旭化成とTIS、棟方志功作品の真贋鑑定にブロックチェーン活用

旭化成とTISが共同開発した偽造防止ソリューション「Akliteia(アクリティア)」が、美術品の真贋鑑定分野に進出。最初の採用事例として、棟方志功作品の鑑定を行う「棟方志功鑑定登録委員会」での活用が開始されたと両社が9月24日に発表した。

従来の美術品鑑定では、紙の鑑定書を作品に貼付する方法が一般的だった。しかし、この方法では鑑定書の偽造や、正規の鑑定書が贋作に転用されるリスクがあった。また、作品の損傷や、過去の鑑定履歴の照合に伴う業務負荷も課題となっていた。

(作品鑑定の様子)

Akliteiaシステムは、これらの課題に対して技術的解決策を提供する。このシステムは、偽造防止ラベル、真贋判定デバイス、ブロックチェーンの3要素で構成されている。

鑑定プロセスでは、偽造防止ラベルを作品、鑑定書、付属品に貼付し、真贋鑑定結果をブロックチェーンに登録する。同時に、鑑定者や鑑定日時などの情報を鑑定登録委員会のデータベースに記録する。

(鑑定における「Akliteia」活用イメージ)

このアプローチにより、作品の真正性が永続的に担保されるとともに、鑑定依頼者も保全された鑑定結果をいつでも閲覧できるようになる。

Akliteiaの偽造防止ラベルは、旭化成独自の材料と技術を用いて製造された透明なラベルで、サブミクロン(1ミクロン以下)解像度の特殊パターンが印刷されている。真贋判定デバイスでこのラベルをスキャンすることで、製品の真正性を確認できる。

スキャン結果は、TISがブロックチェーンプラットフォーム「Corda」を用いて構築したクラウドサービス「Akliteiaネット」に記録される。このシステムにより、偽造品の発生状況をサプライチェーン全体で共有し、被害実態の定量的な把握・可視化が可能となる。

旭化成とTISは、このシステムを通じて鑑定の信頼性維持と文化財の保全に貢献することを目指すとしている。

|文:栃山直樹
|画像:リリースから