21世紀のIT/金融インフラを作り出す。「Japan Open Chain」が目指すWeb3マスアダプションとは

Japan Open Chain(JOC)は、世界的に注目されるEthereum(イーサリアム)を利用したWeb3の世界をより法的に適合し、身近に利用できるようにするために、バリデータ(運用者)を明確な企業に限ることで、金融インフラに不可欠な高い信頼性を確保したWeb3ビジネスに最適なオープンなブロックチェーン。あえて「Japan」と冠したことで、海外から注目を集め、実際その評価も高くなっているという。11月20日のIEO実施開始を予定しているJOCの狙いや、1円以下の手数料・即時送金を実現して日本や世界の金融取引を置き換え、20兆円規模を目指すというその取り組みについて、近藤秀和氏に聞いた。

日本の法に基づいた、金融を扱うチェーン

──Japan Open Chain(JOC)はWeb3ビジネスでの法的適合性を考え、あえて日本企業がバリデータとして運用するイーサリアム完全互換ブロックチェーンというユニークな存在。グローバルでの評価は?

実はちょうどドバイや香港、シンガポールに行ってきたところだが、世界的には今まで法的適合性を無視して自由にやってきていたプロジェクトのメンバーが各国政府から訴えられたり、逮捕・収監までされているため、こういった法的適合性を考えたレギュレーテットチェーンへの反応はとても良く、数百ものプロジェクトから提携のリクエストが届いている。

「Japan Open Chain」という名前は、金融を扱うチェーンとして「日本の法に基づく」ことを表している。ステーブルコインやセキュリティ・トークンなどを扱う場合、イーサリアムのようなパーミッションレス・ブロックチェーンでは難しく、金融庁もまだ許可を出していない。ガバナンスの問題もある。例えば、ハードフォークで2つに分岐したり、巻き戻しの可能性があるチェーンは金融には使えない。

今、世界が混沌としているなかで、金融資産をどこに置くかは非常に重要なテーマ。既存のブロックチェーンではまだ課題が多いので、自分たちで良いものを作ろうというのが、JOCのスタートだ。

──ブロックチェーンを使ってプロジェクトを進めたい、開発したいというリアルな声を受けて誕生したスタートアップということか。

我々はスタートアップだが年齢が高め。いわば「大人のスタートアップ」だ。私はWeb2もWeb1も経験しており、一緒に創業した稲葉は金融業界出身。どちらにも目配りできることが我々の良いポジションにつながっている。Web3についても、ポッドキャストを約3年続けている。

一方で、ブロックチェーンは自分たちだけで作るものではなく、仲間が必要。JOCは今、運営パートナーであるバリデータが14社(11月11日時点)になり、21社まで増やそうとしている。最近は「日本法人を作るので参加したい」という海外企業も現れるくらい。まだ具体名は言えないが、イーサリアムでは非常に有名な企業がバリデータとして参加する見通しだ。名前に「Japan」と付いているが、日本に閉じておらず、むしろ世界から注目される状況にある。

ステーブルコインの登場でユースケースは一気に広がる

──「日本」という国の信頼性、中立性をベースにしたブロックチェーンとして、ユースケースとしては最初から金融を想定していたのか。

ブロックチェーンはそもそも金融、決済インフラとしてスタートしている。イーサリアムはもちろん、ビットコインもそう。金融がブロックチェーンのメインのユースケースだ。ただ、お金は我々の生活のすべてに関わるものであり、つまりはブロックチェーンもすべてに関わるものになる。

かつて、インターネットが登場したときも「何に使えるのか」という議論があったが、現状をみれば「何にでも使える」ことは皆が理解している。それと同じことがブロックチェーンにも当てはまる。その意味では、ステーブルコインが登場すれば、ユースケースは一気に広がるのではないかと考えている。

──イーサリアムのレイヤー2(L2)を手がける選択肢もあったのでは。

レイヤー2(L2)は、良く知られた単語だが仕組みを理解している人は少ない。実は技術的にもかなり未成熟だ。仕組みを詳しく説明すると長くなるが、L2をL1として使うような行為もあり、また一企業が止めようと思えば止められる仕組みになっているものもある。

であれば、信頼できるバリデータが運営しているL1チェーンを作った方が安心ではないかというのが我々の立場。イーサリアムと完全な互換性を維持しながら、スケーラビリティと低コストを実現するため、コンセンサスアルゴリズムにProof of Authority(PoA)を採用し、さらにバリデータを明確な企業に限ることで、高速かつ安価で、誰もが安心して利用できるブロックチェーンを実現している。

──今、L2も含めてさまざまなチェーンが登場しているなか、かなりユニークな存在といえる。

スタート当時はかなりユニークだったと思う。分散性を重視する人のなかには「ブロックチェーンではない」などと言う人もいたが、今では我々の取り組みを真似たものが出てきている。実際にビジネスを行う人たちに対しては、ひとつの解決策を示すことができたと考えている。

Xの海外フォロワーも8万人くらいまで増えている。まだトークンを上場していない現状を踏まえると、知名度はかなり上がってきた。

国内外の大手取引所に同時上場

──これからのIEOがひとつの大きなステップになると思うが、その先、力を入れていく領域についてはどのように考えているか。

まずは「JOCトークン」のIEO成功に向けて注力している。さらには国内外の大手取引所にトークンを同時上場し、トークンの流動性を確保していく。その後、海外プロジェクトと連携しながら、エンタメ・金融の2方向でエコシステムを拡張していきたい。

さらに一般の人たちがWeb3を意識することなく、面白がって使う状況を生み出していかなければ、我々に限らず、Web3は広がっていかないと考えている。例えば、インターネットにおけるYouTubeのような、一般の人がWeb3を簡単に、楽しく、使えるようなツールを提供していきたいと考えている。

Web3ビジネスは「総合格闘技」と言われる。技術だけではなく、法律や金融の知識も必要で、そのためにスタートアップが参入しづらい面もあるが、一方でディープに入っていくともう戻れないほど便利で、大きな可能性を感じる。例えば、海外で資金調達すると、ステーブルコインで送られてきて、既存の金融システムはまったく使わない。「これから来る世界」ではなく、「すでに来ている」世界だ。

また重要な点は、この数年、日本の規制は進んでいると言われていたが、賞味期限切れが迫っていることだ。先日行われた大統領選挙でアメリカは一気に変わる可能性があり、アメリカが変われば、世界は一気に前に進む。2025年以降はグローバルな競争がより厳しくなるだろう。日本のWeb3は今、まさに岐路にあり、全力で前に進んで行きたいと考えている。

|インタビュー・文:CoinDesk JAPAN 広告制作チーム
|写真:今村拓馬