Facebook「リブラ」は通貨バスケットの断念も検討:事業責任者

ソーシャルメディア大手フェイスブック(Facebook)の主導する国際的な支払いシステムであるリブラ(Libra)プロジェクトは、運用方法の根本的な変更を検討している。プロジェクトの責任者であるデビッド・マーカス(David Marcus)氏が明かした。

2019年10月20日(現地時間)付のロイター(Reuters)の報道によると、マーカス氏は銀行セミナーにおいて、フェイスブックは、法定通貨と国債のバスケットに連動する「組み合わせ型」ステーブルコインという現行の計画を取りやめ、代わりにドル、ポンド、ユーロなど個別の国家法定通貨に連動するコインを何種類も発行することも検討可能だと述べた。

パネリストらに対して、マーカス氏は次のように語った。

「トークン化されデジタル形態をとった法定通貨という扱いの、一連のステーブルコインを用意して、この手法をとることも間違いなく可能です。検討の俎上に載ります」

マーカス氏はロイターに対して、この新しい道はリブラが望む選択肢では必ずしもないが、プロジェクトは「機動的」である必要があると語った。それはおそらく、このプロジェクトが金融の安定と金融政策への脅威、そして金融犯罪のリスクだとして世界中の規制当局から非難されたのに直面してのことだろう。

アメリカEU(欧州連合)などにおける多くの政治家たちが、こうした問題が解消されるまではプロジェクトをローンチしないように要求した。リブラ側は規制当局と連携しており、そのような懸念を解消することができるようにタイムラインを設定したと述べている。さらに、国家の金融主権への脅威だとする主張にも反論した。

なぜリブラが現在計画されている構造を変更するかについては、ロイターの報道では言及されなかった。考えられる問題としては、バスケットを裏付ける準備金が証券として分類され、米証券取引委員会(SEC)のような規制当局の管轄下に置かれる可能性が以前に示唆されていた。

米商品先物取引委員会(CFTC)の元議長、ゲーリー・ゲンスラー氏(Gary Gensler)氏は7月、そのような主張を行い、次のように話している。

「現在提案されている内容だと、リブラ・リザーブ(Libra Reserve)は実質的に少なくとも(SECによって)規制を受けるべきプールされた投資手段であり、リブラ協会(Libra Association)は投資顧問として登録する必要がある」

最近リブラにとって痛手だったのは、ビザ(Visa)やマスターカード(Mastercard)など多くの大手企業が10月11日(現地時間)にプロジェクトを離脱したことだ。これは、プロジェクトへの参加を続ければ規制当局からの報復もあり得ると警告する米議員らからの書簡が届いてすぐのことだった。

規制上の問題の解決に挑みつつもリブラは、2020年半ばのローンチ予定を堅持している。

マーカス氏はロイターに対し「どうなることやら。今のところ目標は変えていませんが(中略)完全に我々だけでどうこうできる話ではありません」と語った。

翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
写真:David Marcus image via Facebook
原文:Libra Could Drop ‘Basket’ and Issue Individual Fiat Stablecoins