スタッフはWeb3に対応できるのか?:マスアダプションに向けたスキルギャップの解消

企業はこれまで、トレーディングに重点を置いた教育に多大な投資を行ってきたが、Web3の製品やサービスの開発、推進、コミュニケーション、運用についてのテクノロジーにまだ不慣れなスタッフには目を向けてこなかったとShardeumの最高グロース責任者、ケイシー・マクガイア(Kelsey McGuire)氏は語る。

Web3マスアダプションを推進するなか、我々は暗号資産(仮想通貨)トレーダーの教育に重点を置いてきた。これは手堅いスタートだったが、より人材教育に焦点をあてれば、持続的な影響をもたらすことができるだろう。

1990年代後半から2000年代初頭にかけて、企業は時代遅れの技術から離れ、Webやメールのメリットを一斉に取り入れ始めた。FAXから電子メールへ、ファイリングキャビネットからクラウドストレージへと移行するなか、この技術革命を経験した人たちは、初期導入の難しさや移行の際のトラブルや不具合を覚えているだろう。

ここ数年、あらゆる業界のスタッフは、インスタントメッセージング、生成AI、タイムトラッキングソフトウェア、多要素認証など、急速に変化する数え切れない技術に対応してきた。だが我々はそのときの教訓や柔軟性を、Web3マスアダプションを進める際に忘れているのではないだろうか。

つまり、Web3の初心者とエキスパート、あるいは関心を持つ人と懐疑的な人の間に広がるギャップを無視してしまっている。

つい最近まで、Web3はニッチな関心事と思われいた。ブロックチェーンプロトコルに関わる仕事をしていなければ、業界の動向からは無縁だった。だが今、Web3マスアダプションが急速に近づくにつれ、それはバーチカルな、狭い業界の話ではなく、あらゆる業界に広がり、誰もがその流れに乗ってスピードを上げることが必要になっている。

重要なことは、顧客のオンボーディングに注力することだけではない。スタッフに、分散型の時代に成功するために不可欠な知識とツールを与えることも重要だ。企業はこれまで、トレーディングに重点を置いた教育に多大な投資を行ってきたが、Web3の製品やサービスの開発、推進、コミュニケーション、運用についてのテクノロジーに不慣れな人材には目を向けてこなかった。

人材とWeb3の関連性

2030年までにブロックチェーン市場は1兆4000億ドルに達する予測されており、分散型テクノロジーは、あらゆる業界で急速に不可欠なインフラになりつつあることを示している。かつてWeb2がそうであったように、Web3が市場に浸透し始めている今、企業は教育を、より身近なところから始めなければならない。

リンクトイン(LinkedIn)の2023年雇用レポートによると、ブロックチェーンのスキルに対する需要は前年比で300%増加。しかし、人材は依然として技術的な役割に集中しており、営業、マーケティング、人事、コミュニケーション、経営管理など、Web3の知識を必要とする非技術的なポジションには大きなギャップが残っている。

Web3が進めるさまざまな業務シフトを考えてみよう。例えば、データ管理は集中型データベースからブロックチェーンベースの分散型台帳へと移行し、スタッフには分散型ストレージと暗号化プロトコルの理解が求められる。同様に、従来のデジタルID認証から自己主権型IDへの移行により、企業によるユーザーデータの管理方法の見直しが必要となる。マーケティングやコミュニケーションの手法でさえ、ソーシャルメディアや従来のメディアから離れていく。

前進のための解決策

こうした変化は避けられないが、多くの企業は変化のスピードについていくことに苦戦しているか、あるいは社内外に知識が不足しているために参入に躊躇している。

Web3の誕生当初からWeb3に精通している完璧な人材を待つのではなく、企業は既存スタッフのスキルアップに投資すべきだ。Casper Labsによる2023年の調査では、87%以上の企業がWeb3ソリューションへの投資とビジネスモデルへの応用を検討している。

次世代の人材を強化し、スタッフがWeb3への移行に備えられるよう、企業はできるだけ早く行動を起こさなければならない。まずは、Web3教育担当を社内に置くことが、そのひとつの道筋となる。つまり、すでにWeb3の専門知識を持つ人材を雇用してスタッフ教育を行うこと、あるいは、Web3教育を目的とした研修コースなどの予算を組むことを意味する。

より長期的な取り組みのためには、後戻りする必要がある。つまり、大学でWeb3に焦点を当てたカリキュラムを開発するために教育機関と連携することで、有能な人材の不足を積極的に解消し、安定的な採用を実現できる可能性がある。さらに広範な視点からは、ブロックチェーン業界についての大学入学前の教育も重要になる。これはつまり、基本的なプログラミング教育が世界中の中等教育機関で標準化されつつあるようなことだ。

有望な未来のためのデューデリジェンス

Web3テクノロジーが今やあらゆる業界に、さまざまな役割で影響を与えているなか、競争力を維持したい企業は、従来のビジネス機能とWeb3エコシステムとのギャップを埋めることができる社内チームを構築する必要がある。

スタッフのWeb3への移行は今まさに進行中だが、企業、教育機関、政策立案者による協調的な取り組みがなければ、スムーズには進まないだろう。

Web3エバンジェリストとしての我々の責任は、この分野に参入するすべての新規および潜在的なスタッフが、適切な教育とツールを得られるようにすることだ。ステークホルダーが連携すれば、強固なWeb3教育手段を構築でき、スタッフは分散化された未来に備えられるようになる。

|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:Unsplash
|原文:Bridging the Skills Gap: Preparing the Workforce for a Web3 Future