FRB利下げで暗号資産暴落の可能性も、中央銀行の時代は終わった:アーサー・ヘイズ氏
  • ヘイズ氏は、米国時間9月18日に予想されるFRBの利下げを前に、中央銀行の時代は終わったと発言した。
  • 同氏は、エセナのUSDeとPendleのBTCステーキングは、差し迫った低金利体制の恩恵を受ける可能性があると述べた。
  • 金利に敏感な商品であるトークン化された国債の需要は、金利が低いままであれば弱まる可能性がある。

メイルストローム(Maelstrom)の最高投資責任者でビットメックス(BitMEX)の共同創業者であるアーサー・ヘイズ(Arthur Hayes)氏は、現地時間9月18日に発表されると見られる米連邦制度準備理事会(FRB)による初めの利下げから数日後に、暗号資産(仮想通貨)を含むリスク資産が暴落する可能性があると大胆な発言を残した。

FRBは間もなく2020年以来初となる利下げを発表すると予想されており、歴史的にビットコイン(BTC)にとっては良い前兆となっている、いわゆる流動性の緩和サイクルの引き金となる。

しかし、差し迫った利下げはインフレ問題をさらに悪化させ、円高につながり、幅広いリスク回避を引き起こすだろうとヘイズ氏はシンガポールで開催されたトークン2049(Token2049)カンファレンスの合間にCoinDeskとの独占インタビューで説明した。

「米国ではインフレが依然として問題となっており、政府が価格上昇圧力の最大の要因となっているため、利下げは悪い考えだ。借り入れを安くすれば、インフレがさらに進む」とヘイズ氏は述べた。

「2つ目の理由は、利下げにより米国と日本の金利差が縮小することだ。これは円高の急激な上昇につながり、円キャリートレードの巻き戻しを引き起こす可能性がある」とヘイズ氏は付け加えた。

日本銀行が基準貸付コストをゼロから0.25%に引き上げた後、市場は円高とそれに伴う円キャリートレードの巻き戻しによる不安定化の効果を8月初旬に味わった。 CoinDeskのデータによると、ビットコインは1週間で約64000ドル(約896万円、1ドル=140円換算)から50000ドル(約700万円)に下落した。

ヘイズ氏は、短期的に重要となるのは米ドル/円だけだと述べた。

ほとんどのアナリストは、FRBが別のルートを取るため、日銀が今後数カ月で金利をさらに引き上げると予想している。政策の方向性が異なるため、円はさらに上昇し、投資家は円建てローンで調達したリスク資産のロングポジションを解消せざるを得なくなる。

​​ヘイズ氏は、米国の金利が現在の5.25%から5.5%の範囲からほぼゼロの水準まで下がると見ている。

「当初の反応は否定的になり、中央銀行の対応は危機を食い止めるためにさらに[利下げ]を行うことになるだろう。したがって、利下げは悪い考えだと思うが、いずれにせよ彼らはそれを実行するだろうし、すぐにゼロになるだろう」とヘイズ氏は説明した。

イーサリアムの強気相場

金利がゼロに近づくということは、投資家が再び他の場所で利回りを求める可能性があることを意味し、イーサリアム(ETH)、エセナ(Ethena)のUSDe、Pendleのビットコイン・ステーキングなど、暗号資産市場の利回りの高い領域で強気相場が再燃する。

年率4%のステーキング利回りを提供するイーサリアムは、最終的には超低金利の恩恵を受けるだろう。

ビットコインとイーサリアムを裏付け資産として用いて、それらを等価のショート永久先物ポジションと組み合わせて利回りを生み出すエセナのUSDeと、先週時点で45%の変動利回りを提供しているDeFi(分散型金融)プラットフォームPendleのビットコイン・ステーキングも恩恵を受けるとヘイズ氏は説明した。

一方、金利に敏感な商品であるトークン化された国債の需要は弱まる可能性がある。

中央銀行の時代は終わった

過去数年間、スコットランドの市場ストラテジストであるラッセル・ネイピア(Russel Napier)氏は、債務対GDP比の引き下げに注力する先進国の政府が通貨供給を掌握し、中央銀行は急速に無関係になりつつあると繰り返し述べてきた。

ネイピア氏によると、政府はインフレ率を高く維持しながら、製造業や再工業化などの分野でターゲットを絞った流動性の創出を頼みの綱とするだろう。

ヘイズ氏も同じ考えで、これは暗号資産市場にとっては前向きな展開だと見ている。

「私はその予測に100%同意する。中央銀行の時代は終わった。政治家が権力を握り、銀行に対して経済の特定分野で流動性を生み出すよう命じるだろう」とヘイズ氏は皮肉った。

「したがって、さまざまな場所でソフトな資本規制とハードな資本規制が見られるようになるだろう。つまり、暗号資産は、世界中で持ち運べ、そのシステムから抜け出すことができる唯一の資産だということだ」とヘイズ氏は付言した。

|翻訳・編集:T.Minamoto
|画像:Factblock
|原文:Fed Rate Cut Could Crash Crypto Markets, but Era of Central Banks Is Over: Arthur Hayes