人気の分散型取引所 (DEX) であるオスモーシス(Osmosis)は、ポラリス(Polaris)を立ち上げたと発表した。これは、分散型金融(DeFi)が抱える最大の課題の 1 つであるユーザーエクスペリエンス(UX)の断片化を解決する目的の「トークンポータル」と説明された。
発表によると、このプラットフォームにより、ユーザーは単一のインターフェイスを介して複数のブロックチェーン間でトークンを取引できるようになり、複数のウォレット、ブリッジ、ガストークンが不要になる。
コスモス(Cosmos)エコシステムの相互に接続されたブロックチェーン・ウェブにおいてフラッグシップネットワークの 1 つであるオスモーシスにとって、ポラリスは戦略の転換となる。
同取引所は、コスモスを基盤としたネットワークの、統合的に流動性を扱う場として自らを宣伝してきた歴史がある。対照的に、ポラリスは、イーサリアムやソラナなどのコスモス以外のチェーンでも同様に機能し、流動性の扱い方についても新しいアプローチを採用する。
アプローチの違い
「私たちは、人々がすべてを1か所で取引したいという当初の仮説を今でも信じている」と、オスモーシスおよびポラリスの共同創設者であるサニー・アガーワル(Sunny Aggarwal)氏はCoinDeskとのインタビューで語った。「しかし、すべてを1つの流動性の場に集約しようとするのはうまくいかない。」
オスモーシスで人々が取引する資産は、「流動性プール」の中にある。これは、ユーザーからトークンを売買するように事前にプログラムされたオスモーシス・ネットワーク上の暗号資産(仮想通貨)ウォレットだ。このシステムは、ユニスワップ(Uniswap)など人気のある分散型取引所で使用されているものと似ており、流動性(オスモーシスやその他のDEXで取引されるトークンの山)が数十の異なる取引アプリに分散していることを意味する。
「今日のDeFiのUXは、すべてがとてもチェーン中心的に設計されているため、非常に断片化されているように感じる」とアガーワル氏はCoinDeskに共有された声明で述べた。各種チェーンは資本を引き付けるために、担保またはDeFiプロトコルにロックされた預かり資産(TVL)などの指標に重点を置くことが多く、その結果、流動性が断片化され、ユーザーエクスペリエンス(UX)が最適ではなくなるとチームは述べた。
オスモーシスが「大いなるチェーンの分断(Great Chain Divide)」と呼ぶ状況の結果、DeFiプラットフォームは一般的に独自の小さな世界で運営され、それぞれがユーザーが売買できる資産の備蓄を持っている。これらの備蓄は異なるブロックチェーンに存在する傾向があるため、本格的な暗号資産取引では通常、無数の異なるウォレットツールをダウンロードして追跡する必要があり、ユーザーにとって大きな負担となる。
優れたUXとUIを志向
ポラリスを使用すると、ユーザーは資産を1か所に留めなければいけないこともなく、異なるブロックチェーンネットワーク間でトークンを取引できる。
「ポラリスは、オスモーシスで非常に優れていると思われる多くのUXおよびユーザー・インターフェース(UI)コンポーネントを採用し、それらをクロスチェーン方式で機能させるものだ」と同氏は述べた。「そのため、イーサリアム・バーチャル・マシン(EVM)資産、ソラナ資産、コスモス資産、すべてを1つのDEXで取引可能だ。」
ポラリスは既存の DEX や流動性の集まる場所と競合するのではなく、手動で統合することで、ユーザーがネットワーク全体で流動性にアクセスできるようにする。このプラットフォームの「ブリッジ抽象化」機能により、シームレスなクロスチェーン取引も可能になり、ユーザーは手動プロセスの煩わしさなしに、イーサリアム上のUSDコイン(USDC)などの資産をビットコイン(BTC)と交換可能となる。さらに、ユーザーは複数のチェーンにわたるポートフォリオ全体を 1 か所で追跡できる。
ポラリスは、ユーザーがチェーン間で資産を取引できるようにする最初のプラットフォームではない。コインベース(Coinbase)やクラーケン(Kraken)などの中央集権型取引所は長い間、同様の機能を許可してきたが、ユーザーの資産を完全に管理するという点に注意が必要だ。これは、「分散化」に関する暗号資産の原則に反するものである。
ただし、他の DeFi 製品も同様の技術に挑戦しており、ポラリスは UX 重視の競合がひしめくであろうこの分野で差別化を図る必要があるだろう。
|翻訳・編集:T.Minamoto
|画像:Danny Nelson/CoinDesk
|原文:Osmosis Launches Cross-Chain Token Portal ‘Polaris,’ Expanding Beyond Cosmos Roots