WeWork創業者のクライメートテック企業、トークン発行を断念し保有者に返金へ:フォーブス

米大手VCなどから7000万ドル(約100億円、1ドル141円換算)を調達したカーボンクレジット(Flowcarbon)は、炭素クレジットのトークン化を目指していた。だがトークンは一度も発行されていない。

WeWorkの共同創業者アダム・ノイマン氏が共同設立した気候変動対策企業フローカーボンは、独自の暗号資産(仮想通貨)「Goddess Nature Token(GNT)」の発行を断念し、保有者に払い戻しを行うという。Forbesが伝えた。

2022年に創業した同社は、アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)などの投資家から7000万ドルを調達。炭素クレジットをブロックチェーン上に移行し、トークン化する計画だった。

カーボンクレジットは、温室効果ガスを削減するための取り組みで、1クレジットは、二酸化炭素1トンが大気中から除去されたことを示している。自社の取り組みで排出削減が難しい事業者は、カーボンクレジットを購入することで、排出削減に貢献できる。

ほとんどのカーボンクレジットは、二酸化炭素削減を実現している事業者やプロジェクト、ブローカーから購入されるが、カーボンクレジットはカーボンクレジットをトークン化し、販売する計画だった。7000万ドルの資金調達のうち、少なくとも3800万ドルはGoddess Nature Token(GNT)の販売で調達していた。

市況と業界からの抵抗

だが同社は現在、トークンの保有者に返金を行おうとしている。トークン発行を断念したことについては、市況と業界からの抵抗を理由にあげていると、この件に詳しい人物がフォーブスに語っている。

「昨年から、業界の取り組みの遅延のために、個人のGNT購入者に対して、標準的な手続きに従って返金を行っていることは周知の事実だが、当社は炭素ファイナンスのリーダーとしてフローカーボンを成長させ続けている」と同社はフォーブスに語った。

2022年7月、CEOのダナ・ギバー(Dana Gibber)氏はウォール・ストリート・ジャーナルに「市場が安定するのを待つ」ためにトークンの販売を一時停止したと語った。当時、暗号資産市場は下落し、カーボンクレジット登録機関のVerraが、通常は購入後に償却されるクレジットのトークン化に警告を発していた。

多くの国がカーボンニュートラルを目指しているなか、伝統的なカーボンクレジット市場は投資家にとって非常に魅力的なものになっている。2022年、市場規模は3300億ドルを超えた。

トークン化、つまりカーボンクレジットをブロックチェーン上に移行することは、市場の透明性を高め、投資家にとってよりアクセスしやすくすることを目的としていた。2月、トークン化取引プロジェクトのNeutralとドイツの証券会社「DLT Financeは、当局の認可を受けた、ブロックチェーンベースのカーボンクレジット・プラットフォームを構築した。

日本でも8月、ブロックチェーンとIoTを組み合わせたセキュアなプラットフォームの提供を目指すジャスミーが、二酸化炭素排出権(カーボンクレジット)取引所「NCCX」(ベータ版)を開設したと発表している。

カーボンクレジット決済にステーブルコインを活用する動きもスタートしている。

|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:フローカーボンのWebサイト(キャプチャ)
|原文:WeWork Founder’s Climate Firm Refunds Crypto Token Holders After Failed Launch: Forbes