野心を共有している。

8月に米証券取引委員会(SEC)へ提出された書類によると、ステーブルコイン大手の同社は、ニューヨーク証券取引所に上場しているルクセンブルク拠点の農業コングロマリット、アデコアグロ(Adecoagro SA)の株式9.8%を取得するために1億ドル(約142億円)を投資した。

アデコアグロのウェブサイトによると、同社はアルゼンチン、ブラジル、ウルグアイに広がる21万3500ヘクタールの農地と工業施設を所有しており、農作物、米、乳製品、サトウキビの分野で事業を展開している。同社は280万トンの農産物と100万メガワットを超える再生可能エネルギーを生産している。

農作物をデジタル資産に変換する

アデコアルゴは、農産物のトークン化に注力するアルゼンチン拠点の企業、アグロトークン(Agrotoken)の少数株も保有している。アデコアグロの年次統合報告書によると、同社は2021年にこのスタートアップに投資している。アグロトークンは「穀物をデジタル資産に変換し、物資、サービス、その他の資産を保管または交換することを目指している」という。

アグロトークンのCEO兼共同創業者であるエドゥアルド・ノビロ・アストラーダ(Eduardo Novillo Astrada)氏は、リンクトイン(LinkedIn)に投稿した動画で、アデコアグロはアグロトークンの生みの親の一人であり、このスタートアップの株式10%を所有していると述べた。

「アデコアグロのCEOであるマリアーノ・ボッシュ(Mariano Bosch)氏は、常に私たちをサポートしてくれている」とノビロ・アストラーダ氏は書いている。「彼は素晴らしいビジョンを持っており、彼がやりたいのは土地のトークン化だと理解していた。私たちもアデコアグロや他の主要な農業パートナーと協力して取り組んでいる。」

アグロトークンは、250以上の業者および40以上の穀物保有者と7000万ドル(約99億円)のトークン化取引を行ったと主張している。さらに、1000戸以上の農家との間で、23万トンをトークン化した。

ノビロ・アストラーダ氏によると、アグロトークンはボッシュ氏と共同で、生産者が穀物で表された独自の通貨を持つことができる3つのステーブルコイン、SOYA、CORA、WHEAの開発を開始した。「これはブロックチェーン技術と農業ビジネスのつながりを明確に示すメッセージだ」と同氏は述べた。

アグロトークンはすでにサンタンデール(Santander)などの企業と協力しており、2022年にスペイン銀行大手の同行と提携してアルゼンチンでトークン化された商品を担保にしたローンを開始している。

「テザーは、土地が重要な資産クラスであり、ビットコイン(BTC)と金に対する既存の投資を補完するものだと捉えている」と同社広報担当者はCoinDeskへのメールで述べた。 「土地は本来的に希少なものであり、長期の利回りを提供し、歴史的に地政学的不安定期における安全地帯としての役割を果たしてきた。」

テザーによるRWAのトークン化計画

トークン化資産の領域に進出するという野心は、既に文書でも表れていて、同社は高収益のステーブルコイン事業からの多様化を目指している。同社は2024年上半期に52億ドル(約7384億円)の純利益を報告した。

同社は金を担保としたステーブルコイン(XAUT)を発行しており、これは時価総額6億1500万ドル(873億円)でトークン化された金として最大のものである。

同社CEOのパオロ・アルドイノ(Paolo Ardoino)氏は4月に、債券、株式、ファンド、ロイヤルティ報酬ポイントを含むさまざまな資産のデジタルバージョンの作成を容易にするトークン化プラットフォームを立ち上げる計画を説明している。

同社はまた、6月にアロイ(Alloy)と呼ぶ、トークンをミントするプラットフォームおよび、ユーザーがXAUTを担保として差し出すことで作成できる「合成」ドルトークンを紹介した。このプラットフォームは「ユーザーが担保付きの合成デジタル資産を作成できるようにし、今年後半に開始されるテザーのデジタル資産トークン化プラットフォームの一部となる」とアルドイノ氏は当時述べている。

テザーはまた、過去1年間で、ウルグアイにおける持続可能なビットコイン・マイニング事業、ジョージアの決済処理業者、クラウドコンピューティング企業ノーザン・データ(Northern Data)など、多数の企業に投資している。

|翻訳・編集:T.Minamoto
|画像:Shutterstock
|原文:Tether’s $100M Investment in LatAm Agriculture Firm May Be a Tokenization Play