ビットコインと金、通貨の価値下落を察知か──記録的高値に迫る
  • ビットコインは過去5日間で7%上昇し、今月初めて6万4000ドルを突破した。
  • 金は史上最高値を更新し、1オンス2600ドルを超えた。
  • こうした際立ったパフォーマンスは、世界的な流動性の増加と関連している。世界の中央銀行のバランスシートの拡大と米連邦準備制度理事会(FRB)の最近の利下げにより、投資と経済活動が刺激されている。

年間トップのパフォーマンス

ビットコイン(BTC)は過去5日間で7%上昇し、8月26日以来初めて6万4000ドル(約928万円、1ドル145円換算)を突破した。一方、金は今年30回以上も史上最高値を更新し、1オンス2600ドル(約37万7000円)を超えた。投資管理やフィナンシャルプランニングを行う企業クリエイティブ・プランニング(Creative Planning)のチーフ市場ストラテジストであるチャーリー・ビレロ(Charlie Bilello)氏は、「こうした顕著なパフォーマンスにより、ビットコインが2009年に誕生して以来、両者が初めて年間のトップパフォーマンス資産となった」と述べた。

年初来、金は27%上昇し、2020年のパフォーマンスである25%を上回った。前回これを上回ったのは2007年だった。この印象的な上昇を牽引しているものは何なのだろうか。

金は歴史的に通貨の価値下落と世界的な不確実性に対するヘッジと見なされており、現在の経済状況は金が再びこの役割を果たしていることを示唆している。最近の金価格の急騰はこうした要因に起因する可能性がある。注目すべきは、金が2020年のコロナパンデミックによって引き起こされた大規模な通貨価値下落の前に上昇を開始したのに対し、ビットコインは2020年後半から2021年にかけてスター的な高パフォーマンスの資産として台頭したことだ。ビットコインは現在史上最高値からわずか14%の位置にあるが、再び追いつこうとしているのだろうか。

ビットコインは純流動性指標と連動

より詳細な調査により、ビットコイン価格が米連邦準備制度理事会(FRB)の純流動性指標と連動する傾向があることが明らかになった。この指標は、FRBのバランスシートからリバースレポと財務省一般勘定を差し引いて計算され、ビットコインが流動性トレンドに追随する傾向があることを示している。

ビットコインと純流動性はどちらも2022年末に向けて底を打った。暗号資産(仮想通貨)取引所FTXの崩壊と同時期だ。それ以来、ビットコインは純流動性の増加とともに着実に上昇した。純流動性は現在6兆ドル(約870兆円)を超えている。

FRBのバランスシートは現在7兆1000億ドル(約1029兆5000億円)であり、量的引き締めは継続しているものの、そのペースは鈍化している。2023年3月のシリコンバレー銀行(SVB)の崩壊により、バランスシートは1兆6000億ドル減少し、パンデミック対応の量的緩和の初期段階で見られた水準に戻った。

リバースレポ残高の減少(現在3000億ドルをわずかに上回る)により、流動性が金融システムに戻されている。これは刺激となり、貸付、投資、経済活動全体のために資金が利用しやすくなっている。

より広い視点で見ると、アメリカ、欧州連合(EU)、日本、中国など世界の規模上位15位までの中央銀行のバランスシート合計は31兆ドル(約4495兆円)に近づいている。

この数字単体が焦点ではないが、7月の約30兆ドルから中央銀行のバランスシートが世界的に回復していることがトレンドで示されている。この流動性の増加は、流動性トレンドが反映される傾向のあるビットコインにとって特に刺激となる。

これに加えて、18日にFRBが50ベーシスポイントの利下げを行ったことも、ビットコインと金の上昇をさらに後押ししている。

|翻訳・編集:林理南
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin, Gold May Be Sensing Monetary Debasement as Records Beckon