- トークンターミナルによると、USDTの市場シェアは過去2年間で55%から75%に増加した。
- テザーが発行するこのステーブルコインの供給量は、主要なライバルが苦戦する中、650億ドルから1180億ドルに増加した。
最大のステーブルコインであるテザー(USDT)は、規模が拡大しているだけでなく、支配的な地位を固めており、現在ではステーブルコインの市場価値のほぼ75%を占め、2年前の55%から増加していることが、ブロックチェーンデータ分析プラットフォームのトークンターミナル(Token Terminal)のデータで示されている。
トークンターミナルによると、この期間にUSDTの供給量はほぼ2倍になり、1600億ドル(約22.4兆円、1ドル=140円換算)のステーブルコイン市場のうち、約650億ドル(約9.1兆円)から1186億ドル(約16.6兆円)に増加した。これは全体で見てもビットコイン(BTC)イーサリアム(ETH)に続く3番目に大きい暗号資産(仮想通貨)だ。ステーブルコインとしては次点のUSDコイン(USDC)は、その3分の1以下の規模である。
ステーブルコインは、その価格が国の通貨や金などの現実世界の資産にペッグされるようになっている暗号資産で、暗号資産市場の流動に関して重要な地位にあり、法定通貨とデジタル資産の橋渡しの役割を果たしている。ベンチャーキャピタルのキャッスルアイランド(Castle Island)とヘッジファンドのブレバンハワードデジタル(Brevan Howard Digital)による最新のレポートによると、ステーブルコインはラテンアメリカや東南アジアなどの新興地域においてますます人気が高まっており、ドル建ての貯蓄、支払い、国境を越えた取引などさまざまな用途に使用されている。
テザー(Tether)は、2024年第2四半期時点で、ニューヨークを拠点とするグローバル金融サービス会社カンターフィッツジェラルド(Cantor Fitzgerald)によって管理され、970億ドル(約135.8兆円)を超える米国債とレポ契約を準備金として保有している。トークンターミナルの推定によると、テザーはこれらの資産の利回りから毎月およそ4億ドル(約560億円)の収益を得ている。
同レポートの調べでは、USDTユーザーは、ネットワーク効果、ユーザーの信頼、流動性、他のステーブルコインと比較した実績を理由に、このトークンを使用しているという。
ライバルのトークンは
また、競合他社の苦境も一助となっている。
USDCは、2023年3月の米国地域銀行危機の際に、リザーブパートナーの1つであるシリコンバレー銀行の破綻の打撃を受けた。同トークンはすぐに価格ペッグを取り戻したが、この出来事により投資家はライバル、主にUSDTに流れた。トークンの時価総額は2年間で500億ドル(約7兆円)から350億ドル(約4.9兆円)に減少した。
米国のフィンテック企業パクソス(Paxos)が暗号資産取引所大手バイナンス(Binance)のブランドで発行したBUSDは、2023年初頭にニューヨーク州の規制当局から閉鎖命令を受けた。当時、BUSDは3番目に大きなステーブルコインであり、2022年後半のピーク時には時価総額が200億ドル(約2.8兆円)を超えていた。
最近、決済大手ペイパル(PayPal)のPYUSDトークンや、ブロックチェーンアプリケーションのAaveとCurveの分散型オルタナティブなど、新規参入者が登場しているが、中央集権型の発行者であるテザーとサークル(Circle)の地位を脅かしてはいない。
|翻訳・編集:T.Minamoto
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|原文:Tether-Issued Stablecoin USDT’s Market Share Grows to 75% as Market Cap Tops $118B